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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第20章 囲いの中の戦い

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04 ブーギンモス。~メテオと黒い騎士~

 場所:クラスタル城

 語り:ターク・メルローズ

 *************



 バチバチと炎を上げる熱い鉄壁に囲まれた城の屋上で、私たちは広場の地面を突き破って現れた巨大な魔獣と対峙していた。


 足元はモヤの充満した地下空洞の中でよく見えないが、二足で立ち上がったその身長は、ポルールに現れる六メートルの魔獣の、三倍以上はありそうだった。


 猛牛のようにいきりたち、猛々しい雄叫びをあげるその魔獣は、筋骨隆々の紺青色の体に、鎧のように硬質化した皮膚が黄色く光り、縦長の瞳孔を持つ目が、不気味に光っている。



「あれは、ブーギンモスですわね」


「あんなもの、ただの伝説じゃなかったのか?」


「とんでもない大きさですね……」



 古の時代に居たとか居なかったとか、そんな伝説級の魔物を前にして、マリルは鉄壁を維持しながら、「ふぅ」と大きなため息を吐いた。


 ここまで、おどろくほどの頑張りを見せた彼女だが、こんなおかしなサイズの魔獣相手では、諦めの気持ちにもなるだろう。



 ――あの魔物が地上の高さに上がってくれば、マリルの鉄壁も、簡単に踏み越えてしまいそうだな。



 私がそんな事を考えていると、ブーギンモスは巨大な腕を持ち上げ、「グォー」っと低い唸り声をあげながら、壊れた城の壁ごしに、鉄壁に手をかけた。


 腕の力で穴から這い出そうとしているようだ。


 ブーギンモスの巨大な腕からミヤコ達を守りながら、マリルの様子を窺ってみると、彼女は体の周りにメラメラと、激しい熱気を立ち上がらせていた。



「そんな汚らわしい手で……。わたくしの燃える鉄壁に、気安く触れるんじゃありませんわ……!」



 その顔は怒りに赤く染まり、髪は下からの熱気でゆらゆらと立ち上がっている。



「マ、マリル……!?」


「私の得意技が鉄壁だけだとお思いなら大間違いでしてよ! 二度と上がってこられないよう、徹底的に穴に沈めて差し上げますわ……! くらえ! メテオールラグハーヴ!」



 マリルは爆発したかのようにそう叫ぶと、ブーギンモスのいる穴に向かって、ガンガンと真っ赤な隕石を落としはじめた。


 ブーギンモスは血走った目を見開き、痛みにうめき声をあげている。



「マリルちゃん、これ使う?」



 カミルが城の中で見つけたらしい魔力回復ポーションをマリルに渡している。マリルはそれをガブガブと飲み下すと、また隕石を落としはじめた。


 マリルの攻撃で地下空洞の底が抜け、さらに下の層と繋がったのか、ドゴーンと砂煙を巻き上げ、ブーギンモスはすっかり巨大な穴の底に沈んだ。



「す、すごいな……。これでは何も上がってこられない」



 おどろきに目を見張りながらマリルを振り返ると、マリルはまた魔力を使い果たし、その場にヘナヘナと座り込んだ。鉄壁を出したまま隕石を落とすなんて、流石に少し頑張りすぎだ。



「うぷ……。まだまだ……ですわ」


「マリル。もう十分だ。無理せず休んでいろ」


「マリル様はお任せ下さい!」



 顔色が悪くなってしまったマリルを、エロイーズがしっかり守っている。昔は変態だとばかり思っていたが、エロイーズもここまで徹底していれば、立派な護衛だ。


 鉄壁は消えてしまったが、しばらく魔物が外に出る心配はなさそうだ。穴の中にいた小さい魔物は、今のでだいたい倒された気がする。



 ――あとはブーギンモスにとどめを刺して、これ以上魔物が湧いてこないうちになんとか百人の精霊を浄化しなくては……。



「フィルマン様、僕は地下空洞に降ります。ミヤコとミレーヌをお願い出来ますか?」


「おぅ。気をつけるんじゃぞ」


「ん……? あれは……?」



 私が魔獣蠢く巨大な黒い穴に、飛び込もうと身構えた時、薄暗く曇った空の向こうから一人の騎士が現れた。


 体ひとつで空を飛び、城の屋上に降り立った彼は、全身真っ黒い鎧姿で、頭にも黒い兜を被っている。その体からは黒い闇のオーラがあふれ、波動になって空気を震わせていた。



「なんだお前……。クラスタルの闇魔道士か? それとも魔王か?」


「た、達也!」「タツヤさん!」



 ミヤコとミレーヌが同時に叫び、私はポカンと口を開けた。



 ――あんな禍々しいオーラを放つ黒騎士が、タツヤだと?



 だが、どんなに姿が変わっても、あのムカつく立ち姿は、言われてみれば確かにタツヤだ。



「どうなってるんだ!?」


「分かりません!」



 そうこう言っている間に、倒れていたブーギンモスが起き上がり、穴を這い上がろうと岩壁に手をついた。


 タツヤがブーギンモスの顔めがけ、ダークアローを次々に放つと、ブーギンモスは「グゥォー」と苛立った声を漏らした。しかし、その動きは止まらない。



 ――くそ、這い上がれないと思ったが、上がってくるのか?



 私は光の大剣を振り上げ、穴の中へ飛び降りながら、ブーギンモスの腕を狙って勢いよく切り付けた。魔物の腕がちぎれ、私はそのまま穴の中に落下していく。



 ――高いな。



 落ちる勢いを殺そうと、ブーギンモスの背中の立髪を握ると、タツヤが大量の黒い弾丸を撃ち込んできた。



 ――おぃおぃ! わざとか!?


 ――くそっ。あいつ、味方じゃないのか!?



 焦ってせっかくつかんだ立髪を離してしまい、また地下への落下が始まった。


 上空に身一つで浮いているタツヤを恨めしく睨みながら、私は地下空洞へ落ちていった。



 ブーギンモスが鉄壁に手をかけた事にブチ切れたマリルが隕石を落とし、魔物は一度地下空洞に沈みましたが、また這い上がってこようとしています。そこに、真っ黒な鎧を着た達也が現れ、ブーギンモスを攻撃!加勢に来たのかと思ったら、ターク様にまで攻撃してます。達也はいったい、どうなってしまったんでしょう。地下空洞に落ちたターク様の運命は?


 次回、第二十章第五話 フラワー。~何も起きなくても~をお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 緊迫した雰囲気のなかすみませんが、ターク様がエロイーズさんのことをただの変態だと思っていた、のところに吹き出しました。笑 達也はどうしちゃったんでしょうね。 宮子狙い???(´;ω;`)
[一言] ヤバい状況に現れたのは達也!! ターク様達に攻撃してくるとは!?続き読みに向かいます꒰(⑉• ω•⑉)꒱
[良い点] これまでの経緯からして読者的には撃たれるのも(むしろ撃つのも?)納得ですね。ジェラシーと保護欲と手段をいざとなったら選ばない印象が、達也にはちゃんとあるので。撃たれる心当たりない、ターク様…
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