8 だーくねすぷりんす、オフ会に行く!?
休日昼間のファミレスの席。
今この空間には5人の人間がいる。
「きょ、今日はお集まりいただきありがとうございます……。僕がツイッタラーのだーくねすぷりんすです……」
1人目は言うまでもなく、Twitterフォロワー9万2千人を誇る超絶人気ツイッタラー、だーくねすぷりんすこと僕。
「だくぷりさんめっちゃ緊張してるやんww 肩の力抜けよww」
2人目は僕の対面に座る20代後半に見えるこの男性、ニコニコ生放送でコミュ人数5万7千人を誇る超絶人気生主、ジュエルさん。
主にゲーム実況やご飯を食べながら漫画やアニメを語る配信をしている。
「みなさん、今日は! よろしくー!!!!」
3人目はジュエルさんの隣に座る元気はつらつなこの女性、小説投稿サイト「小説家になろう」で総合評価1万8千ポイント、直近では日間PVを3万ほどを稼ぎ出している超絶人気女子大生作家、ブルーバードさん。
いずれ作品が書籍化されるだろうと評判だ。
主に現実世界の恋愛ものを書いている。
「だくぷりさんよ〜、オフ会に彼女連れてくるとはなかなか煽ってんなあ!?」
4人目はブルーバードさんのさらに隣に座る僕と同じくらいの年齢に見えるこの男性、チャンネル登録者数19万人を誇る今をときめく超絶人気Youtuber、きるりあさん。
まだまだ伸び盛りでいずれは100万人に到達するのも時間の問題だと言われている。
既存のスタイルにとらわれない奇抜な動画で人気を集めており、動画のジャンルは多種多様である。
そして……
「きゃ〜、彼女ですって!! 私だくぷりさんの彼女って言われてますよ〜〜、彼女〜〜彼女〜〜笑」
最後は僕の隣に座る相変わらずやかましいこの女、リアルで超絶人気者だがTwitterフォロワーはわずか400人、天下無双の無名の美少女erica様。
リアルで超絶人気者だけどそれだけでは物足りず、ネットでフォロワーを増やそうとするが、現在絶賛伸び悩み中。
「「「「それでは、かんぱ〜い!」」」」
「か、かんぱ〜い」
コミュ障ゆえ相変わらず輪に入っていけない僕……
なんでこんなことになったんだーーー!!!
* * * * *
遡ること1週間前。
「オフ会ですよオフ会!!!!」
AM7時、鳴ったスマホに起こされて、電話を取ると例のやかましい声が聞こえてきた。
LINEを教えて以来、ここのとこ毎日モーニングコールをかけてくる。
「オフ会ー?」
「はい!! オフ会です! 私、いいこと思い付いたんです!! 私の望みはネットで人気者になる、健太郎さんの望みはリアルで友達を作る これを同時に成し遂げられる方法は、オフ会という魔法のイベントに参加することなんです!!」
引っ越してきたお隣さんであるということが判明して以来、僕のことを『だくぷりさん』ではなく、『健太郎さん』と呼ぶようになった。
とは言っても、僕と直接会う前から僕のことはお母さんに聞いていて、顔も名前も知っていたらしい。
知っていた上で話しかけてきたのだ......。
「は、はあ」
朝起きたばっかりなので、頭が回らない。
オフ会、オフ会、オフ会……。
……。
オフ会ーーーー!?
「オフ会って、あのネットで知り合った人とリアルで実際に会って話したり、遊んだりするあのオフ会?」
「そのオフ会以外あるんですか! そうですよ!!」
「いやぁ〜、リアルで会うのはな〜」
「何をおっしゃってるんですか!!!!!!!!!!!!!!!!!」
うるさ、耳壊れるわ……。
「大学の友達に話しかけましょう!っていうところからレッスンを始めてもどうせできないんでしょ!? だったらまずは得意のネットを使って自分にそれなりに好意のある人と会ってみたらいいじゃないですか!! そこからですよ!!!!」
それはその通りなのかもしれない……。
オフ会で知り合って仲良くなった人をリアルの友達と呼ぶかは微妙だけど、リアルで人とコミュニケーションをとるということが僕にとって重要なのだ。
しかし、大学の友達に話しかけることすらできないって、改めて言われるとほんとに情けないな……。
「ん〜、まあそれは分かったけど、なんでそれがえりえりさんのネットで人気者になるってことに繋がるの?」
「えりえりさんじゃなくてえりえりです!!!」
「えりえり」
「っ!!!!」
このくだり何回目……。
「それはですね〜、オフ会にネットで超絶人気者の人を呼べばいいのです!!!!! 名付けて、ネットで超絶人気者を呼び出してそいつらと仲良くなるついでにどうやったらネットで人気者になれるのか聞き出そう大作戦です!!!!!」
なんかそいつらって言葉が聞こえたけどもういいや。