1‐13
ゴホゴホとせき込んだメロディアを無視してドロマーは告白を続ける。
「あの人は最後まで私達の言葉に耳を貸しませんでした。どれだけ快楽を与えても、反対に責め苦を続けても魔王様を討つ決意と覚悟を折ることはなかった。むしろ私達の方が折れそうでしたよ」
メロディアは父親を思い出す。へらへらとしている顔の奥にはいつも只ならぬ気概を秘めているとは思っていたが、その感覚は間違っていなかったらしい。こんな状況にもかかわらず、メロディアの中で父の株が一つ上がった。
しかしドロマーはドロマーで過去を反芻したらしく、気が触れたように叫び出す。
「なんで、何でスコアは分かってくれなかったの!? こんなに好きなのに。スコアさえいればそれでよかったのに! 世界のために戦っても、他人のために戦っても何にもならなかったじゃない。無理やりだったけれどスコアと触れ合えた、しがらみに囚われていた【八英女】としての私では決してできなかったスコアに愛を囁ける、あの素敵な日々がどれだけ私を満たしてくれたのか、アナタに…アナタに分かりますか!?」
メロディアを縛り付けていた触手の力がドロマーと呼応するように強くなる。椅子の木組みがミシミシと嫌な音を立てた。
「それなのにスコアは姑息な手を使って私達を退けて魔王様を討った……許せない……けれどももっと許せないのは、どこの馬の骨とも知らない女と結ばれて子供まで作ったこと。あんなに好きだったのに。愛してるって言ったのに…望むなら私の全部をスコアに捧げるつもりだったのに」
それからしばらく間があった。はあはあというドロマーの息遣いだけを残して風の音さえも消えていた。
やがて重々しく頭を上げたドロマーは真っすぐにメロディアを見た。そして淫猥でいかにもよからぬことを企んでいる笑みを見せたのだ。
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