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反撃 ①

 目黒里香。

 正直他の誰かなら少し話し合えるかと思ってたが、あいつは凛上と犬猿の仲の如く仲が悪い。そんな凛上と仲良くしている俺達を変に目の敵にしている節は学校に居た頃から思っていた。


 話しが通じる相手では無い、か・・・。


 いや、それでも情報は引き出せるはずだ。

 今みんなが何をしているのか、何がみんなをこんな事をさせているのか。

 目黒は生贄だと言った。それはつまり、この世界から帰る手段があるということになる。

 そしてその方法に、人々を、教会騎士に仇為すレジスタンス襲わせている。


 人を殺せば、元の世界に帰れる。

 教会騎士の連中がそう吹き込んだに違いないだろう。一度異世界から転使を呼ぶのには多大な魔力が必要になるからとか、それに必要な物が人の魂とか訳のわからんことを言えば、みんな嫌でも人殺しをするに決まっている。

 それを拒めば、どうなるか。自分達の目の前で元クラスメイトの刻越藍を見ているんだ、どうなるかなんて誰もが想像できる。


 だとしたら・・・だとしたら。


「なぁ」


 リットがまた俺を呼んだ。

 また俺を現実に戻してくれた、答えの出ない悩みの渦から引き戻してくれたのだった。


「あれ、お前の仲間なのか」

「まぁ・・一応、そうゆう事になるのかな」

「でも、お前に容赦なかったように見えたけど」


 返す言葉も出ない。

 単純明白、奴は俺の事が嫌いなんだ。きっと俺が切り捨てられなくてもその関係は変わらない事だけは自信を持って言える。

 どれだけ取り繕っても、あいつ等に俺の言葉は届かないのかもしれない。


「いや・・・それでも、諦めちゃダメ・・・だよな」


 握り拳を作り自分に言い聞かせる。

 諦めて何が変わるって言うんだ。目を閉じ耳を塞いだ所で何も変わらない。

 この命は、もう無いと思え。そうでないと先へは進めない。


「リット。頼みがある、どうにか奴等の気を引けないか。何とか話が出来るかやってみたいんだ」

「無理言うなよな、あの滅茶苦茶な攻撃にどう対処すればいいか俺が聞きたいくらいなんだぞ。あいつ等ここへ来る途中も攻撃し続けてるはずなのに全く衰えてないし、まだ余裕を残してやがるし、どうかしてるぞ」


 リットの言い分はもっともだ。

 刻印の力。この世界の魔法とは全く違う物で使われている、それはこの異世界に来てから痛い目にあったからこそよくわかる。

 ノーリスクであれだけの力をバンバンと。使われるこっちの身にもなってほしい所だが。


「それでも・・・頼む」


 ただリットに頼むしかなかった。協力をしてくれないと無理だと。情けない事だ、俺には今目の前の幼い見た目の異世界の住人であり種族も違う存在に縋るしかない。


「・・・わかった」

「ありがとう」


 ただ感謝を口にすることしか今の俺には出来ない。だけど、言わないわけにはいかなかった。

 そんな俺を見ていたリット少しだけ顔を赤くしてポリポリとほっぺをかいていたが、すぐに表情を変えた。


「とりあえずお前、あいつ等の力が何なのか知ってるのか」

「いや、正直わかってない。ただ言える事は、この異世界に飛んできて、転使扱いされたのは俺以外のクラスメイト・・・仲間達だ。転使としての印ってことで右腕に刻印が刻まれていたくらい」

「刻印、それがあの力の源なのか。俺以外って言ったけど、お前には」

「あぁ、俺には見ての通り無いんだ。この世界に来るまでみんなただの高校生、ただの人間だったんだ。当然魔法とかあんな力なんか使えるわけも無いし、命を掛けた戦いなんてしてなかったんだ」


 そう、俺達はただの高校生だった。

 それが一変して刻印なんて刻まれたらこんな馬鹿げた殺戮をさせられている。

 こんな話普通ならふざけていると言われかねないが、リットは静かに俺の言うことを聞いてくれていた。


「刻印が無い俺だけど・・・俺には、その・・・」

「なんだ? 急に歯切れが悪くなったな」


 夢を見る。起きている時でも白昼夢を見てこの世界の事が頭に流れ込んでくる。

 異世界転移や刻印のスーパーパワー、それだけでも規格外なのにも関わらず、俺の白昼夢の話なんて更に輪をかけて滅茶苦茶だ。

 でも、言わないと。言えば何かわかるかも知れない―――


「いや、いいや。どうせ自分でもわかんねーんだろ? 自分がこの世界の魔法を何で使えるのか」

「リット・・・」

「身体強化魔法といい、さっきの爆破魔法といい、一応は似たようなの俺も知ってる物けど、お前も転使だから使えたと思ったけど、あの転使達と何か違うってのはわかったよ藍は」


