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再戦 ②

 抜き取った剣を眺める。

 普通に売っている剣と同等の物。

 俺の世界じゃあ絶品かもしれないが、この世界じゃあ普通の物だ。


「よくわかった。力の威力・・・そして、お前の実力も」

「減らず口を!! 一気に畳み掛けるぞ!!」


 時間がようやく動いたかの如く騎士が再び襲い掛かる。

 魔法を自らに掛け出したのか一気に間合いを詰められた。


ガキンッッ!!!


 剣と剣がぶつかる音が響く。

 敵の攻撃を払い続ける、残りの4人が一斉に俺目掛けて集中攻撃をしてくる。


 それでも対応出来ないことはなかった。


 右、次は上、また右。

 動きがゆっくりに見えるとかでは無い、ただ動きがわかればそれに対応するように身体が動く。剣を持った腕が自動的に防いでいく、身体が攻撃を避けてくれる。


「ぐぁぁあー!!!」


 そろそろ反撃。動こうと思った瞬間、一人の騎士が倒れ込んだ。


「殺してくださいって背中向けやがって・・・お望み通り殺してやったぞ」


 血塗られた小剣を払い血を地面に飛ばすリットが一人殺した。

 リットも何かしらの魔法を使ったのか、倒れた騎士の甲冑を一撃で貫通させて背中から心臓を一突き。

 思った以上にやれる。いや、年齢で言ったら俺以上。しかもエルフの血が混じっているとなると魔力も相当な物、こんな雑魚達に手こずるわけは無いか。


「2対2。藍、さっさと殺すぞ」

「待てリット、聞きたい事がある。知ってるかどうかわからんが」


 俺は生き残った二人、お互いの背中を預け合い俺とリットに剣を向ける二人へ呼び掛けた。単純な質問を。


「お前達は転使を使って何をするつもりなんだ、これが世界の救済に繋がるのか」

「それは・・・」


 俺の質問に考えている。

 が、それはきっと意味の無い事なのだろうとすぐに悟った。


 騎士の体から魔力を感じられたからだ。


「俺達が知るわけないだろうが!! 死ねー!!」


 火球が俺目掛けて放たれる。

 やはりそうか。ある意味で本当の事を話してくれたようで安心した。


「へっへへへ、直撃だ。これで―――」


 となると。

 やはりあの司教の連中だ。

 嫌な記憶が過ぎる。


「なっ・・・なんだ、お前―――」


 思い出すだけで苛立ちを抑えられなくなる。

 こんな下っ端の奴等が知ってることなんて精々転使を崇めろとかそんな所だろう。

 ならやはり、意味がなかった。


グヂャァッッ!!!!


 肉団子串。

 剣を投げて二人一気に貫いた。面白いくらいに綺麗に決まった。声を上げることもなく二人の騎士は息絶えた。


「教会騎士の連中、何が目的なんだ」

「決まってる。自分達の権力を使って逆らう人間を殺しているだけだ」


 俺が落ちた剣と鞘を拾っている最中、リットは死体になってもなお、睨み続けていた。その様子だけでこの連中がどんなことをして来たのか容易想像が付く。

 きっとそれはリットだけじゃない、さっき助けた男だって、ここに住んでいた人達だって。同じ想いだと嫌でもわからされる。


 これが教会騎士。

 白昼夢や夢で見たことの無い連中だ。


 ここで一つ珍しくわかった事が出来た。


 俺がいつも見せられていた物は、この世界の過去に起きた事である可能性が高い。

 何年前かは、わからない。少なくともこんなにも規模が大きそうな教会騎士という存在が無い時代の物である。


「おい、どうした。行くぞ藍」

「・・・あぁ」


 白昼夢。

 俺が見せられている物の謎を解くのが、もしかしたら俺がやるべき事なのか。

 その事実がわかれば、もしかしたら転移させられた本当の理由がわかるんじゃないのか。

 ただ、ランダムに呼び出されたからなんて事は絶対に無い。


 俺が見ていた夢は、この世界の事であるのだけは、間違いないのだから。


「藍! 避けろ!!」

「っ!!」


 リットの声で気を取り直す。

 上空を見上げると無数の瓦礫が俺に目掛けて飛んできた。


 ただ飛んできただけじゃないとてつもない勢いに乗って飛んできた。

 まさか、ここへ来るまでの間に起こっていた衝撃音。


 その正体か。


「あれ~外したんじゃね??」

「笑うわ~、適当にやっからだろ」

「うっせなぁー。面倒なんだよこれ」


 飛んで避けた先。俺とリット同じように家の屋根に座り込んでいる三人の女子達が目に入った。

 俺が、知っている人物だった。


「あれが、転使・・!」


 リットはその姿を見て目を見開いていた。きっと何かを感じ取ったのだろう。

 俺も最初は全く気付けなかったが。昏睡状態から目覚めてこの世界の魔力とかがわかって初めて気が付いた。


 転使という存在の異質さ。


 魔力とは違う別の何かが目の前の彼女達から感じられた。

 これも全て、あの刻印とか言う物の力のせいなのは考えるまでもない。


「ん? あいつ・・・刻越じゃね!?」


 一人が、俺を見て気が付いた。

 驚愕するように他の二人もこちらを見て息を止めた。


「よう・・・。元気そうで何よりだ」

「はっ、随分なご挨拶じゃん。何? あたし等に復讐にでも来たの?」


 最初に見つけた女子、目黒里香。

 うちのクラスの好戦的女子のリーダー。好戦的なんて言うが簡単に言うとギャルだ。


「そうゆうお前達は、一体何やってんだよ!! こんな、こんな人殺しみたいな事をして」

「人殺し? お前何言ってんだ?」


 何言って・・・?

 目黒の言葉に、他の二人も吹いて笑った。


 違和感。

 完全に何かを間違えているのかと、俺は錯覚する。


「人な、わけねぇーだろ。この世界の連中なんて、あたし等が帰る為に必要な―――」


 全身が震え上がった。

 今目黒が言おうとしている事に。


 俺が今自分で想像しうる最悪を口にしようとしている。


「イ・ケ・ニ・エ。なんだろ?」

「お前等ぁああああああああああああー!!!」


 目黒の言葉に激昂して飛び出したのは、リットだった。

 止める隙も無く一人目黒に向けて小剣を片手にリットが突撃していった。

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