2‐20
順当に考えれば老人は駐屯所に連れ帰り病院へ、血塗れの女は兵士団にでも届ければ一件落着だ。しかしメロディアの中の勘がそれを拒んでいる。ともすれば老人を運ぶのは当然として、血塗れの女も連れて帰るほかない。幸いにもドロマーといつ合流してもいいようにホテルには二部屋取ってある。ひとまずそこで休ませて様子を見るしかない。
そこからメロディアは一人で二手に別れる事にした。
メロディアは収納空間から一枚のマントを取り出す。これは母親から譲り受けていた代々の魔王が愛用していたという由緒正しいマントだ。魔界の最上級品であり、歴代の魔王の魔力が染みこんでいて色々な魔法の補強に使うことができる。メロディアは自らの分身を一体作り出してマントを着せた。これは本来、囮として敵をかく乱させるために使う術だが、マントを羽織らせればより存在感を強固にできる。その上、多少なら遠隔でも操れるようにもなる。
こんな童顔が着るとまるで似合っていないが、この際贅沢な事は言っていられない。
マントの方に老人を任せると、メロディアは血塗れの女を収納していたレジャーシートで包んだ。流石に昼間から血塗れの女を抱えていたら職務質問くらいじゃ済まない。レジャーシートも大概だが、いざとなったら花見をしている最中に姉が酔いつぶれて服を燃やしてしまった、とでも言って言い逃れしよう。
しかし意外にも街に入っても、ホテルに辿り着いても皆が気が付かないふりをしていた。治安が悪いせいで、ギタ村にはどんどんと事なかれ主義が蔓延しているのかも知れないと勝手な予想をしていた。
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