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再会 ③


 きっと透は、視た未来。俺が死ぬ未来を視たんだ。

 それからの透はきっと地獄だったのだろう。






 それは刻越藍が、本倉将弘に剣で貫かれ、ワープ魔法を使った時だった。


「透? ねぇ透?」


 澄原由子は混乱の最中一人静かに立っている安堂透に話しかけていたのだった。


「・・・・・・」


 何かを見ているわけでもなくただ首を下げ目を見開き微動だにしない透を由子は心配していた。

 ワープした藍、この場にいる者達は何が起こってるのかまだ把握もしていない。

 由子も当然、藍の事は心配になっているが。今はそれ以上に透が心配になっていた。


 クラスメイト達も何が何だかわからない状況の中ただ周囲を見渡す事しか出来ない状況の中、この世界の住人である司教が大声を上げ自分達の事を歓迎していた。


 まずは食事などをと、甘い言葉に聞こえる物をみな信じほか無く司教達についてくよう足を動かした。


「透・・・行こう」


 由子の声に透は返事をしなかった。

 だが、足は動いた。


 由子はゆっくりと透の背中を支えるように共に歩いたのだった。



 それからの司教による説明や、この異世界に関する事全て由子は耳に入らなかった。

 食事もみなが楽しんで平らげている中、二人は終始無言だった。


 透はただ虚空を見つめるだけ。

 由子はそんな透をただ見守る事しか出来なかった。


「透・・・もう出ようか」


 透を立たせ、食堂を出てどうにか寝室まで誘導した。

 今の透はきっと疲れている。そうなのだと自分に言い聞かせるしか由子には出来なかった。

 自分だって何が何だかわかってない。なんで藍が偽物で裏切り物で自分達をここへ連れてきた犯人なのか、それすらも理解してない。


「うん、透。もう寝よう・・・一緒に」


 そうだ。寝ればきっと覚めるのではないだろうか。

 そんな淡い期待に身を任せ、ベッドに透を押し倒すように二人は眠りに付いたはずだった。



「藍ぃいぃ!!! うあぁあああ!!」

「・・っ! 透!!?」

「違う!! 違うんだ藍!! 俺がぁ!あぁああ!!」


 それは外が月の光だけになった真夜中。

 由子の隣で透が何かに苦しみながら暴れる姿だった。


 何があったのか、落ち着くように透に語り掛ける由子。

 だが、その言葉は全く届いていなかった。


「藍ぃ!!」


 暴れる透の口から出るのは、親友の名前。暴れながらも涙を流しながら何度も何度も、まるで懺悔をするかのように名前を呼び続けた。


「どうかされましたか!?」

「由子ちゃん!」


 騒ぎを聞き付け現れたのは凛上宝華とこの世界の司教だった。

 わからない。寝ていたら急に透が。そんな事しかわからず、由子は震えながらも説明する。


 宝華はそんな由子を抱き寄せ大丈夫だと慰める。

 司教は暴れる透を抑えるも、あまりにも強靭な力にすぐに振りほどかれてしまっていた。


「仕方ありません。睡眠魔法で一時的ではありますが眠らせます。よろしいですね?」

「・・・はい、お願い・・します」


 今もベッドの上で騒ぎながらジタバタと苦しみながら叫ぶ透に綺麗な光が降り注がれた。

 光は透を包むようにゆっくりと落ちて行く。


「俺が!! 藍!! 俺・・が・・・あ・・・ぃ」


 透は、再び落ち着きを取り戻し取り乱していた息も落ち着きを見せて行ったのだった。


 司教はまた何かあればとそれだけ言いその場を去って行った。

 由子は、宝華にお礼を言いすぐに透に触れようとする。


 だが、まだ由子の震えは止まっていなかった。

 こんな透は見たことが無い。知らない透を目の当たりにしてしまい恐れているのか。


 藍、藍、藍、藍。


 透の言った言葉だ。

 3人は常に一緒だった、透と藍は本当に仲が良かった。由子自身もそんな楽しそうにしている二人を見るが好きだった。


 だが今は、透は一人だ。あの時のような光景はもう見ることが出来ない。


「由子ちゃん・・・」

「うん・・・大丈夫、ありがとう凛上さん」


 震える両手を一度握り締め自力で震えを抑えた。

 そして再び右手を伸ばし透の頬に優しく触れる。


 それを見た宝華は、心配ながらも部屋を後にした。


 静寂が寝ている透と由子の二人を包み込む。

 夢から覚める、そんな淡い期待は当然のように打ち砕かれた。今はもう藍も居ない。


 そして最愛の透は今・・・。



「透は・・・透は、私が守るから」



 透の頬を触れる右手。その右手が、右腕に刻まれた刻印が光り輝いた。

 由子はベッドに身を上げ、透の頬に触れながら顔を近づけた。


「だから・・・今は、眠って。透」


 お互いの唇が重なり合った瞬間。力の発動が済んだかのように光りは消え去り再び二人を静寂に、誰も阻むことのできない時間が流れたのだった・・・。

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