1‐15
「え?」
何かの間違いだと思いつつ、ドロマーは触手の再召喚を試みる。しかしどれだけ魔力を送ろうとも召喚は一向に成功しない。それどころか触手の方から呼び出されるのを拒絶しているようだった。
「な、何で…?」
その時ドロマーは目の前の少年が身の丈に似合わない程のオーラを放っている事に気が付く。傍目には少女にも見えるような男の子には不釣り合いなほど大きく、そして凶悪なそれには見覚えがあった。
ドロマーは恐怖による防御反応で腰の物に手を掛けた。サキュバスとしてではなく、竜騎士として相手をしなければならない程の相手だと本能が判断したのだ。【八英女】の一角として名を馳せていた実力に加え、魔王から注がれた魔力も加わってドロマーの力は今が全盛期と言っても過言ではない。それなのにも関わらず、ずっとずっと年下の相手に本気を出さなければならない状況が信じられなかった。
袈裟切りに剣を振り下ろす。が、メロディアはそれを収納魔法で隠していた剣で簡単に防いだ。
「それはスコアの使っていた剣…!」
魔王を倒すべく聖霊たちの祝福を受けた聖剣・バトン。もう必要がないという理由で、それをメロディアは譲り受けていた。
かつては頼りになる武器の一振りであったが魔王の眷属となった今、ドロマーにとっては脅威以外の何者でもない。それを見た瞬間、ドロマーは目的を本来のモノに再度変更した。つまりはメロディアの殺害だ。
そう決意を固めたドロマーは姿をドラゴンへと転じる。最終奥義とも言えるこの変身したドロマーは、かつての勇者スコアを以てしても勝利を収めることができなかった。しかもドラゴンに変身した後もサキュバスの魔力は健在だ。尻尾や大翼、背鱗からは艶めかしい触手が生え、隙あらばメロディアを捉えんとうねうねと動いていた。
読んで頂きありがとうございます。
感想、レビュー、評価、ブックマークなどしてもらえると嬉しいです!