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第093話(講習完了?!)

 数日に及ぶ初心者講習では色々合ったけど、僕達は晴れて初心者講習受講済みになった。ケイン君達も及第点を一部出しながらも講習済となり、冒険者ギルドカードの発行を受けていた。僕達は既に冒険者ギルドカードの発行を受けていたので、それらの特典はなかったが、当初の目的である基本的な知識や周辺の情報を得られた事はとても大きかった。


「シン君、お疲れ様。これで駆け出しの冒険者に必要な情報が習得できたわね」

「えぇ、貴重な講習でした。色々ありがとうございました、クーフェさん」

「いいのよ、ギルド職員としての業務をしていただけなんだから」

「いえいえ、この町に来て何もわからない僕達を受け入れ導いてくれたクーフェさんがいなかったら、僕達は何もわからずどこかで野垂れ死んでいたかもしれませんから」

「……シン君たちの実力ならないでしょう?」

「世の中何があるかわかりませんからね……毒蛇に噛まれてポックリなんてこともありそうですから」

 僕に近づいてきたクーフェさんが胸の下で腕を組んで前屈みになりながら、僕に話しかけてくる。その見事な豊満な双丘が僕の視界を専有してきて、どこにピントを合わせたらいいかわからずにドギマギしてしまう。


「うふふふ、なぁに?」

 それをわかってか、艶っぽい声を出して僕に迫ってくるクーフェさん。


「おい、シン!これで俺たちも冒険者だ!負けないからな!!」

 僕が顔を真赤にしながらアワアワしていると、元気いっぱいの脳天気な声で呼ばれる。たちの悪い教官冒険者にノサれていた事はすっかり頭の中にはないらしい。


「あぁ、ケイン君。おめでとう」

 僕がそう言ってそちらに視線を向けると、ケイン君の仲間の、オリバー君、エリーさん、ココットさんが首から下げたギルドカードを少し持ち上げながら笑顔を浮かべる。


「これで少しは孤児院に恩返しできそう」

「そうだね」

「お腹いっぱい美味しいご飯が食べられる……」

 殊勝な事を言うエリーさんとオリバー君、個人の物欲たっぷりの発言をするココットさん。そのギャップに僕は思わず笑ってしまう。


「俺は有名な魔獣ハンターになって孤児院のみんなに楽な暮らしをさせるんだ!兄貴のように!!」

 拳を突き上げながら宣言するケイン君。相変わらず暑苦しい熱血漢だ。


「はいはい。とりあえず無事に初心者講習を終えたってことで、夕方にちょっとしたパーティをするから参加してね、みんな」

 クーフェさんが僕達やケイン君達を見て、ウィンクしながらそう言う。


「わかったぜ。俺達は孤児院に報告だっ!」

 夕方まではまだちょっと時間があるので、僕達はどうしようかと頭をひねるが、ケイン君達は孤児院に戻ることを即断した。


「じゃぁ、また後でねー」

「じゃぁね」

「……じゃ」

 駆け出すケイン君と律儀に挨拶していく他三人を見送る僕達。


 初心者講習も終わったし、僕達は自律して生活していく予定だ。その為には、まず拠点となる宿が必要だ。町の中もだいぶわかってきたが、どこの宿屋を拠点にしようか悩む。クーフェさんに聞きたいところだが、聞いてもずっと家にいればいいとか言われて話にならないだろう。


 という事で、僕達は兎の一角亭へ向かう。元冒険者でこの町に長くいるゼクスさんなら良い宿を紹介してくれるだろう。

 想定通り、宿代がそこそこ安いが食事も出るし部屋の融通もきく宿である、草原の小兎亭を紹介してもらえた。なんというか兎繋がりだねこれ。

 草原の小兎亭はファングやビークみたいな小型の魔獣なら、排泄物の処理が適切なら同じ部屋で生活することも可能なのがありがたい。大型になったら仕方ないけど、まだ小さいファングとビークだけ厩舎で離れ離れというのも寂しいからね。

 草原の小兎亭の部屋はまだ空いているらしいので、明日くらいにお願いすると思いますと一言残して、僕達は冒険者ギルドに戻っていく。


 冒険者ギルドの扉を開けると、既に酒場部分は満員で、何人もの冒険者さんが既に飲み始めていた。その内の一人が僕達が入ってきたことに気付くと、手招きをしながら酒場の奥に行くように案内する。


 僕はお辞儀をしながら奥に入っていくと、一番奥の2つのテーブルだけが空いていた。椅子が2つと4つの席が空いていたから、僕とポメの席と、孤児院の4人組の席なのだろう。


