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魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達  作者: 音喜多子平
堕ちたドルイド と 堕ちた射手
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7-4

 諸々の経費は自警団に請求できるとはいえ…いや、だからこそあまり高い宿は取りたくないというのがメロディアの本音だ。


「できれば五人が一緒に泊まれる部屋があるといいんですけど」

「おやおや、メロディア君。私たちと離れたくないんですか?」

「はい。できるなら皆さんと一緒にいたいです」

「え?」

「四人も別々に監視するのは面倒なんで」

「ぜ、全然信用されてない…」

「今まで僕の信用を勝ち取るようなことしてないからだろ」


 などと言っては町中を歩き、手頃なホテルを探す。


 するとミリーがとあるホテルを指差して言った。


「あ、懐かしっ! このホテル」

「あら、本当。昔泊まったことがありましたね」

「あーしには結構思い出深いホテルでさ…」

「? なんかありましたっけこのホテル。ボクは記憶に薄いですけど」

「スーと、ちょっとな」


 と、ミリーは照れ臭そうに頬を掻いた。竹を割ったような普段の性格からは想像もできないような汐らしさが感じられる。そんな様を見せつけられると余計に気になってしまうのが人情だ。


「何があったのだ?」

「教えてくださいよ、ミリー」

「いや~実はさ…スーが一人でマスかいてるの知らなくて部屋に入っちゃったんだよな」

「どうせそんなこったろうと思ったよ!!」


 メロディアは人の目など気にせずに叫んだ。


「体勢は?」

「ネタは?」

「掘り下げんな!」

「往来だぞ、貴様ら!」


 レイディアントがすかさずメロディアに加勢してツッコミに回る。メロディアにとっては初めてレイディアントが頼もしく見えた瞬間だった。


 しかし三人はどこ吹く風でそのホテルの中に入っていく。


 ドロマーだけならいざ知らず、母である魔王ソルディダの魔力の影響を受けた【八英女】三人を制するのは中々に難しい。レイディアント(平常時)が向こう側に回らないだけでおも良しと、メロディアはプラス思考で自分を慰めて後に続いた。


 そのホテルはトルベトホテルと言う名前で、可もなく不可もなくのお手本のようなホテルだった。料金的にも設備的にも大きな問題は感じられない。


 それよりも大事なのは五人が入れる部屋が空いているかどうかということ。


「すみません。この五人で一つの部屋はとれますか?」

「…ですと、スーペリアになりますが」

「結構です。一部屋お願いします」

「かしこまりました」


 まだ閑散としていたホテルは確認の手間も掛からぬほどあっさりと入ることができた。


 広いとは言わないけれど、五人で寝泊まりするのだから贅沢は言わない。そしてメロディアは、部屋に着くなり牽制の一言を言霊に乗せて言い放った。


『言っておくけど、部屋の中だからって不必要に服を脱ぐなよ』


 すると、すぐさま「はうっ」という短い悲鳴と、「っち」という舌打ちが聞こえてきたのだった。


 とにもかくにもお茶でも飲んで、一呼吸を置くと早速に件の噂に出てくる正体不明の二人組を見つけて捕らえるための方法を打ち合わせし始めた。


 ◇


「さて、では【八英女】のソルカナとラーダを名乗る二人組の捕まえ方についてですけど」

「何か策はあるのか?」

「ここまでの道中でひとまずは考えてみました。その二人組が本物であればの話になりますが」

「ボクは十中八九、本物だと思いますよ。特徴が的を射すぎてますもん」

「…そうなると一つ疑問があって。気にしすぎかもしれませんけど」

「どのような疑問ですか?」

「レイディアントさんを除いた【八英女】の面々は父、ないし僕に復讐をしたいんでよね?」

「だな。魔王様とスーとメロディアの関係は知らなかったから、魔界を出た後はそういう話でまとまった。で、誰が一番最初にそれを果たすか競争するって流れになった」

「それです」


 メロディアは人差し指を立て、今のミリーの言葉を強調した。


「現に皆さんはその言葉通り、単身で僕の家に来ていました。けど今回は二人とは言え徒党を組んでいます。それが妙に引っ掛かりまして。僕は伝承や口伝でしか【母聖樹のソルカナ】と【蜘蛛籠手のラーダ】の事を知りません。ひょっとしてその二人は戦術や能力的にタッグを組んだ方が強かったりするんですか?」


 そう言うと、四人は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。そしてそれを見ていたメロディアも驚いたような表情を浮かべる。


「え? 何か変なことを聞きました?」

「ああ、いや。そう改めて言われるとそうだなって思ってさ」

「あの二人は出会ったときから二人でいるのが当たり前だったので…いえ、ラーダが一方的に心酔しているだけですけど。ソルカナと共に行動するのはそれくらい当然のことなので」

「一体何故です?」

「ソルカナは世界樹の化身で、ラーダはエルフ族だからだ」

「…ああ、なるほど。言われてみれば」


 メロディアは二人の関係性を思い返したところで納得した。


 エルフ族は森に生き森に死ぬ種族。小枝を踏み折れば、骨を折って償いとするほどに樹木そのものを神格化している。そんなエルフ族のラーダが世界の草木の始祖たる世界樹の化身であるソルカナを崇拝し、隷従するのは至極全うなことだろう。


どんどんと状況証拠や推測が固まっていく。


 するとその時、レイディアントが思い出したようドロマーに聞いた。


「ん? ラーダとソルカナで思い出したが、そう言えばドロモカはどうした?」

「う」

「貴様とドロモカも表裏一体というくらい常にくっついていたではないか」

「うぅ…ううぅ」


すると、ドロマーはまさかのガチ泣きをし始めた。ポロポロと大粒の涙が彼女の頬を伝って落ちる。ミリーとファリカは触れてはいけない話題に触れたレイディアントを見て、あちゃーと言わんばかりにこめかみを手で押さえている。


 事情を知らないメロディアとレイディアントは純粋な涙を溢すドロマーを見て慌てふためく。そして同時に嫌な予感が頭をよぎった。


読んで頂きありがとうございます。


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