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「あなたの話から推察するに父はあなたたち【八英女】を封印した後、魔王ソルディダと対峙した。しかし剣を交えることはなかったと、そう聞かされました」
「ど、して…」
「二人は互いの存在を認識はしていましたが、実際に顔を見合わせたのはその時が初めてだった。そして命からがら玉座に辿りついた時、勇者は魔王に、魔王は勇者に……一目惚れしたそうです」
「…は?」
「二人は剣を捨てて話を始めた。争う理由を無くした二人は魔界を出て人間界に戻ってきました。一応は勇者の体裁を保つために、魔界の入り口を封印し魔王は勇者によって討たれたことにしたそうです。以後二十年の間、ひとまずばれてはいないようですね」
そう言えば魔界の門が堅く閉ざされていた事をドロマーは思い出した。いやそれよりも気にするべきことは他にある。
メロディアの話が本当だとすれば…ドロマーは掠れた声で尋ねる。
「まさか、メロディア君の母親…スコアの結婚相手と言うのは」
「はい。魔王ソルディダです。僕は勇者と魔王の間にできた子供です」
メロディアは証拠と言わんばかりにドロマーの逆鱗を突いた剣を見せた。
それは魔王の愛剣・メトロノーム。メロディアの語った話に信憑性を持たせるには十分すぎるアイテムだ。
「いや、それって…」
最愛の人と敬愛する魔王が結ばれていたという受け入れがたい事実が、ドロマーの頭の中を交錯する。そして導き出された結論は。
「逆NTRやん…」
ドロマーは気絶した。それが受け入れ難い真実に打ちひしがれてしまったのか、はたまた逆鱗を突かれた痛みに耐えきれなくなったのかは彼女にも分からなかった。
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