「新しい仲間に乾杯!」

 僕達が席につくと、既に飲んでいた一人の冒険者さんがジョッキを軽く掲げて、そう言うと、周りの冒険者さんたちも同じようにジョッキを掲げて祝福の言葉をくれる。

 少し遅れてケイン君達が入ってきて、席に座った時も同じように祝福してくれていた。


 全員が揃ったところで、冒険者ギルドの方からギルドマスターのザックさんが、受付の女の人にジョッキを手渡されながら、酒場に入ってくる。


「おう、お前ら!今日は新しい仲間が誕生しためでたい日だ!大いに飲んで騒げ!!」

「おおおおーっ!!」

 ギルドマスターの一言で会場が大盛り上がりする。


「初心者講習会が終わった後は、初心者の冒険者への歓迎と、顔合わせ、今後のフォローがしやすいように、こうしてできるだけ多くの冒険者を呼んで、歓迎会をするんです」

 すごい熱気に目を白黒させていた僕の横に、クーフェさんがやってきて説明してくれる。


「でも今日は冒険者だけじゃないようですけどね」

 クーフェさんの視線の先には、キリクさんと門番の人がいて、その周りにはそばかすが残るショートヘアのエイミーさん、解体のスペシャリストのオックスさん、兎の一角亭のゼクスさんと言った僕に関わりのある人も多く参加しているようだ。

 そして見慣れない感じの人達は、ケイン君達を温かい目で見ているところを見ると、ケイン君の関係者なのだろう。


「2組の新しい若手の冒険者達が仲間になったことも多いが、俺らの飯の大幅改善をしてくれたヤツもその一人だ!今日はそいつの料理も大盤振る舞いだから、楽しんでくれ!!」

 ザックさんがそう言うと、大皿に乗った一角兎(ホーンラビット)のステーキが大量に運ばれてくる。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!これこれ!最近じゃ、これを食わないと一日終わった気がしねぇよ!!」

「な、何、そんなに旨いのかコレ?」

「お前まだ食ったことないのかよ!そりゃ人生の9割破損してるな」

「そんなに?!」

 冒険者さん達がにぎやかに大騒ぎしている。


「あと見てくれは悪いが、味が絶品の料理だ。コイツは兎の一角亭のゼクスからの差し入れだ!!」

 続けてザックさんがそう言うと、大きな寸胴鍋が運ばれてくる。あの中身は間違いなく一角兎(ホーン・ラビット)のブラウンシチューだろう。


「おぉ!コイツまで食えるのか!!最近は売り切れ続出でまともに食えないって聞いたぞ!」

「なに?あの料理があるのか!俺にもくれ!!」

「え?な、何この泥水みたいの」

「じゃぁ、お前は食わないでいい!……あー、このコク、トロトロになりながらもしっかりと肉の食感と旨味を残している肉!煮込まれた野菜も味が染み込んでいて絶品だ!!」

「え?マジ?そんなに旨いの?よこせ!!」

「……ま、マジだ!ゲロ旨すぎんだろコレ!!」

 ゼクスさんの一角兎(ホーン・ラビット)のブラウンシチューも、段々みんなに受け入れられていっているようだ。


 僕の提供したレシピで作った料理を楽しそうに、美味しそうに食べている冒険者さん達を笑顔で眺めていた僕に、ギルドマスターのザックさんが耳打ちする。


「シン、冒険者の活動はいつから始めるんだ?」

「一応、明日から軽く始めようと思っているんですが」

「そうかそうか、それはありがたい。でだ、悪いんだが一角兎(ホーンラビット)の討伐依頼を受けてくれんか?人気絶賛すぎて数が足りなすぎて困ってんだ。お前の獲ってきたやつなら品質が高くて、問題が少ないからな。報酬は銀貨4枚のところ5枚出す。ポイントもボーナスしておくがどうだ?」

「あ、はい。じゃぁやります」

「ガハハハハハ!助かったぜ!!じゃぁよろしく頼むぜ!!」

 僕がザックさんの依頼を快諾すると、ザックさんは僕の背中をバンバン叩いて笑いながら、他の冒険者さんのところへ向かっていった。


「シン!俺はお前に負けないからなっ!!ツァイスの兄貴みたいに!栄光の階段みたいに活躍するんだっ!!」

 なんかフラフラになりながらケイン君が僕の目の前にやってきて、指をビシッと突き付けて宣言する。僕は別に勝った負けたはどうでもいいんだけど……


「やめなさい、馬鹿ケイン」

「ケインはあっちの隅っこで壁に向かって喋ってればいい」

 慌ててエリーさんとココットさんがやってきて、ケイン君の首根っこをつかんでズルズルと引っ張っていく。


「負けないからなっ!!」

 ズルズル引っ張られながらも、僕への指差しは止めないところを見ると、かなり強い意志なんだろう。まぁ関係ないけど。


「あのフ○コロガシは、御主人様(マスター)より小者感が酷いのです」

「それって、僕の事を小者って言っているよね……?」

「そういうところを気にするのが小者なのです。大物はそんなこと言われても気にも留めないのです」

「いや、そうかもしれないけどさ……」

 ポメの相変わらずの毒舌を聞きながら、宴会は更けていくのだった。



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