2‐11
「ふふふ。メロディア君、一つ忘れてはいませんか?」
「何をです?」
「これですよ」
言うが早いか、ドロマーは昨日と同じくドラゴンの姿へと変わった。陽の光の下で見ると昨日よりも大きさがよく分かる。そして艶めかしい触手もよく分かった。正しく悪堕ちしたドラゴンだと思った。
「ギタ村でしたら一時間もかかりません。乗ってください」
「なるほど」
軽い返事をしたメロディアだったが実は人知れずテンションを上げていた。ドラゴンに乗って空を飛ぶ事に憧れを持っていたからだ。というかこのくらいの年の男の子であれば、ほとんど全員が夢見る事の一つだろう。むしろ大人であってもいつかの実現を心に秘めている者が多いだろう。
騎士団からの要請でドラゴンと戦ったことは二度ほどあるが、いずれも野性の暴れ龍で乗るどころか手なずけることもままならなかった。
メロディアの実力であれば暴れ龍とは言え無理に押さえつけることもできたが、飼うとなればバカが付くほど高い飼育料が発生するので泣く泣く退治したのだ。
さらに言えば彼にとってドロマーは初めてできたムジカリリカ人の知り合いだった。小さい頃は父と共にムジカリリカ人の背に乗って空を飛んだこともあるそうだが、正直一切の事を覚えていない。
つまりはこれが生まれて初めてドラゴンに乗る体験と言って差し支えない。
ドロマーに言えば彼女は怒るかもしれないが、ドラゴンに乗れるという事実はサキュバスのお姉さんが誘惑に来るよりもよっぽどわくわくと心躍るシチュエーションなのだった。
「それじゃ…遠慮なく」
「はいどうぞ。私は男の人に乗るのも乗られるのも大好きなので」
「今、感傷に浸りたいんでちょっと黙ってください」
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