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魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達  作者: 音喜多子平
閑話 メロディアの仕事4
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11-2

レイディアントの予想通り、完全に不意打ちを食らったはずのメロディアは極めて落ち着いて対応をしている。左から襲い来るドロモカに向かって半歩前進した彼は、手早く懐に潜り込みドロモカの腕を内側から制した。後はドロモカの勢いを乗っ取り、手繰り寄せるかのように引っ張ると腕ごと盾を奪い取ってしまう。


タイミングが絶妙過ぎてシオーナの斬撃も止める事は叶わず、双刃と神盾をうまい具合に同士討ちさせたのだ。


バリンっとけたたましい音を出して、刃と盾は砕ける。


 メロディアは動きを止めることなく魔法で収納していた、勇者スコアと魔王ソルディダがそれぞれ愛用していた聖剣バトンと魔剣メトロノームを取り出す。そして流れで組み伏せたドロモカと得物を破壊されて丸腰になったシオーナの首へ当てた。


それぞれの剣の切れ味を知っている二人は潔く降参をした。


「「参りました」」


両親から借りた剣を使ったのには二つ意図があった。


間違いなく勇者と魔王の系譜である証と二刀流を披露する為だ。思惑通りシオーナが真っ先に反応を示す。


「それにしても今の二刀の技は…」


と、シオーナの一言に傍観を決めていた六人も興味を深める。メロディアが二人を制する為に使った動きは正しくシオーナのそれだったからだ。


 メロディアは頷き、八英女に向かって真実を告げる。


「はい、シオーナさんの技です」

「どうして…」


 …メロディアがそれを使えるのか?


 初めて会ってから間もなく、戦う姿を見たことのないメロディアが知っているはずもない。彼の実力であれば一、二度見れば真似はできるかも知れないが、見ていないモノを真似るのは道理に合わないのだ。


 しかし八英女たちには確信めいた予感があった。


 メロディアと近しく、それでいて自分達の事を自分達以上に知っているかもしれない人物がいる。


 そしてメロディアはその場の全員の頭に想い描かれていた者、つまりは父の名を口にした。


「父に…勇者スコアに教えてもらいました」

「「………」」


 わざとシオーナの技を使ったのはメロディアなりの贖罪だ。ついさっき皆の気持ちを逆撫でさせてしまったことに対しての詫びのつもりだった。


自分が生まれるよりも昔に何があったのか。


八英女の話と両親から聞いた話はどこかが噛み合っていない。それでも長い年月の間に確執や誤解や猜疑心がどんどんと増長してしまったことはほぼ間違いないだろう。だからこそ、メロディアは伝えたいと思った。少なくとも父から八英女の話を聞くとき、恨み辛みの念は一切感じなかったと。むしろ八英女について話すときの父は今にして思えば渋い顔を何とか取り繕っていたとさえ感じられる。


八人と一旦の決別を覚悟したとき、それこそ断腸の思いだったのだろう。


それでも父は、勇者スコアは逃げなかった。


自分が秘すればそれで閉じ込められる思い出を隠すことなく、世界やメロディアに伝えた。技も武勇も伝説も。そうまでして八人との関わりを、いつか帰ってくるであろう彼女たちの場所を守りたかったはずだ。


メロディアは今の行動に辻褄を合わせるように思案した自分の気持ちを敢えて口にはしなかった。


自分の行動をどう思うかは、それこそ八人の自由だ。ただ全員が押し黙って何かを語ることはなかった。


しばらく後にドロマーが極めて明るい口調で言う。


「では、そろそろお家に戻りましょうか」

「だな。腹へった」


 そうしてドロマーとミリーがドロモカを助け起こすと、メロディア達はぞろぞろと城下町にある家に向かって歩き始めた。


メロディアは少し面食らった。もう少し反応があると思っていたからだ。


それでも数々の修羅場をくぐり抜けてきた八英女なのだから、自分の浅はかな思惑くらいは察してくれたのだろうと確たる証拠もなしに信じていた。


 するとシオーナとドロモカが重々しく呟く。


「そう言えば私達の立場はどうなるのでしょう?」

「性奴隷、弟子、母と姉と来れば…」

「残るは娘くらいでしょうか」

「それだ」

「それだ、じゃねーよ。年上の娘とか意味わかんないから」

「分からなければ先駆けとなりましょう。アブノーマルな性癖を攻めていく事こそが私達とこの作品の生命線」

「妙な使命感を持つんじゃない!」


 そんなメロディアの言葉とは裏腹に二人はどんどんとヒートアップしていく。


「私は魔改造済み肉奴隷殺戮兵器ロボ娘」

「私は堅物バカ真面目系メンヘラビッチドラゴン娘」

「性癖の二郎系ラーメンは止めろ!!」


 メロディアの声が森にこだまする。


 悪堕ちした八英女が揃ったというのに感動も緊張感も生まれない。


 メロディアの胸中には早く帰って来て欲しいと両親に希う気持ちだけが強く残っていた。


読んで頂きありがとうございます。


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