裏切り ③
「うるせんだよ!!」
また吹き飛ばされた。
いつものように、ゴミを扱うかのように。
いや、きっとゴミなのだろう。
本倉という男にとって今の俺は、ゴミ同然。それ以下の存在なのだろう。
「もおおとうらぁああああああああああああ!!!!」
それでも俺は叫び続けるしか出来なかった。
意味のない行動。
声を荒げても無駄。
涙を流し続けても無駄。
全ての行動に意味を為さない。
「うあぁあああああああああああああああ!!!!」
叫べば叫ぶほど、他の人間が俺を見る目を強固の物にしていく。
やはり本倉の言う通りだと。
こいつは犯人で、自分達に害を及ぼす存在であると。
敵なのだと。
それでも。
喉が壊れても、俺はもう今は叫ぶしかなかった。
「もぉぉお・・くぅぅ・・ぁあぁあぁ!!!」
「危ない奴だなお前・・・やっぱりな」
やっぱりってどうゆう意味だ。
この世界にみんなを招いた犯人だからなのか、それとも。
小声で呟いたように今も昔もという意味で言っているのか。
俺という存在が・・・嫌いだからか。
「コイツ、殺すわ」
本倉のさり気無い一言が行き渡った。
中には一瞬反応する者も居たが、ほとんどが賛成していた。
賛成しているのにも関わらず自分の手でやると言う奴は一人も居なかった。
だからなのか、本倉は一歩前に出た。
まるで悪者にトドメを刺すヒーローのように。
そんな本倉を後押しするかのように司教の一人が本倉の横に並んだ。
「"大司教様"より、良ければこちらをお使いになられては。と」
「へぇー気前いいじゃん」
一本の剣が本倉に手渡される。
長い刃の反対、持ち手の下にも短い刃が付いている剣。
鍔は小さく特別感ある剣を本倉は舐めるように見ていた。
「いいね、気に入った。喜んで使わせてもらうよ」
ウキウキと慣れない手付きで剣を振るいながらピクリとも動けない俺の身体に近付いてくる。
コン、コン、と近付く足音に俺は顔を上げることすら出来ない。
もう俺は・・・本倉によって殺される。
「情けない面、あの時俺に説教した刻越君とは思えないな」
説教。
一体、何の話しをしているんだ。
それを聞くことすら出来ず俺は髪を掴まれ持ち上げられる。
もはや痛覚すらない、俺にとってはただされるがままだった。
「じゃあな、ゴミ野郎」
その言葉を最後に、本倉は剣で俺の腹部を突き刺した。
剣を突き刺さし貫通した一瞬だけ俺は目を見開いた。
目に映ったモノは、邪悪な笑みを浮かべる本倉。
そして、俺を貫く・・・剣だった。
「・・・ん?」
剣・・・。
「な、なんだ・・・!?」
二つの刃を持つ・・・剣。
『この剣・・・あなたに託します』
また俺は白昼夢を見た。
俺を突き刺した剣。
それを彼女、メリスがあの男に渡すその場面を。