2 前哨戦 だーくねすぷりんす VS erica 勃発!
「もしかしてだくぷりさん、スタバは初めてですか?笑」
ericaがからかうような笑顔で聞いてきた。
なんでそんなに嬉しそうなんだ……。
用事があるので話はまた今度、ということにしたかったのだが、
「そうやってするべきことをどんどん後回しにしていった結果、友達を作るという行為も後回しになっていったんじゃないですか!!! 思い立ったが実行ですよ!!!」
などと言って聞かなかったため、駅の近くのスタバで第一回友達作ろう大作戦の会議を開催することとなった。
お母さんの学生時代の友達がお隣に引っ越してくるっていうので、手伝わなければいけないのだが、まあいいや。
「いや、別にスタバくらい行ったこと……」
「ほんっと嘘が下手なんですね!」
「くっ、なんで分かるの〜」
「注文する時あたふたしすぎですよ! スターバックスラテを頼むくらいで心身疲労してるようじゃ、友達を作るなんて遥か夢の先ですよ!」
「だよねえ……」
ericaはオレンジ色のフローズン的な謎のドリンクを飲みながら、呆れた顔をしている。
女子ってなんかよく分からない飲み物飲むよね〜。
「それ美味しいの?」
「美味しいですよ〜。マンゴーパッションティーフラペチーノって言うんですよ〜。女子高生の間でめちゃくちゃ人気なんですよ? この前クラスの友達10人くらいでスタバに来た時みんなこれ頼んでました〜」
友達10人でスタバに押しかけて全員同じもの頼むとかどんな状況だよ。女子高生謎すぎるでしょ。
「そんなに美味しいんだ〜」
「一口飲みます?」
「へ?」
「ほらど〜ぞ〜」
ericaがフラペチーノとやらが入ったカップを僕の顔の方に近づけてくる。自分のストローを差したまま。自分のストローを差したまま!?
え!? 間接キス!?!?
「いいですよ〜。気にしないので〜」
ほんの十数センチ先にプラペチーノのカップに差されたericaのストローがある。ericaがさっき使っていたものだ。
少し顔を近づけるとほんとに間接キスができてしまうような至近距離……。
あれ? どうしてこうなった? 友達の作り方を教えてやるって言われて、ノコノコスタバについてきて、マンゴーなんたらフラペチーノがどうのこうので、いつのまにか女の子と間接キス? 友達すらまだできてないのに……。
でもここでビビったら……
「だくぷりさん、間接キスなんて気にしちゃってるんですか〜笑 やっぱりお子ちゃまなんですね〜。ぷぷっ、ぷぷぷっ笑」
なんてericaにまたバカにされてしまう!
それはもういやだ!
僕もやる時はやる男だって見せつけてやるんだ!!!
ドクッ ドクッドクッ ドクッドクッ ドクッ
自分の心臓が高鳴っているのが分かる。
もうマンゴーなんたらフラペチーノが美味しいかどうかなんてどうでもいい……。 ここは男を見せるんだ!
高鳴る鼓動を抑えつつ、ストローに自分の口を近づける。
目を閉じて、ゆっくりゆっくり......ストローの方へ……。
走馬灯のように長い時間の感覚を抱きながら、徐々に徐々に近づいていく……。
最後の一寸、勇気を振り絞ってストローを咥えようとした、その時……
パシャッ
え?
……。
「っなーんて! だくぷりさんの恥ずかしがってる顔、可愛いかったですよ〜! ご馳走様〜笑」
フラペチーノのカップを取り上げられて、行き場を失ったその顔は、この世で最も情けない。
心臓をバクバクさせながら、目をつぶって女子高生のストローを咥えようとしている天下のだーくねすぷりんす様のご尊顔は、無事謎の美少女JK erica様のカメラロールに保存されました。
その後、自分のストローでマンゴーパッションティーフラペチーノを飲ませてもらった。
感想は、
「うん、マンゴーの味だね」
ericaにケラケラ笑われた。