第096話(角兎乱獲?!)
「ほんとのほんとのほんとのほんとーに、困ったら戻ってくるのよっ!」
クーフェさんは何度も何度も念押しされながらも、僕達がこの家を離れて生活することを受け入れてくれた。樹海の町ウルスにキてから本当にお世話になった。クーフェさんがいなかったら、冒険者講習も受けられなかったし、日々の生活にも困ってしまっていたことだろう。
クーフェさんの家を離れ、兎の一角亭のゼクスさんに紹介してもらった草原の小兎亭に一室を借りる。ベッドは僕とポメの分だけあれば良いから2人部屋になる。風爆狼のファングはいつも僕の寝床に潜り込んでくるし、火喰鳥のビークはベットの端に留まったまま寝るから、二人分の広さで十分だ。
宿に荷物をおいた僕達は、依頼を受けるために冒険者ギルドへ向かう。先日の依頼でランクが一つ上がってEランクになったので、もうちょっと多くの依頼が選択肢になるはずだ。とはいえ、ギルドマスターのザックさんからお願いされた一角兎の討伐というか肉の仕入れもこなさないといけないな。
冒険者ギルドの依頼板には様々な依頼が張り出されていた。先日依頼を受けた薬草の採取や、毒消草や麻痺に効く一葉萩などは常時依頼でいつでもうけられるが、野獣の討伐などは都度都度だ。
「うーん。毒蛇や大型の百舌鳥の依頼が多いみたいだね。初心者講習の時も倒せたから、これにしようか?」
僕が僕が一通り依頼板を眺めてから取り外したのは、町の東側に広がる灌木地帯でのクエストだ。先日依頼を行った南側に比べて、少し強めの野獣が生息することもあり、冒険者ランクE以上でないと受けられない依頼だ。
他にも小邪鬼や茶色熊の討伐、はたまた小飛竜の卵採取などが貼られている。
「うーん。おかしいのです……」
そんなクエストボードを見ていたポメが不思議そうに首をかしげる。
「どうしたの?」
「うーん。どうせヘチマヘッドのご主人様に言っても理解できないから気にするな、なのです」
「ヘチマヘッド?」
「いいからヘタレヘッドのご主人様は依頼を受けてくるがいいのです」
そんなポメに話しかけると冷たくあしらわれる。まぁいつものことだから、仕方ないんだけど。しかしヘチマヘッドって何?
「これを受けたいんですけど」
ポメに冷たくシッシッされた僕は、依頼板から取り外した依頼書を受付カウンターに持っていく。
「はい。討伐依頼で対象は毒蛇と大型の百舌鳥ですね。討伐確認部位ですが、毒蛇前顎にある毒の牙2本、大型の百舌鳥は嘴になりますので、採取漏れのないようにして下さい。あとEランク案件2つになりますので、手数料として銀貨2枚を頂きます」
今日の受付はクーフェさんじゃなかったけど、ここのところずっと冒険者ギルドに通っていたから、僕のことも覚えていてくれたようで、丁寧な対応をしてくれる。僕は受付の人に銀貨二枚を手渡す。
「そしてこの2種の野獣ですが、一角兎の乱獲のせいで、生息域が広がっており、街道を通る商人さんなどに被害が出始めているので討伐対象になっています。なるべく速やかに多くの討伐を行っていただけると助かります」
なるほど一角兎の乱獲が問題ね……ん?一角兎の乱獲??
「それってもしかして……」
「はいっ!一角兎のステーキ、リコピルソース掛けと一角兎のブラウンシチューの爆発的な売れ行きにより、一角兎の需要が高まったせいだと考えられますねっ!」
受付の人が両手を合わせて溢れんばかりの笑顔で断言する。
「ぼ、僕のせい……?!」
「料理を作るだけで生態系を破壊する……さすが御主人様は森林破壊の申し子なのです!!」
ポメが腰に手を当てて大きくふんぞりながらドヤ顔で物を申す。
「ああああああ……」
僕は○| ̄|_とがっくりと膝をついて、大きく項垂れる。
「まぁ、多少乱獲した所で、一角兎はかなりの数生息していますから、絶滅することはないと思いますけどね」
全く根拠のない答えに、全く救われた気がしないまま、僕は冒険者ギルドを後にする。
「そして御主人様は、再び環境破壊に勤しむつもりなんです?」
「いや、勤しむ気はまったくないんだけど……なんで、他の野獣でも美味しい料理を広めたりしないとだめだろうなぁ……」
僕は、そんなことに少し頭を悩ませながら、東の草原へと抜けるために東の門を目指す。
街道が西から続いていることもあり、東西に横断する大通りは、南側の地区より活気がある。そして狩りに向いていることもある東の草原地帯は人気があり、東門は南門と違って人が多かった。
東門を出ようとした際に身分証の提示が求められたので、Eランクの証である鉄の冒険者証を見せると、門番の人が頑張れよと声をかけて送り出してくれる。どうやらFランクだとちゃんとした理由がない限り、東門を出させてくれないらしい。初心者冒険者はまず、比較的安全な南側の草原で腕を磨けということらしい。その先にあるアーグ大樹海は尋常じゃないほど危険なんだけどね。
「さてと、じゃぁ狩りを開始しようか」
「はいなのです!」
ワォンッ!!
ピピィ!!
僕がそう声をかけるとみんなが元気よく返事をする。そして冒険者として独り立ちするための一歩を踏み出すのだった。




