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城のように大きな変身のせいで、メロディアの住居はおろか外に置いていた屋台までもがほとんど壊わされてしまった。そしてドロマーは背中の翼を更に広げて自らの巨大さを誇張する。
それに伴って気持ちも大きくなったのか、考えが少し揺らいだ。もしもメロディアが自分の姿を見て背を向けて逃げ出したり、泣いて許しを乞うのなら命だけは助けてやろうとも思っていた。
しかしメロディアの取った行動はそのどちらでもない。ただただドラゴンとなったドロマーを見据えている。そしてぐっと足に力を入れたかと思うと凄まじい跳躍力を発揮し、ドロマーの喉元をめがけて攻撃を繰り出した。
メロディアが攻撃したのは逆鱗と呼ばれる龍族固有の急所だ。
ドロマーは急所に何かとても堅く、そして魔力を帯びた何かが当たった衝撃でその姿のまま倒れこんだ。森の中に地響きが伝わり、鳥獣たちが木々の奥で騒めく声が聞こえてきた。
「ぐ、ウウ…」
ドラゴンとなった自分がまさか一撃で沈められるとはドロマー自身も夢にも思っていなかった。この底知れない力には覚えがある。しかしそれの正体がわからない。いや、分かりたくないというのが正しかった。
声にならないうめき声を出しているドロマーに向かって、メロディアは首を動かさなくても見えるように移動して言った。
「あなたは勘違いしています。というか、一つ重要な事を知らない」
「…?」
「女魔王・ソルディダ・ディ・トーノは生きています」
「っ…!」
ドロマーは驚きを声にしようとしたが、喉が開かず息を漏らすばかりだ。
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