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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~  作者: 花車
第1章 不死身の大剣士

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10 大人気のターク様。~不死身の大剣士は疲れ知らず?~

 場所:タークの屋敷(ベッドルーム)

 語り:小鳥遊宮子

 *************



「わ! もうこんなに治ったの!?」



 食事の片付けをしに来たメイドのサーラさんは、ソファに座る私を見て、驚いた顔をした。


 サーラさんは昨日、お風呂で私を洗ってくれたメイドさんの一人だった。短いクリクリしたオレンジ色の髪の、活発そうな少女だ。



「よかったわね、ミヤコ。ご主人様がたまたま帰ってきてなければ、絶対死んでたわよ」



 食器を片付ける手を止め、感心した様子で私を眺めるサーラさん。



「え? たまたまなんですか?」


「そうよ! ご主人様は不死身の大剣士様だもん。いつもは当然、ポルールで魔獣と戦ってるの。いまお屋敷にいるのは、たまたまだわ」



 サーラさんの話によると、ターク様は十日ほど前、突然ポルールから屋敷に帰ってきたようだ。そして、領地にあふれるケガ人を治療するため、いまは毎日街に出ているらしい。


 明るい黄色の瞳を輝かせ、弾丸のように喋るサーラさん。彼女はターク様が大好きなようで、彼の話をはじめると止まらないらしかった。


 サーラさんが興奮しはじめると、一緒に来ていたアンナさんも、同じようにターク様を褒めはじめた。



「ご主人様が戻ってから、本当にたくさんの人が救われました。平民や奴隷にまで治療してくれる魔導師なんて、この国にはめったにいませんからね」



 表情がキリリとして、真面目そうに見える彼女は、サーラさんに比べれば、かなり落ち着いて見える。だけど、よく見ると頬が赤らんで、彼女も興奮しているようだ。


 アンナさんが少し身を乗り出すと、サーラさんがさらにぐいぐいっと身を乗り出してきた。



「そう、だからあなた、本当に幸運よ! ご主人様って、最高にやさしいの!」



 メイドたちに褒められたターク様は、満更(まんざら)でもなさそうな顔をしながら、小さく咳払いをしている。



「ふふん、忘れちゃったらしいから教えてあげるけど、ご主人様はね、国中で大人気なのよ!」



 サーラさんはまるで、自分の自慢話をするかのように腰に手を当てふんぞり返った。


 彼女によると、ターク様は昨年から、この街の領主になったらしい。国王から戦地での戦いぶりを評価され、大剣士の称号とともに、この屋敷が建つ領土を与えられたのだという。



「ご主人様は不死身なだけじゃなくてね、剣も本当に強いの。神業みたいだって、国中で話題になってるのよ。この国はどこへ行っても、ご主人様の話題で持ち切りなんだから! ご主人様ってすごいでしょ!?」



 大興奮のサーラさんを前に、ターク様は照れたように笑いながら、首の後ろをぽりぽりとかいた。



 ――そっか、ターク様は、だれにでも治療してくれるやさしい領主様だったんですね。


 ――昨日はちょっと顔が怖かったけど、いまはそうでもないし、あれはやっぱり疲れてたのかな?



 そんなことを考えている間も、サーラさんはさらに話しつづけている。



「領主様が、領民のためにここまでしてくださるなんて、聞いたことないわ! 魔力が少なくなると、普通の魔導師ならフラフラしちゃうものだけどね。ご主人様はなんと言っても不死身だから! いつだってシャキッとしてるのよ!」



 そう言って、ますますふんぞり返るサーラさんに、ターク様は苦笑いを浮かべる。



 ――え? ターク様、昨日はすごく、フラフラしてたけど……? 気づかなかったんだ?



 少し不思議に思い首を(かし)げていると、「ご主人様は本当に疲れ知らずでいらっしゃいます」と、アンナさんが付け加えた。



「当然だ。私は不死身の大剣士だからな」



 そう言って、話を締め括るように「ごほん」と咳払いをした彼。



「サーラ、そろそろ仕事に戻れ。あまり遅いと厨房のやつに叱られるぞ」


「は、はい! ごめんなさい、ご主人様」


「あぁ、しっかりやれよ」


「あ、私も手伝います」



 そう言って、自分の使った食器を持ちあげようとする私の腕を、ターク様は突然、ガシリと掴んだ。



「お前はダメだ。なにもするな」


「ひゃっ?」


「いいから休んでろ。お前たちも、ミヤコにはなにもさせるなよ」


「「かしこまりました」」


 ――え!? なに? どういうこと?



 キョトンとする私に、「静かに寝ていろ」と言い残し、ターク様はそそくさと、どこかへ出かけてしまった。


 メイド達からターク様の人となりを聞かされる宮子。ターク様が自分に治療をしてくれたのは、単に彼がだれにでも治療してくれるいい人だかららしい、と納得しました。


 ターク様に「なにもするな」と言われた宮子はこのあと、ゴイムの暮らしの大変さを知ります。(でもそれは二章のお話です)


 次回、ターク様は婚約者の開くパーティーに出席します。


 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ターク様は不死身で、奴隷まで治療してくれる。 彼のアイデンティティが気になるところです。 何もするなとは宮子のことを気遣ってくれているのでしょうね。 しかしいつもシャキっとしているのに、…
[一言] こんばんは! 今日も拝読失礼します! ターク様の執拗な何もするなと部屋から出るな! ってのには何かあるようにしか感じませんね! そこも楽しみに読ませていただきますね(*´︶`*)ノ
[良い点] ターク様どことなく無理をしている感がありますね~。 宮子さんも薄々それに気づいている様子。 本当に優しい領主で誰にでも分け隔てなく、同じなのかますます興味が沸き上がります♪
2022/07/27 17:59 退会済み
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