第087話(魔素判定?!)
今日の朝は素材も切れてきたので、一角兎の肉の残りを焼きつつ軽くデミグラスソースで味付けしたものとサラダとパンだ。
そろそろ他の調味料がないと料理のレパートリーが厳しい。血抜きした肉も、もう残り少なくなってきているので、狩りに行きたい所だ。
「すみません。そろそろ一角兎の肉が切れてしまいそうなので、切れたらちょっと変わった食事になるかもしれませんが良いですか?」
相変わらず絶賛してくれながら朝食を取っているキリクさんとクーフェさんに確認する。
「作ってもらっているだけでも、相当助かっているから文句なんかないぜ?」
「うんうん。しかも材料はほとんど持ち込みで、お店でも出ない料理を食べさせてもらっているのよ。逆にお金を払わなければ申し訳ないくらい」
「いえいえ、こんな身元が怪しい僕達を泊めてくれているだけで大感謝してます」
「これで、おっぱいオバケがいなければなお良かったのです」
僕の提案を聞いてくれる二人。これで在庫で余りまくっているアーグ大樹海の素材が使えそうだ。
「ポメちゃぁぁぁん?なにか言ったかしら?」
「ひぇぇぇぇぇぇ。な、何も言ってないのです!空耳なのです!」
そして余計なことを言うポメにクーフェさんの冷たい視線が突き刺さる。
「ガクガクブルブルするなら、余計なことを言わなきゃ良いのに……」
クーフェさんに睨まれて膝をガクガクさせているポメを見ながらボソッと呟く。
そんな朝の忙しく平時のような一幕を過ごしつつ朝食を終えると、いつものようにキリクさんとクーフェさんが出かけていく。
少ししてから僕たちも初心者講習を受けるために家を出る。明日の晩御飯は今までの感謝を伝えるためにも、豪華なものにしよう。となると市場で材料も買い集めないとなぁ、と考えながら冒険者ギルドへ向かう。
いつものように冒険者ギルドへ入り講義室へ向かう。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよー」
「……おはよう」
「……おう」
僕が部屋に入って挨拶をすると、エリーさん、オリバー君、ココットさんが挨拶を返してくれる。そして頬杖つきながら、ぶっきら棒に返事を返してきたのはケイン君だ。
昨日の一件で冒険者になることを諦めたり、復帰するまでには時間がかかってしまうかもと思っていたが、問題なく来れたみたいだ。でもいつもの破天荒な元気さは影を潜めてしまっている。
ちょっと驚いた顔でケイン君を見てしまった僕とエリーさんの視線が合うと、エリーさんは今はちょっと見守っていてねと言わんばかりの優しげな視線をケイン君に向けるジェスチャーをする。
僕も言葉に出さずに頷き、自分の冒険者ガイドブックに視線を戻して、ペラペラとページを捲る。
しばらくするとクーフェさんと昨日の引率をした冒険者が講義室に入ってくる。
「はい、皆さん。おはようございます」
「「「「「おはようございます」」」」」なのです」
クーフェさんの挨拶に皆が挨拶を返す。そしてクーフェさんが講義室にいるメンバーの中にケイン君を見つけると、少し安堵したような表情を浮かべる。
「さて今日はいよいよ戦闘実技になります。実技と言っても期間は2日間しかないので、皆さんの能力を見てから、伸ばす方向を見定めて、その能力を伸ばす切っ掛けとなる基礎を教えることしか出来ません。なので、この講習で自らの能力を知り、今後冒険者になるためにどう伸ばしていくのかという指針になればと思っています」
クーフェさんはそう言うと、見たことのある水晶球を取り出す。
「魔素判定の水晶球!」
「はい、そうです」
エリーさんが興奮気味に身を乗り出しながら言うと、クーフェさんが優しげな笑みを浮かべながら肯定する。
「冒険者になる時に魔素を判定するという魔道具ですね。あれに触れると自分の扱える魔素の量がわかるという」
「……魔素の大小は冒険者で大成できるかどうかにかかっているから必須。大事」
オリバー君やココットさんも目をキラキラさせながら魔道具を見つめている。
「シン君達は冒険者証を発行した時にもうやっているから、今回は無しで。じゃぁケイン君から」
クーフェさんはそう促すが、ケイン君は頬杖をついてそっぽを向いたまま反応しない。いつものケイン君だったら大興奮して我先にと行きそうなんだけど。
「あ、あの私からでいいですか?」
そんなケイン君の反応を見てエリーさんが手を上げて順番変更を願い出る。
「構わないわ」
クーフェさんが快諾するとエリーさんは席を立ち教壇の前に行くと、少し緊張しながら水晶球に手をかざす。
すると水晶球は柔らかい光を発しながらやや緑がかった水色になる。
「エリーさんはE~Dランクの魔素を持っているようね。冒険者としては問題ないレベルよ」
「はぁ……良かった」
クーフェさんの言葉を聞いて、胸を撫で下ろしながら安心するエリーさん。
「次は誰かしら?」
「じゃぁ、僕が」
続いてオリバー君が水晶球に触れるとエリーさんより濃い緑色になる。
「オリバー君はDランクの魔素量ね。魔導回路が備わっていれば魔導士になれる可能性があるわ」
「魔導士?!」
「えぇ、でも魔導回路を持っている人は稀だから、期待しすぎないでね」
「は、はいっ!」
「……次」
ココットさんがボソッと呟くと水晶球に手を触れる。水晶球は柔らかい光で綺麗な水色に染まる。
「ココットさんはEランクの魔素量ね。一応冒険者としてはやっていける量よ」
「……残念」
ココットさんは少し口を尖らせながら残念そうに呟く。
「ほら、ケインもやりなさいよ」
エリーさんがそう言ってケイン君の腕を引っ張って連れて行く。ケイン君は少しの抵抗を見せるが、本気では抵抗していない所を見ると興味はあるのだが、昨日の失敗の手前、大人しくしているだけだろう。
そしてケイン君が水晶球に手を触れると、水晶球はやや強い光を発っして、水色から緑色へと色彩を変える。そして光が弱まっていき黄緑色で安定する。
「ケイン君、凄いじゃない!魔素量はCランクよ!一流の冒険者になれる可能性を秘めているわ」
クーフェさんが驚いた顔をしながらケイン君を絶賛する。
「おぉぉぉぉぉっ!!俺はやるぜぇぇぇぇ!!!」
その評価を聞いたケイン君は、今までの大人しさはどこへやら、右手を突き上げて咆哮するのだった。




