第081話(超絶記憶?!)
「シン!今日こそ勝負だ!!」
講義室に入るなりケイン君が僕を指差しながら言い放ってくる。朝からテンションの高いことで、一体何の勝負をするのだろうか?
「えーっと、とりあえず勉強の勝負でいいかな?」
「え、いや、その、それは、アレじゃないか!」
僕がニッコリと切り返すと、目をキョロキョロさせて慌てふためきながら、周りに助けを求める。だけど周りも面倒くさそうに目を合わせない。
「お、お前の得意分野での勝負なんてズルいぞ!!」
そして再び、僕をビシっと指差しながら、相当傲慢な意見をぶつけてくる。
「いやいやいや、勝負をふっかけてきたのはケイン君だよね?こちらが勝負の方法を決めるのが筋じゃないかなぁ?」
「流石は御主人様。相手の苦手とする分野で勝負をかけて、狡辛く勝とうとするその姿勢!小心者過ぎて驚嘆に値するのです!」
何故かポメは僕の敵に回るらしい。僕ってそんなに狡辛いかなぁ……
「んぎぎぎぎぎ!勝負の方法は後で決めるから、とにかく俺と勝負しろ!!」
ケイン君は歯ぎしりしながらそう宣言すると、自分の席に座り込む。僕も唖然とした顔で呆けてしまったが、気を取り直して席に座ると、冒険者ガイドブックを開く。
昨日は国の興りや周辺の村や町、地形の説明を行った後、採取クエストにおける薬草などの見分け方の講習だったから、今日はこの辺りかなと予想しながら、内容を確認する。
「今日は、きちんと時間通りにみんな揃っているようね」
クーフェさんが扉を開けて、講義室の中をざっと確認しながら入ってくる。今日も色々な資料を持ってきているようだ。
「みなさん、おはようございます」
「「「「「おはようございます」」」」」
「はい。皆さん元気なようですね。きちんと冒険者ガイドブックは持ってきていますか?」
クーフェさんはそう言うと、みんなの手元を確認する。ケイン君たち4人はガイドブックを見せつけるように持ち上げて確認してもらう。
僕も同様にガイドブックを見せると、クーフェさんはにっこり笑顔を浮かべながら確認する。そして隣のポメで視線が止まる。
「あれ?ポメちゃん、ガイドブックはどうしたの?」
「ガイドブック?それなら全てインプットしたので仕舞ったのです」
「インプット?」
「こう言えばわかるのです?全て覚えたので持ってきませんでした」
冒険者ガイドブックは相当な情報量があり、それを全部記憶するとなると、かなり大変なので、1日やそこらで暗記できるものではない。
でも、ポメはアンドロイドだからなぁ……
「……36ページの内容は?」
「ウルス周辺の野獣の情報なのです。主に東側の情報で、生息している野獣は南側とあまり変わらないのですが、灌木地帯や林、丘陵が点々としていることもあり、牙大猪や茶色熊が出没することに注意が必要なのです」
「……122ページは?」
「その周辺は毒草や毒キノコの図付きの解説付録になるのです。122Pはポペロマニュペチュコ茸の説明で、見た感じ食用キノコのポペロマニュパチュマ茸と似ているのですが、傘の裏側が薄っすらと紫色をしていて、摂取すると強い幻覚作用が発生するのです」
「……完全に合っているわ。ポメちゃんはすごいのね」
ちょっと険悪な雰囲気になったクーフェさんが質問をするが、ポメは澄ました顔でスラスラと回答する。その回答が間違いないことがわかると、クーフェさんは雰囲気を和らげポメを褒める。
「当たり前なのです!ポメは超優秀な美少女アンドロイドなのです!御主人様もポメの性能に恐れ慄きながら失禁しつつ崇めるとよいのです!」
「しないしない。特に失禁はしない」
「ちっ」
ポメがいつものように胸を張りながら失礼なことを言ってくる。
「はいはい。それでは今日はさっきポメちゃんが回答したように、30ページからのウルス周辺の野獣についての講義を始めます」
クーフェさんがそう言うと、僕達はパラパラと30ページを開く。そこには見開きでウルス周辺の地図が描いてあった。
「はい。そのページにはウルス周辺の全体図。川や林、丘陵、休憩できる小屋などが記してあります。そして次のページの見開きにはウルス西側をピックアップした情報が載っていて、よく採取できる素材や野獣などが記されています。そして33ページは南側、35ページは東側、37ページは北側になります。ウルスに暮らす冒険者として、この情報は当然頭に入れて置かなければならない情報ですので、書ききれていない情報と一緒に、時間をとって説明します」
そしてクーフェさんが周辺の詳しい説明を始める。僕が今後生活していく為にも必須の知識となるので、僕は食い入るように講義を受けるのだった。
ちなみにケイン君は途中で撃沈していた。




