9 だくぷり& erica Youtubeデビュー!?
その後の展開は早かった。
僕のツイッターアカウントでオフ会に参加したい人を募集して、希望者の中からericaが参加者を選抜した。
ひとたびツイートをするだけで、参加希望リプライがわらわら数百件も集まるのだから、僕のネットでの影響力はやっぱり凄いんだなあと改めて感じた。リアルでもこうだったらなあ……。
隣でericaが参加者の選考をしている。
「ん〜、この人はフォロワー1200人ですか〜。 そこそこ多いんですが"超絶"人気には程遠いですね〜」
どの目線で言ってるんだこいつ……。
「次は……と、フォロワー250人ですか〜。そのフォロワー数でよく参加しようという気になれましたね〜」
めちゃくちゃ性格悪そうなセリフだな。
「お! フォロワー3万5千人!? しかもニコニコ生放送をやっていて、コミュ人数5万7千人!? この人良さそうですよ! 健太郎さん!」
このようにして、超絶人気ニコ生主ジュエルさんが選抜され、引き続き、超絶人気なろう作家ブルーバードさん、超絶人気Youtuberきるりあさんが選抜された。
* * * * *
「ふむふむ、ツイッタラーのだくぷりさん、なろう作家のブルーバードさん、Youtuberのきるりあさん。で、あんたは誰なん?」
ジュエルさんがericaに対して当然の疑問を投げかける。
さあ、どうする! erica!
「私はだくぷりさんの……妻です」
は?
「私はだーくねすぷりんすの妻、らいとにんぐぷりんせすです。ていうのは嘘で普通にだくぷりさんの彼女です」
……。 は?
と思ったのは僕だけのようで、
なにそれー!っと僕以外の3人にどっと笑いが起きる。
え、今面白い要素あった? 全然ついていけない……。
ていうか普通に彼女っていうのも嘘だし。
「やっぱり彼女なんだ〜素敵〜! ねえ、いつから付き合ってるの? どこで出会ったの!? どこまでいったの!?!?!?」
ブルーバードさんが興味津々に質問攻めてくる。
さすがは恋愛作家。
一瞬目が合ってどきっとしてしまった……。
しかしこうして見るとブルーバードさんって相当可愛いな……。
ericaとはまた違ったタイプの可愛さというか、ericaは顔の可愛さの反動で性格が大変なことになっているが、ブルーバードさんは顔も可愛いのに、性格の良さというか人の良さも滲み出ている。落ち着いた雰囲気が感じられる一方で、元気よく楽しそうに話す姿から根の明るさが感じられる。
「どこまでいったかですか? それはですね〜 せっ」
慌ててericaの口を塞ぐ。
何を言おうとしてるんだ。
「うぐぐぐぐっ ぷはっ もう! 健太郎さん! やめてくださいよ!」
……。
「「「健太郎さん?」」」
3人の声がハモる。
普通に本名言いやがったこいつ……。
「いや、あ、えーっと、ケンタッキー3個食べたいなーって言っただけです!」
ごまかし方下手ーーーーー!!!
しかし……
「あーなるほどね! 確かにケンタッキー食べたいかも!」
きるりあさんがericaの下手くそなごまかしに納得する。
おそらく僕の本名を言っちゃったっていうのはバレバレだけど、気を遣ってスルーしてくれているのだろう。
怖そうな見た目をしているけど優しい人だ。
しかしこの女、なにかしらやらかしそうとは思ってたけどやっぱりか……。
ericaのやらかしに呆然としていると、きるりあさんがこんなことを言い出した。
「話変わるんだけどさー、俺のYoutubeでこのオフ会の様子を動画に撮ってアップロードしたいんだけど、みんな大丈夫?」
動画に撮ってアップロード? そんなこと許されるわけ……
「良いですよーーーー!!!」
そう元気よく飛びつくように言い出したのはやはりというべきか、
天下無双の怖いもの知らず! erica!
ericaが僕の耳元で小声でささやく。
「これはチャンスですよチャンス! あの人はチャンネル登録者数19万人のYoutuber! そんな巨大チャンネルでこの超絶美少女JK ericaちゃんが登場するわけです! ついに世間が私の存在に気づいてしまうわけです! これで私の人気もうなぎのぼりですよ!!!」
「この前ネットで顔を出すのはNGって言ってましたよね?」
「言ってないですよ?」
「言ってましたよね?」
「言ってないですよ?」
「言ってましたよね?」
「言ってないですよ?」
だめだこりゃ。
ドーパミンで頭やられちゃってますわ。
しかし、僕はというと……
心の中で話してて会話してる気になってたけど、はじめの挨拶以外まだ一言も喋れてないです。
オフ会、恐るべし!