2‐8
メロディアは駄々をこねられてはたまらないと、ちょっとした悪戯心でそう言った。するとドロマーはたおたおとメロディアの服の端を掴んだ。
「…どうしたら」
「え?」
「どうしたらメロディア君の機嫌が良くなってくれますか?」
「いや、それは…」
トロンと潤んだ瞳で魅入られる。それはサキュバスの能力ではなくドロマー本人の魅力だった。強く当たりがあれば突っぱねるのも容易だが、こうなってしまうとメロディアはいまひとつ調子が取れないでいる。
その時、妙案めいた事を閃いた。メロディアは魔力を質にとって脅しているようで気が引けたのだが、その提案を口から吐き出していた。
「…せめて人と会う時はサキュバス的な発言は控えてください」
「…わかりました。いい子にします。だから今の濃くて熱いのをもう一回私に注いでください」
「ホントにわかってんのか?」
するとその時、クラッシコ王国の方から誰かがやってくるのが分かった。スクーターで。
鎧甲冑を身に纏ったスクーターの主はこちらに気付くと「おーい」と声を飛ばしてきた。どうやら彼の目当てはメロディアらしい。やがてそこまで辿り着いた鎧男はヘルムを開けるとニコリと笑った。
「よう、メロディア」
「タナカさん。こんにちは」
タナカと呼ばれた男はメロディアの屋台のお得意さんだ。クラッシコ王国の下級兵士で城壁付近の防衛任務を担当している。
「ちょうど良かった。隊長に言われてメロディアのところに行こうと思ってたんだ」
「え? 僕の家にですか?」
「ああ。伝言を頼まれてな。ちょっと難しそうなクエストが発生したんだ」
「…聞かせてください」
兵士団が直々に持ってきたクエストにメロディアは思わず身構えてしまう。そしてタナカはおもむろにそれを話し始めた。
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