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反撃 ②


「ぐあぁぁああああぁあああ!!!!」


 直撃だった。

 驚愕していた俺は目黒が放った瓦礫の塊をもろに受けてしまった。


 全身に突き刺さるような激痛が走る。

 咄嗟に出した防御魔法で緩和出来る量なんてたかが知れていた。最初に目黒が放った瓦礫の勢いとは桁違いの破壊力に襲われる。


「がぁ・・ぅぐ・・・!!」


 散らばる瓦礫の中央で膝を付く。

 せっかく回復した身体がまたボロボロへと変わってしまったが、何とか生き延びた・・・のか。


 コインズから借りて行ったローブ。恐らくこれに何かしらの魔法が掛けられていたのだろう、ローブはボロボロになってしまったがおかげで命を落とす事はなかった。

 だが、また俺の身体は悲鳴を上げている。


「くっ・・・リット!!! 無事か!!? リット!!!」

「お呼びですか~~・・・なんてな」

「・・・目黒!!」


 宙に浮いたボロボロのリットが目の前に現れた。。

 周囲の瓦礫と同じように、目黒にとってゴミ同然だと言わんばかりに放り込まれた。


 身体を引きずりながら俺はリットに近付く。

 何とか息はしている、死んではいない。だが誰がどうみても、もう戦えるような状態じゃない。必死に防御魔法で抵抗した跡、右手が真っ赤に血で染まっている姿は直視できなかった。


「ふふふふっ・・・あははははははは!!!!!」

「無様っ!」

「お似合いじゃーん、雑魚同士ふふふ」


 笑ってる。


 何だこれ。これが転使の力?

 目黒の言う通り、この異世界の人達は転使の生贄になのか。

 それが真実だとでも言うのか。


 考えれば考えるほど・・・頭がおかしくなる。


「・・・なぁ」

「ははははっ・・・なんだよ? 命乞いなら飽きてるんだが?」


 ゆらゆらと俺は立ち上がった。

 そして乾いた目付きで目黒を睨み付けた。


「お前の刻印・・・弱いな」

「・・・はぁ?」


 一歩踏み出す。

 地を噛み締めながら、一歩前へ。


「だって、俺の事殺せてないぞ。本倉・・・透なら絶対に殺せてたはずだ」


 痛みは走り続けている。

 それでも、やり通さなくてはならない。意識を集中して。


 本来やる事を、達成する為に。


「やっぱ・・・"ランクが低い"って事か」


「てめぇええええー!!!!」


 目黒は激情した。

 回りなんてお構いなしに周囲全ての瓦礫、瓦礫だけじゃないあらゆる物体全てを宙に浮かせ始めた。


「ちょっ! 里香!!」

「うるせぇえー!!! こいつ殺す!! 絶対に殺す、甚振って殺すぅ!!!!」


 思った・・・通りにいってくれてありがとう。

 すぐさま俺はローブを脱ぎ、リットへ向けて投げた。そのままローブをリットの全身に包ませ風の魔法で疑似的ではあるが目黒の真似事のようにリットを避難させた。


 上半身は傷口が開いたんだろう、巻いてある包帯のほとんどが赤く染まっている。

 だが、今このチャンスを逃すわけにはいかない。


「お前も早くあれ使え!! 全部見えなくすんだよ!!」

「わ、わわかったわよ!!」


 目の前の瓦礫の山達が次々と姿を消していく。

 やっぱり俺とリットの予想は正しかった。


 罠と透明化は別の物、目黒の浮かせた瓦礫を消す戦法もあり得ると思った。

 だからこそ、対処をしておいた。


「逃げてみろよ!!! 刻越ぇえー!!!!!」


 目黒が大きく手を振り被った。

 一切見えないが、大量の何かがこちらに飛んでくるのがわからないがよくわかる。

 俺はすぐに加速して目黒達から距離を保ちつつ動き回った。


 次々と降り注ぐ見えない瓦礫。何がどう飛んでくるかわからない。

 俺が逃げている道が次々と跡形も無く見えない瓦礫が破壊し尽くしている。

 猛り狂ってるからか、今日一番と言わんばかりの力を振るう目黒。今はローブも無い、当たれば即終了だ。


「くっ!!?」

「だから視えるって言ってんだよ雑魚がぁああー!!!」


 こいつ弄んで楽しんでる。

 俺が移動する先々全てに小さい瓦礫を放って楽しんでる。


「ぐぁっ!!」


 透明化した瓦礫が足にぶつかり躓き、そのまま地面に叩きつけられて倒れてしまった。

 無様な姿を見て目黒は大層ご満悦の様子で笑い続けていた。

 フェイントを入れても無意味、思考を読まれているかもと考えたがその素振りが一切ない。


 俺が向かう場所を、目黒は完全に視えている。


「おらおら!! どうした!! 逃げねぇーと死ぬぞー!!!」


 駄目だ。このままじゃあ本当に終わる。倒れたままでいるわけにはいかない。立ち上がって再び走り出し残っている瓦礫で姿を隠してもピンポイントで爆撃の如くその場所を吹き飛ばされる。


 確信を持っていい、目黒は・・・転使は視えてるんだ。


「くそっ!!」


 視界が霞んでくる。体に限界が訪れ出した。

 身体強化の魔法が切れ出している。魔力が切れていく感覚を俺に告げ出す。


 ここまでか。

 あと少し、ここをどうにか切り開くことが出来れば、この一歩があまりにも遠く感じる。


 ここを・・・ここを切り返す物さえあれば。




カチャンッ・・・。



 俺は音がした物に触れた。

 それは目黒達と対峙する前に使う機会がまだあるかもと拝借した物、魔法で落ちないように腰に付けていた1本。


 そして俺は、一瞬動きを止めた。



「もうこれで終わりだ。死ね刻越ぇええー!!!!」


 

 目黒の得物を捕えた叫びが響いた。

 それと同時にまた俺が移動した先にトドメの瓦礫が降ってくる。避けることは出来ないほどに正確な位置に、防ぐ事が出来ないほど巨大に。


 俺を完全に仕留めるつもりで、きっと俺が死ぬのが視たのだろう。

 だが俺にはそんな物は当然視えない。


 けど。


 俺は・・・。






『あなたなら、きっと出来ます』



 俺はまた"魅せられた"。




「穿て撃刃!」


 ようやく俺は腰に付けていた剣に触れる。そして今剣引き抜く。

 見せられた、白昼夢のように。出来ると言ったメリスの言葉を信じるように。


「特質不要の純然たる一撃を、今!!!」


 俺に向けて言った言葉じゃないのは重々承知だ、それでも俺は両手に握りしめた剣全体が大きく輝かす。


 ふざけんな。

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。


 人の頭の中で勝手に魅せる白昼夢。

 俺が欲しい情報は何一つくれない癖に、苦くて痛くて辛くて、そんな想いをしないと手を貸してくれなくて。


 ただ・・・ただ彼女の。

 メリスの顔を魅せびらかすだけ魅せびらかしてムカつくんだよ。

 あの男が、お前の最愛の人は素敵過ぎる人間だってもうわかったよ。


 だからこれ以上、彼女を出すな。

 意志が揺らぐ。クラスメイトのみんなの所に帰るって気持ちが揺らぐんだ。

 考えないようにしていた事を考えてしまうだろ。 




 メリスの事を・・・。



 



「消し飛べぇええええー!!!!!!」



 まるで自分に言い聞かせるように俺は叫んだ。

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