2-25
「…」
壁に押し付けられたメロディアはただただ押し黙ってしまった。レイディアントは恐怖で声も出ないと思い込んだが、彼の実力をよく知るドロマーは何か考え合っての事だろうと、あえて触れぬように振る舞っていた。
「質問というのは?」
「貴様らとそこに落ちている外套からは魔族の気配が漂ってきている。どういうことだ」
「…分かりました、お答えします」
そう言ってドロマーはメロディアにチラリと目配せをした。本当の事を話してもいいかと言う確認をしたかったのだが、メロディアは相変わらずレイディアントを見据えたまま動かない。
なので仕方なくドロマーは嘘偽りなく真実を話す事にした。
「私から魔族の気配がするのは簡単です。あの時の奇襲攻撃の後、捕虜になった私は魔王様の手によって魔族に変えられたからです」
「…やはりか」
「おや? 予想していたのですか?」
「時折魔界で鉢合わせした魔族たちが口々にそう言っていたからな。【八英女】は我を残して全員が魔王の軍門に下ったと」
「ええ。その通りです。あなた以外は全員が捕らわれて、いずれもが魔族に変容してしまっています」
「……」
ギリッと歯を食いしばる音が聞こえた。それと同時に槍を持つ腕により力が籠められるのが分かった。
「ならこちらの子供は? 信じられぬかもしれないが我はこの子に不覚を取った。魔力は感じられるが同時に聖なる気配も漂わせている。何者だ?」
「この子はメロディアと言います。アナタこそ信じられないかもしれませんが、メロディア君はスコアと魔王様の間にお生まれになった子です」
「な、何だと!?」
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