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魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達  作者: 音喜多子平
閑話 メロディアの仕事4
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11-1

「二人は幸せなキスをして終了」

「終わってたまるか…いや、ある意味で終わってるか」


 メロディアはファリカにツッコミを入れるとヨロヨロと力なく立ち上がる。そしてとうとう揃ってしまった伝説の『八英女』達を見る。


 感動の義姉妹レズを繰り広げるドロマーとドロモカ。


 それを見てウルッと涙を滲ませ、ついでにムラっと来ているソルカナとラーダ。


 ベットの準備をしてやろうかと本気で悩んでいるミリーとファリカ。


 シオーナに頭を撫でられて幼児退行を必死に堪らえようとしているレイディアント。


 思い描いていた英雄の勇姿とはかけ離れた八人がそこにいた。思わずくらっと目眩がしたのは立ち眩みではないだろう。


 いつしかメロディアは遠い目になって傍観していた。


 やがて感動の再会を表現し終えたドロモカが落ち着きを取り戻して唇を離す。それでもドロマーの腕を離すことはなかった。


「ああ…お姉様。本当にごめんなさい。改心なんて浅はかな考えを持って…この姿も何もかも私達の救いだったはずなのに」

「いいんですよ、ドロモカ。後ほど体で償って貰いますから」

「そんな! 体だけじゃ足りません。心も曝け出し全身全霊を持って償います!」

「ふふふ。では夜が早く来るように太陽にお願いすることですね」


 二人はそんな会話をしながらこちらの輪に加わってくる。その間もドロモカは全身からハートマークをこれでもかと噴出させるほどの勢いでドロマーに甘えていた。


 メロディアはそのギャップに怪訝な表情を浮かべる。思えば今まで会うことができた八英女は悉く悪堕ちした後の姿だったことに気がつく。


 ノーマルな状態を知っている分、本能と欲望に忠実な魔性の姿に面食らってしまったのだ。


 固まったメロディアを尻目にドロモカは他のみんなに挨拶を飛ばす。


「おいっす。みんな、元気だった?」

「まあな。お前がいなくなってガチ凹みしてるドロマーを慰めんのが大変だったぜ」

「ごめんね~。マジで血迷っちった。ウチ如きがドロマー姉様を救うなんて烏滸がましいこと考えちゃって」


 ドロモカがそんな軽薄な様子になったことに驚きを隠せないのはメロディアだけではない。同じく八英女の身に起こった事の全容を知らぬレイディアントも同じであった。


 唖然としか言えぬ表情で固まるレイディアントに対しても、ドロモカは態度を変えずに接する。


「レイディアント。無事だったんだね」

「…他の皆の変わりようも然ることながら、貴様も相当だな」

「えー、レイディアントも凄い魔力帯びてんじゃん。何があったか知らないけど〜」

「かつては堅苦しくも思ったが、こうして見ると軽率な今の貴様よりもずっと良かった…」

「言い方ひどくなーい?」

「そうですね。今の砕けた様子も魅力的ですけど、私も生真面目なあなたを悶絶させる方が好みです」

「畏まりました。お姉様がお望みでしたら、そのような態度で皆様と接します」

「「……」」


 メロディアは絶句した。千変万化するドロモカの様子は元より、伝承にあるように彼女はドロマーの事を心酔して、彼女の言葉は絶対遵守する構えのようだった。


 中途半端に伝承通りなのが質が悪い。メロディアは心の中でそんな悪態をついた。


 そしてドロモカはこちらの心情などはまるで介さずに会話の本筋を整えてきた。


「そう言えば聞くところに寄りますと皆様はメロディア様に悉く返り討ちに遭い、同行する形でスコア様と魔王様の帰還を待っておられるとか」

「その通りです。隷従し、馬車馬の如く働いています」

「借金もあるからな」

「借金の形に性奴隷でございますか…羨ましい」

「誤解を招く言い方をするな」

「僕とミリーさんは弟子入りしています」

「だな!」

「承諾してねえよ」

「アタイとソルカナ様はそれぞれお姉ちゃんとママって事になってる」

「照れますね」

「それに至っては話すら知らねーぞ!」


 と、メロディアの怒涛の反論と訂正とツッコミが続く。単純に頭が毒されている人数の割合が多くなって、流石のメロディアでもてんてこ舞いになりつつある。ボケが供給過多過ぎるのだ。


 そんなメロディアに向かってシオーナは更に厄介な事を言い出した。


「そうなると私とドロモカだけが何もない」

「左様でございますね」

「じゃあ二人でメロディアを倒そう」

「承知しました」

「何でそうなる!?」


 一瞬、流れで出てきた冗談かとも思ったがシオーナとドロモカの殺気は本物だった。本気で打ち勝とうと臨戦態勢を取る。


「ワンチャン勝てれば当初の目的通りに事が進む」

「勝てばお姉様を自由の身にできますし、負ければお姉様と同じく性奴隷になれます」


 二人はそんなよく分からない理屈を唱える。


 言うが早いか二人はそれぞれの得意な戦法を惜しげもなく披露してきた。シオーナは腿に携えていた二振りの刀の柄を持つ。それは途端に光の粒子を集めビーム状のサーベルを形成する。一方でドロモカは自分の二の腕に大きく息を吹きかけた。白く光る吐息は彼女の腕の前に渦を巻きながら留まり、楕円形の盾となる。


双刃と神盾という二つ名に偽りのない戦闘スタイルだ。


二人とも魔に堕ちた事でかつての力が増し、技を更に一つ上のレベルに昇華させている。スピードも威力も申し分ないと、レイディアントは新たな力を手にしたシオーナとドロモカを冷静に分析する。


また、それと同時にこの程度ではメロディアに勝つなど夢のまた夢とも確信できた。


読んで頂きありがとうございます。


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