第084話(野外採取?!)
僕達が南門に行くと、当たり前のようにキリクさんが門の前で、アーグ大樹海の方を見ながら門番の業務を遂行していた。
クーフェさんと僕に気がつくと、視線を向けて軽く槍の穂先を振って挨拶してくる。僕もペコリと頭を下げて挨拶し、門を潜って南の草原に出る。
つい先日、ここで薬草を採取しながら、一角兎や走り蜥蜴、毒蛇などを狩ったなぁ。それから折角だからといって料理してみたら、予想外の方向に流れてしまったんだよな。
「昨日説明した通り、ヘアル草を一人一本取ってきてもらうわ。ちなみにこの門が見えなくなる距離まで行くのはNGよ」
となると見通りの良い草原だし、門もそれなりの高さがあるから400~500m位の距離の間で探せということか。確かにそのくらいの距離でも、まばらにヘアル草は生えていたはずだから、きちんと丁寧に探せば大丈夫だろう。
「走り蜥蜴は大きく草を揺らすし、基本的には人を襲わないから安全。一角兎も基本的にはすぐに逃げ出すから、変なことをしなければ攻撃してこないわ。但し、毒蛇は場合によっては人に襲いかかってくるし、あまり草も揺らさないから気をつけなさい」
うん。確かに毒蛇の接近はわかりにくい。人間より遥かに聴覚が敏感な一角兎に気付かれずに接近し、その毒牙で行動不能に持ち込み餌にしてしまうからだ。でも人間サイズだと丸呑みできないし、毒の効きも悪いから、あまり襲ってこないはずだ。
とはいえ、空腹だったり、虫の居所が悪かったりすると襲ってくるから注意が必要だ。しかしながら、そうして気が立っている時は、しっぽを揺らしてカラカラと音を立てたりするし、地面を擦るような音をさせて接近してくるので、まだわかりやすくなっている。
「よっしゃぁぁぁ!行っくぜぇぇっっ!!俺が一番乗りだぁぁぁぁぁ!!」
そう気合の籠もった大声を上げてケイン君が駆け出す。
「ちょ、ちょっと!ケイン待ちなさい!!」
「ま、待ってよぉぉぉ」
「……バカ」
飛び出すケイン君を静止しようと一緒に飛び出すエリーさんとオリバー君。そして冷めた目でケインの後ろ姿を見るココットさん。やれやれと一つため息をつくと、面倒くさそうに3人の後を追い始める。
「こらっ!待て、お前ら!!」
そして慌てて、4人の後を追う引率の冒険者さん。その様子を見ていたもう一人の冒険者とクーフェさんが僕達の方を見る。
「クゥーン……?」
「ピィ?」
そんな様子を心配するかのように、か細い鳴き声を上げるファングとビーク。
「はぁ……僕達は平気ですから」
クーフェさんと冒険者さん、そしてファングとビークに視線を送り、もう一度クーフェさんと冒険者さんに目を戻すと僕は安心させるように言う。
「全探索」
小声でいつもの便利な魔法を起動する。今回はケイン君たちの動向もチェックする必要があるので人族もマーカーに入れて発動する。
3つの塊が移動して、少し遅れて一つ。それをかなりの速さで追うのが一つあるな。でと周辺に危険な敵対生物は皆無……と。まぁしばらくは大丈夫そうだ。
「じゃぁ僕達も課題をこなしてきます。安全第一で行きますし、既に先日薬草採取のクエストはこなしていますので、僕達の方にはお気遣いせずに、ケイン君たちの方をフォローしてあげてください」
「そ、そうね……あはははは」
「風狼と火燕を使役しているんだから万が一もないな……悪いがそうさせてもらう」
僕がそう言うと、額から汗を出しながら引きつった顔をするクーフェさんと、ファングとビークを一瞥して頷く冒険者さんが意見に同意する。
「どうぞ、どうぞ。僕はこの辺でよろしくやっているので」
後を追おうとするクーフェさんと冒険者さんに声を送ると、僕は全探索で探索したヘアル草の群生地に足を向ける。ちょっと西に行けば、丁度いい群生地がありそうだ。それに一角兎も適度にいそうなので、ちょっと狩っておきたい。そんな事をするなら監視がいない方が都合がいいよね。
そうして僕は全探索でケイン君たちの動向を確認しながら、みんなと一緒にヘアル草の群生地に向かう。
「ファング、ビーク、やってきていいよ。但し、あまり大きな傷はつけないでね」
僕が採取する間、暇になるだろうからファングとビークを開放する。近場に一角兎と毒蛇がいるのはわかっていて、二匹ならすぐに狩ってくるだろう。
ワォンッ!
ピピィッ!
ずっと町中で我慢の生活だったので、二匹は嬉しそうに一声上げると、飛び立ち駆け出す。その様子を見たらやりすぎてしまうんじゃないかなぁと一抹の不安を覚えるけど、まぁそれは仕方ないよね。
僕はヘアル草の群生地にしゃがみ込むと丁寧に根本だけ残して摘み取る。ヘアル草は基本的に受粉し実をつけて、種になって地面に落ち、そこから発芽する植物だが、根を残して根本から丁寧に摘み取ると、シーズンが終わるまでは、根本からまた目を出して生えてくるので、根から引っこ抜くのは愚策なのだ。
「銅貨が一枚、銅貨が二枚……」
隣でポメも同じように、へアル草をお金に換算しながらへアル草を摘んでくれている。あまり大した収入にはならないかもだけど、へアル草があれば回復薬を作れるからね。回復薬は何かあった時のために、いくらあってもいい商品だから。
僕達は順調に採取と狩りをしていたのだが、ケイン君たちのほうがちょっときな臭くなってきたようだ。彼らの向かっている先に大型の百舌鳥の巣があるのだ。巣を刺激してしまったとしたら、大型の百舌鳥が襲ってくるだろうなぁ。




