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「順を追って話しましょう。伝え聞いているように、私達は最高のパーティと称されながら順調に旅を続け、満を持して魔界へと乗り込みました。しかし、私達は到着と同時に魔王軍から総攻撃を食らいました。読まれていたんですよ、私達の行動が」
「な、なぜ?」
「内通者がいたんです。ご存じでしょう? 弓の名手だったラーダです」
「蜘蛛籠手のラーダが!?」
ラーダと言うのはドロマーと同じく【八英女】の一人。
エルフの国であるヴァンジェロ出身の弓使いの事だ。二つ名の通り、蜘蛛をモチーフにした籠手を身に着け弓を引く。その腕前は百発撃って二百の的に当てると伝わり称されている。
「ラーダの事はともかく、あまりにも不測過ぎる事態に私達は逃亡する以外の選択が取れませんでした。その時、私の頭の中にはスコアを守る以外の考えはなくなっていました。自分の命を賭してでも彼を無事に逃がす。そうすれば勝機は潰えない、とね」
「…」
「私は一言もなく囮を買って出ました。スコアさえ逃がせばもうどうなっても構わないという一心で。目論見通り彼を逃がすことには成功しましたが、あとは多勢に無勢。私は魔王軍に捕らえられ捕虜となった」
そして口元だけで笑った顔をメロディアに見せつけてくる。そしてくすっと生々しい息遣いをする。
「あとは余程の初心か純朴でない限り想像がつきますでしょう?」
敵国に捕まった捕虜。しかも女で、相手は悪逆非道と名高い魔族の軍隊。その上、忌むべき【八英女】の一人ともなれば、確かにその後の顛末はメロディアにとっても想像に難くなかった。
メロディアは眉間にしわを寄せ、想像した陰惨な光景を必死に払拭しようとしている。するとドロマーは優しく彼の頭を撫でた。
「ふふ、そんな顔をしないで。ごめんなさい。少し意地悪をしてしまいました。今言ったのは途中からは嘘なんです」
「嘘…」
一体どこからが…? いや、もう全てが嘘であってほしい。メロディアは願うようにそんな事を思った。
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