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しかしメロディアとしては気乗りしないのは確かだった。親の権威を振りかざすというのはあまり気分のいいものじゃない。
取り合えず数カ所に点在している外壁の門の内、最寄りかつ普段から一番利用している東側の関所を目指す。晴れの日だと凡そ30分程度の道のりだ。
そこを目指す道中、メロディアはそう言えばと前置きをしてドロマーに話題を振った。
「そう言えばドロマーさん」
「何でしょうか?」
「すっかり聞きそびれてましたけど、他の【八英女】はどうなっているんですか?」
「もうすっかり堕ちてますよ」
「…ああ、そうですか」
羨望していた【八英女】が生きていると聞いた時は驚きの中に喜びもあったが、今目の前にいるコレを見てしまうと嫌な予感しかしない。しかもいずれもが自分の事を逆恨みしているというのは案外悲しかった。
「ええ。見事な堕ちっぷりで原型留めてないですもん。まあ、どういう経緯で魔王様を心酔するようになったかは知らないですけど」
「え? そうなんですか? てっきり全員が母さんの力でサキュバス化されてるんだと」
「いえいえ。魔王様から直接魔力を注がれたのは私だけです。昨日も言いましたけど魔界についてすぐ私達は孤軍奮闘を強いられまして、それぞれが違う場所で魔王様に出会っているんです。まあそれでも魔王様の影響は大なり小なり受けてますから漏れなくエロくはなってますけど」
「…」
最後の事はともかく、メロディアは昨日のドロマーとの会話を思い出す。するとふと気になる事があった。
「あれ? 昨日は自分を除いて六人が生きていたとかなんとか言ってませんでした」
「ええ、言いました」
「残りの一人は…?」
「ああ、彼女だけは待てど暮らせど結局現れなかったんですよ。一応魔王軍を使って魔界を捜索したんですけど遂に足取りは掴めませんでした」
それはつまり…その人だけは本当に亡くなっているという事か?
「一体、それは誰なんですか?」
「レイディアントです。『守護天使レイディアント』」
「!」
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