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メロディアがそう言うとドロマーは慌てて引き留めた。
「待ってください。それでしたらアガタフホテルを久しぶりに使いたいです」
「アガタフホテル? 格安ビジネスホテルの?」
「はい。そこは二十年前の旅でも本当によく使っていました」
「へえ」
それは初耳だった。
「あそこはシステムさえ変わっていなければ、この村のホテルで一番豊富なアダルトチャンネルが見れます」
「結局そう言う話かよ! つーか何で知ってんだ!?」
「スコアが私達に隠れてコソコソ見ていたので覚えています」
「父さん………っ」
ドロマーを叱りつけようと込み上げてきていた感情が行き場をなくし、喉と胸の間に突っかかった。同時に【八英女】にそんな恥ずかしい場面をばっちり見られていたという事実を知らされて少なくない同情の念も沸いた。
しかし選んでいいと言った手前、無下にするのはメロディアの道義に反することだった。それにペイチャンネルくらいであればラブホに泊まるよりは遥かにマシに思えたので、メロディアは大人しくアガタフホテルに向かって歩き始めた。
するとその道中でドロマーが素朴な疑問を投げかけてきた。
「そう言えばなんですが、スコアと魔王様はどうして旅を?」
「色々と問題がありまして」
「問題?」
「形だけとは言え魔王を倒したことでこの世界には平和が訪れると誰しもが思っていたそうです。母さんの力で魔界は閉ざされ、魔物の侵攻は極端に少なくなりましたから」
「ええ。それは身に染みています」
「しかし実際にはそう簡単にはいかなかった。魔王と戦っていた時は手を取り合って戦う事は出来ていましたが、ムジカの国々は共通の敵がいなくなったことで今まで目をつぶっていた問題と直面しなければいけなくなったんです」
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