 なんて物解りが良い奴なんだ。恩に着る想いでいっぱいだ。

 とにかくここを突破したら出来る限りの事はリットに全部説明しよう。この白昼夢の事が何かわかるかもしれない。


「んで、"今"の話をするけど。あの瓦礫をぶん投げてくる力と、俺が動けなくなった力。刻印の力ってのは間違いないだろうが、刻印ってのは固有の力、決められた力のみなのか?」


 固有の力。つまりそれは刻印の力は一つだけかどうかという疑問か。

 ここで俺は改めて刻印の力がわかった時の状況を振り返った。自然にそうだと思ったが、確か戦闘用がどうたらこうたらって凛上が言っていた事を思い出した。

 それが事実ならリットの憶測は当たっている。


「うん、多分当たってる。応用の可能性は捨てれないけど、基本的には一人一つだと思って大丈夫だと思う」

「だとしたら」

「あの罠は・・・残りの二人の力か」


 目黒が瓦礫を飛ばす力を使ってきていた時残りの二人は一切手を出していなかったように見えた、単に面倒だからと捉える事も出来る。

 だがあの罠が刻印の力であるのは間違いない。


 その刻印の力は。


「動きを封じる力」

「その姿を消す力」


 これが今俺達が予想出来る手札だった。

 リットを一切離さなかったあの力は、この世界のスライムの捕縛に似ていたようにも感じる。敵の動きに合わせて自在に形を変え動きを封じる物、動けば動くほど見動きが取れなくなっていく仕組みを夢で見た覚えがある。


 そしてもう一つの力は、姿を消す力。恐らく対象を指定しその姿や気配の一切を遮断する力。

 俺もリットも全く気付く事が出来なかったほどの物だ。まるでハイゴーストというこの世界のモンスターのような力を使う。


 スライムにハイゴースト、レベル差はあるがいずれもこの世界じゃあ相当上位のモンスターであるのは間違いないが。


「モンスター・・・?」

「どうかしたのか藍」

「いや・・・ごめん、余計な考え事だった。 とりあえず、これを」


 俺はリットに一つの魔法を掛ける。

 ゲームで言うバフのような効果を付与する魔法だ。


「気休めかもしれないけど、ダンジョンとかの障害物探知の魔法だ。これであの見えないヤツを回避出来ればいいが」

「随分と古臭い魔法だな、まぁありがたく受けとくよ」


 あとは、どう話すかだ。

 こうゆうときの上等手段として相手の情報をまず引き出してからってのがあるが、簡単に口を割ってくれるか・・・。


 いや、意外に行けるかもしれないか。

 相手はあの目黒だ。実際最初に生贄とか言い出していた訳だし。

 上手くやれば話し合いが出来ないまでも殺し合う必要は一先ず無くなるかもしれない。


「考えは纏まったか? 俺はいつでも行ける」

「わかった、行こう。出来る限りの事はする」


 うっすらではあるがまだ気配は感じる、あいつ等が俺達を探しているのかはわからないがまだここに居るのはわかる。


 俺とリットはお互いに相槌を打ち、同時に民家を抜け出す事に決めた。

 2方向から同時に出れば流石の目黒も瓦礫を形成する時間と狙いを定めることを考えると多少の時間は稼げる。

 その間に急接近すればいい。


 罠の対処も済んだ。後は俺次第だ。


「それじゃあ・・・行くぞ!」



 掛声と共に俺達は再び飛び出した。

 身体強化魔法の速度は俺達の世界では考えられない速度を出せる、俺と同じ世界出身の人間じゃあ簡単には捉えられな―――



「ははっ!!」



 俺は自分の目を疑った。それは恐らくリットも同じだろう。

 予測? なら先に俺達が居た民家に向けて撃ち込めばいいだけの話。遊ばれていた? それはあり得るのか?


 この瞬間、俺は、自分が持っている情報以上の物がある事を確信した。



「"視えた"通りだわ!」


 飛び出した先、俺達が移動する方角には瓦礫が・・・もう飛ばされていた。

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