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魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達  作者: 音喜多子平
堕ちた守護天使
39/163

2-18


「大丈夫ですか?」

「助けてくれ…赤い服の女に襲われたんだ」

「赤い服…しかも女?」

「ああ。きっとまだ近くにいるはず…うう」


 老人は腕を抑えてまた苦しみだした。色々と気になる事は多いがまずは人命救助が優先だ。メロディアは怪我に障らないように老人を抱え起こそうとした。


 その時だった。


 メロディアは後ろに気配を感じた。まるで巨大な鳥が舞い降りたかのように翼で羽ばたく音が聞こえてきた。念のため老人を庇うようにしながら、振り返った。するとそこには話に聞いた通り、赤い服の女が立っていた。


 だがメロディアは一目見ただけで見解を改める。


赤い服を着ているのではなく、返り血で白い服を赤く染めているのだ。元は純白であったであろうその服は、恐らくは修道服だ。それだけでも十分不気味なのだが、更にそれを助長する顔を隠すばらばらの黒い乱れ髪だった。


 しかも彼女の背中から生えている翼…。


 あれは紛れもなくキャント国の僧兵が使う聖化の術。その秘儀の翼でさえも羽の先は深紅に染まりポタポタと血を滴らせていた。


 すると血塗れの女は見た目に反して丁寧な挨拶をしてきた。


「ごきげんよう」

「…こんにちは」


 しかし、挨拶が終わるや否や血塗れの女は携えていた槍を瀕死の老人に向け、突き刺してきた。戦い慣れた凄まじく早く無駄のない動きにメロディアは一瞬、目を見開き剣で槍の軌道をずらした。正直警戒していなければ防ぐことができなかったかも知れない。


「…何をする?」

「こっちのセリフです。殺すつもりですか?」

「ああ。その男は罪を犯した、つまりは悪だ。死ぬには十分すぎる理由だろう」

「犯罪だったらキチンと法の下で裁けばいい。殺すのはやり過ぎだ」

「必要ない。神の名の下に私が裁く」

「…話にならないですね」

「それこそ我のセリフだ。罪人を庇うとあれば貴様にも裁きを下すまでだ。子供と言えど悪は許さん」

「そんな、」


 無茶な―――。


 と続ける前にメロディアの顔面に銀色の刃が容赦なく突き出された。


読んで頂きありがとうございます。


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