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魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達  作者: 音喜多子平
堕ちた竜騎士
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1‐4

ひょんなタイミングでお休みを頂けたので、仕事が再開されるまで一日二回投稿をしてみます。

「大丈夫ですか?」

「…あなたは?」


 何とも透き通った女性の声だった。しかし覇気はなく、かなり弱っている印象を受けた。


「僕はこの家の者です。とにかく中に入ってください」


 メロディアは旅人を助け起こすと肩を貸しながら家に入る。


 するとフワリと花のような香りがメロディアの鼻を掠めた。感じ取ったのはそればかりではなく、華奢なのに柔らかい体つき、特にローブに覆われて見えなかった大きな胸の感触が伝わってきた。


 メロディアは不謹慎だと自分を諫めながら、何とか彼女を椅子に座らせたのだった。そうしたところ彼女のお腹がキュルルとなった。そして如何にも恥ずかしそうに言う。


「す、すみません。長い事何も食べていなくて…」

「ちょっと待っていてください」


 パチンっと指を鳴らす。すると魔法で照明が灯り、暖炉に火がついた。メロディアは急いで台所に向かった。そしてまな板の前に立つと急ピッチで献立を考え始めた。


「…長い間食べていないって事は回復食の方がいいかな。肉や魚は控えて、代わりに合わせ出汁をたっぷり取ったスープにしよう。確か味噌があったからそれも使って…味噌と言えば豆腐も残っていたっけ」


 と、ぶつぶつと独り言を呟きながら献立を作っていく。そして冷蔵庫から想定した食材を取り出すと手際よく調理を始めた。


 客人は椅子に座ったままだったがそわそわとして落ち着きがない。キョロキョロと部屋を物色するように眺めている。不安の表れか、それとも家人が子供と見くびってよからぬことを考えているのか。ただメロディアにとってはどちらでもいい。肝心なのは彼女がお腹を空かせているかどうかなのだから。


 そうしているうちに豆腐の味噌汁は完成した。胃に負担を掛けないように必要最小限の調理しかしていないから早々に出来上がった。しかし調理の速さに反して味は一級品である。食材に『豆腐屋の倅の俺が異世界に来たから大豆製品で無双する屋』の豆腐、通称・【無双豆腐】を使っているからだ。


 この世界には異世界から転生転移をしてくる者、いわゆる「異邦人」が数多く存在する。彼ら異邦人は往々にして理外の能力や知識を持っていることが多くムジカ大陸に多くのパラダイムシフトを齎し、生活文化を一変させてきた。


 若年のメロディアは目新しさを感じないが、老齢の人には味噌や豆腐などという食材は革命的だったそうな。

読んで頂きありがとうございます。


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