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13 ericaの世界

「ねえ、ちょっと2人で抜け出さない?」


 カラオケ2巡目、ジュエルさんの熱唱中、そう話しかけてきたのはブルーバードさん。


「え?」

「話があるの」


 話? 美人女子大生人気作家様が僕に何の話があるんだ?

 まさか……。


「トイレの前で待ってるから、怪しまれないように少し時間おいて来てね」


 ブルーバードさんはそう言うと、「ちょっとトイレ行ってくるねー!」とみんなに伝えてカラオケボックスから出ていった。

 ……。ハナシッテガチデナニ。




      *  *  *  *  *




 言われた通り、ブルーバードさんが出ていってから5分くらい経った頃を見計らって、トイレへと席を立った。

 ericaが「おトイレついていきます!!!!! だくぷりさんと〜〜♪ 連れション連れション〜〜楽しいな〜〜♪」などと訳のわからない歌を歌いながらついてこようとしてきたが、「みんな抜けると今歌ってるきるりあさんが可愛そうでしょ!」と躾けておいた。どうせ男子トイレと女子トイレで別れるでしょうに……。


「お、きたきた」


 トイレの前に行くと、約束通りブルーバードさんが待っていた。

 謎に緊張感が漂う。まあさすがに急に告白されるなんてことは……。


「だくぷりさん!」

「はいっ!」

「私……あなたのことが……」


 え? 嘘でしょ? 最近僕モテすぎじゃね……?


「好き」


 "好き"という言葉を聞いて心臓が高鳴る。

 しかし、高鳴ったのは一瞬で


「な人が心配なの!」

「はい?」

「ericaちゃんが心配なの!」


 最初からそう言えーー!!! ……ってericaが心配?


「さっきericaちゃんとずっとお話してたんだけど……」


 カラオケまでの道中、僕、きるりあさん、ジュエルさんの男3人組とerica、ブルーバードさんの女2人組に分かれてそれぞれ会話をしていたのだが、その時のことだろう。


「ericaちゃん、友達とか学校の話になるとなんか話を逸らすと言うかごまかすと言うか変な感じになるんだよ」

 

 ブルーバードさんが心配そうに言う。でもそれは……。


「大丈夫ですよ! あいつああ見えて高校にめちゃくちゃ友達いるんですよ! 前の高校では全校生徒&全教員と友達だったらしいですからね〜〜笑 凄すぎて笑っちゃいますよね!? 羨ましい限りですよ笑 今の高校に転入してきてからも、さっそくクラスの子たち男女問わず全員と友達になったらしいですからね! とんでもないコミュ力ですよねほんと、そこだけはあいつの尊敬できるところなんです! なので、安心してください!」


「でもそれ、見たわけじゃないんだよね? ericaちゃんが友達と一緒にいるところ、一度でも見た?」


 ずっと違和感を覚えていたところにブルーバードさんの言葉が突き刺さる。確かにericaが友達と一緒にいるところを見たことがないのだ。友達10人と旅行に行った時の話や友達10人とお泊り会をした時の話など、大勢の友達といつも一緒に遊んでいるということは日常のように聞かされているのだが、話に聞いているだけで実際には見たことはない。


「でもあいつ、今ネットでフォロワーを増やすことしか頭にないみたいで、最近は友達と遊ぶことは疎かになってるんじゃないですかね? このオフ会も、僕が友達を作りたいと思ったところから始まったっていうのは本当なんですが、実はericaがネットで超絶人気者たちを集めて、どうやったらネットで超絶人気者になれるか聞き出そう! とか言い出したのも、開催しようと思った理由の1つなんです。あ〜これ言わないほうが良かったかな……。ごめんなさいね? 失礼な話で……。だからericaと話してる時、ブルーバードさんもフォロワーの増やし方、ネットで人気者になる方法をめちゃくちゃ聞かれたでしょ!? なんかその光景が簡単に目に浮かびますよ……。僕も最初しつこく聞かれまくって大変だったんですから!」


「そんなこと、一言も聞いてこなかったよ?」


「え?」


「ericaちゃん、ほんとはそんなこと興味ないんだと思う。笑顔で楽しそうにだくぷりさんの話ばっかりするんだよ。だくぷりさんしかあの子の世界にないみたいに。それがなんか脆くて、壊れそうで、儚くて」


 今まで身近に感じていたericaが、全く分からなくなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] おや、なんか前提がひっくり返っていますね。 真実は、いかに。
[一言] ブルーバードさんいい人だね。 確かに、ちょっと変ですよね。 コミュ力抜群だったら、フォロワー獲得だって普通にできそうだもの。 見た目も良いわけだし……。
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