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守護天使レイディアント。
ムジカ大陸一、国民の信仰心が厚いと言われているキャント出身の女司祭であり、同時に百戦錬磨の僧兵でもある。
キャント国の国民は一説には天使の末裔であり、世界に光を齎した神が最初に作った天使の子孫だと実しやかに囁かれている。その噂を裏付けるのが聖化と呼ばれる魔法とは似て非なる特殊な技巧だ。
キャント国の僧兵の扱う聖化と呼ばれるその術は魔を退ける効果があり、魔王軍との戦いでは八面六臂の活躍を見せたと記録されている。
特に司祭として認められるほどの信仰心と実力を兼ね揃えた者が扱う聖化は発動と同時に白く光り輝く翼が背中に現れ、正しく天使と見紛うほどの風格を得るという。そしてそれがレイディアントの二つ名の由来にもなっている。
レイディアントはその翼で厄災を防ぎ、手に携えた槍で魔を討ち滅ぼしてきた。その雄姿はキャントを中心に多くの絵画に描かれてきている。
そんな英雄が…。
この場合、魔王に寝返ろうとも生きていて欲しかったと思うのと、名誉ある戦死で尊厳を守れたと思うのとどちらが人情なのか、メロディアはわからなくなってしまった。
するとメロディアの視界が急に埋まった。鞣した皮の鎧越しにドロマーの柔らかい胸の感触が顔に伝わったことでドロマーに抱きしめられていると気が付いた。メロディアは力づくで振り払おうと思ったが、その前にドロマーがとてもとても優しい声音で言った。
「すみません。あまりにも浮かない顔をしていたので」
「…」
「君のお顔を見ていて昔の自分を思い出しました。子供たちにそんな顔をさせないために私は剣を振るっていたのに、私が弱いばかりにあのような姿になってしまいました。けれどレプリカとは言えあの頃の装備を身に着けると気持ちも少しだけ元に戻った様な気がします。良ければ私に不安や怖さを預けてください」
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