2‐2
「サキュバスのアイデンティティに関わります。ていうか今だって別に全裸じゃないですよ?」
「ある意味全裸よりも恥ずかしい格好してるくせに。そんな下着みたいな格好で城下町を歩かせられるか!」
「そもそも今はこれ以外に服を持っていないです。あ、だったら城下町に行っても差し支えない服を買いに行きましょう」
「その服を買いに行く服がないって言ってるんだよ!」
メロディアは大きなため息を一つ吐いた。
「それに心配はいりません。服なら用意します」
「え?」
「ちょっと失礼」
そう言ってメロディアは手をドロマーの上に掲げた。ただメロディアの背丈はドロマーよりも低いので必死に背伸びをしていた。プルプルと震える足を見てドロマーは小動物を愛でるような感情を覚えた。
すると次の瞬間、パッとドロマーの服装が変わった。
「え? え? 何ですか今の。メロディア君、こんなピッコロさんみたいなことができるんですか?」
「母がドラゴボに嵌って作った魔法を教えてもらっただけですよ」
「ドラゴボって略さないで!」
「キレんな」
「…それにしても」
「今度は何ですか?」
「これ私が堕ちる前、ちゃんと竜騎士やってた頃に使ってた装備ですよね、レプリカですけど」
しまった、とメロディアは思った。彼は父から誰よりも正確な英雄譚を聞いている内に【八英女】に関してはオタクレベルで精通していた。過去のプロフィールや格好に至るまで空で言えるし紙に描けるほどであったのだ。
竜騎士ドロマーの服装と思ったら無意識に彼女の竜騎士として活躍していた姿を想像してしまったのだ。
しかも、それを悟られまいと取り繕うのが遅かった。
ドロマーは如何にもこれから揶揄いますと宣言しているような笑みを見せた。
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