第090話(魔法講義?!)
「魔法を扱うには6つの工程が必要なの。魔素蓄積、魔素抽出、魔素変換、魔法起動、魔法制御、魔法実行の6つよ。先天的にこれらの工程を行うスキルがないと、魔法の発動は出来ないの。だからこの世界には魔導士が少ないのよ」
ここいら辺の知識はポメから学んでいたことと相違ない。僕は復習のつもりでクーフェさんの話を聞く。隣りにいるオリバー君は目を輝かせながら聞いている。
「魔素蓄積。これはこの世界に満ちている魔粒子を魔素として身体の中にあるという魔導器に貯めておくスキル。全ての人が持っているんだけど、器の大小は人によると言われているわ。魔物にはこの器官が魔晶石という形で備わっているのだけど、亜人種には魔晶石が見当たらない。何処か別の器官で貯めているみたいなんだけど謎とされているわ。しかも見えないから大小を計ることが出来ないの」
ポメによると物理体ではなくて精神体の方に持っているそうだ。所謂魂の方だ。昔の人はその魂の領域にまで手を出していたらしい。
「次に魔素抽出。これは魔導器に貯めてある魔素を抽出するスキル。これも大半の人が持っているんだけど、線が細かったり太かったりするわ。この線の太さにより魔素の出力が左右されて、その出力が強さに直結する。冒険者ギルドの魔素量の判定はこの線の太さと、魔導器に蓄積された魔素量の減少量を魔道具で計っているわ」
「触れると色が変わる水晶球のやつですね」
ポメが僕の魔素を大量に吸い込み、大本の魔素量を減少させて誤認させたのは、魔導器の大きさなのだろう。魔導器にほとんど魔素が残っていなければ、正確な線の太さは計れないだろうからね。
「魔素抽出した後は、魔素変換。このスキルが無いと魔法が使えないわ。このスキルの有無が魔導士になれるかどうかの大きな分かれ目なの。魔素抽出した魔素を魔導回路に通して、それぞれの属性に応じた魔力へと変換するスキル。スキルと言うより魔導回路の有無が大事だわ。オリバー君は、樹鉱属性の魔導回路が備わっていたので、魔導士になる第一関門を突破したってことね」
オリバー君がうんうん頷きながら、クーフェさんの話に聞き入っている。僕はというと、この魔導回路が6種全部あるから全属性の魔法が使えちゃうんだよね。
「魔素変換で属性に応じた魔力になれば、後は魔法起動で魔法を発現させ、魔法制御で規模・形状・範囲・発生場所なんかを特定し、魔法実行で実際に発動させる。これらは明確な動作を指定する為に専門の呪文があるわ。オリバー君は樹鉱属性だから、この小石を標的に向かって飛ばす石礫弾ね。やり方はさっきの水晶の棒に魔力を送ったような感じで樹鉱属性の魔力を引き出してみて」
一気に最後まで説明をしたクーフェさんがオリバー君を促す。オリバー君は頷くと、両手を前に出して目を閉じて念じる。
するとオリバー君の突き出した両手の前に茶色の魔法陣が現れる。
「いいわよ。魔法起動まで行っているわ。後は呪文ね。『石礫よ、かの標的を、射ろ。石礫弾』よ」
「『石礫よ、かの標的を、射ろ。石礫弾!!』」
オリバー君が呪文を唱えると、小石に淡く光が灯ると、ものすごい勢いで小石が射出され、魔封鉄鉱の標的に向かって飛んでいく。
ただ、魔封鉄鉱の標的の直前で光は失われ、コツンという音を立てて小石が魔封鉄鉱の鎧に弾かれる。
「で、できた!!」
その結果を目を見開いて見ていたオリバー君が感動の声を上げる。クーフェさんもにこやかな笑みを浮かべながら拍手をして、その結果を称える。
僕も同様に拍手をしてオリバー君の初魔法の健闘を称えてみる。
「ありがとう、クーフェさん!シン君も!」
本当に嬉しそうな顔でお礼を言ってくるオリバー君。よっぽど嬉しかったのだろう。
「じゃぁ次はシン君ね。同じ魔法でいいかしら?」
「あ、はい」
「あれは魔封鉄鉱だから思いっきりやっちゃって」
そうクーフェさんに促される。僕は流石に最大火力はまずかろうと、少しセーブした魔法を撃つつもりだ。ポメがいればどの程度に押さえればいいかわかったんだけどなぁ。
配分は石の形状の変化と、射出速度の向上くらいかな。石の素材を変えちゃうと後が面倒になりそうだし、急に小石を生成しても訝しがられるだろうからね。
僕はいつものように魔素を取り出し、樹鉱属性の魔導回路に流し込む。そして突き出した手の平にそれらを放出する。
ヴォンッ!!
オリバー君の魔法陣は直径20cm程度だったのだが、僕の魔法陣は直径10m。目の前の全てが魔法陣で埋め尽くされるくらいだ。
「えっと、『石礫よ、かの標的を、射ろ。石礫弾?』」
キュンッ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴァァァァァッッッ!!!!
ドゴゴゴゴゴゴゴ、ドガッシャァァァッッッ!!!
一瞬空を切り裂く音がしたかと思うと、とてつもない音と風の衝撃が発生し、オリバー君とクーフェさんを吹き飛ばす。そして、大きな音を立てて崩れていく訓練場の壁。
一瞬で視界から消えた小石が魔封鉄鉱の標的の鎧を貫き、壁を貫通。そして音速の何倍をも超えた速さで打ち出された事により発生する音波衝撃波。音波衝撃波が物理的な威力を持ってオリバー君とクーフェさんを吹き飛ばしたのだ。
「あ、は、はははははは……」
崩壊した訓練場を目の前にして、僕は乾いた笑い声を上げるのだった。




