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第008話(無為転生?!)

「まずはセオリー通りに。とはいえ異世界転生は様々なパターンがあるからな。まずゲームに取り込まれたパターンだと『ステータスオープン』!」

 俺は声高に叫んでみるが、何の反応もない。


「『ステータスウィンドウ』!『オープンステータス』!『パラメータオープン』!『オープンメニュー』!」

 何種類かの考えられるパターンで叫んでみるが、同じく何の反応もない。


「という事はゲームへの転生ではなく、別世界への転生か。この部屋に使われているものに馴染みがないから、地球ってことはないだろうし、この装置や部屋を見ると文明レベルは高そうだ。っていうか文字が普通に読めるのは助かる」

 俺はベッドのような機械を眺めて、ソコらへんに書いている記号らしきものを眺めると、アルファベットと同一の記号っぽく感じる。


「あと異世界転生のセオリーって言うと魔法だよな、やっぱ。『ライト』!」

 頭の中で光の玉をイメージして叫んでみる。


「『ライト』!『ライト』!『ライト』!『ライト』!『ライト』!」

 何度か叫んでみるが、うんともすんとも言わない。


「……ちっダメか。後は凄い肉体能力とかだよな」

 ベッドの上で見様見真似で空手の型をなぞってみる。


「フンッ!フンッ!ヘヤァッ!!…………ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 最後に後ろ回し蹴りを格好良く決めようとしたら、バランスを崩して倒れてしまい、ベッドの縁に頭をぶつけて、絶叫を上げながらベッドの上を転がる。


「はぁはぁはぁ……身体は貧弱、魔法も持っていない、幸い転生前の知識だけは残っている。コレは現代知識で勝てっていうパターンか。例えば銃とか作ったりして!まぁ、銃の知識なんて無いからダメなんだけど……俺の得意な知識なんてプログラミングくらいだぞ。パソコンがなければ何の役にも立たない知識じゃないか」

 ベッドの上でorzと項垂れる俺。


「とりあえず、情報と水と食料を確保しないと生きていけないな」

 しばらく項垂れていたが、このままだと何も進展しないと、前向きな結論を出す。そう決めた俺はベッドのような装置から飛び降りると、他の装置に誰かいないか見て回る。


「ふむふむ……とりあえず周辺の装置は空か。蓋も空いてないし使っていないように見えるな」

 身近なところから見て回るが、全ての装置が空だ。誰か入っていれば無理やり起動して話を聞こうと思っていたんだが。まぁそれはそれで、かなりのリスクがありそうだけど。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

 何個目かの装置を見た時に、俺は絶叫を上げて飛び退く。


 全く装置の中が空だから、ふんふん言いながら気楽に見回っていたのだが、今の装置の中には人らしきものが入っていた。

 既に干からびてミイラのようになっていた子供の死体が……そして、その周辺の装置を確認して、沢山の子供の死体が入っていたのを発見するのだった。


「こりゃダメだな……」

 かなり広い部屋のほんの一部分を見ただけだが、俺はなんとなく、ここには生きている人がいないような絶望に囚われていた。

 全てを見て回るのは、この身体では何日かかるかわかったものではないし、それに一縷の望みを掛けて餓死するのもバカバカしい。せっかく転生して手に入れた命だし、有効に使いたいものだ。


 俺はこの部屋で生きている人を探すのを諦めて、部屋を出る。部屋を出ると、大人4人位が並んで歩けるような通路が左右に伸びていた。幸い電源は生きているようで、通路は明るい。通路には窓一つなく、ここがどういう場所でどういう状況なのかを判断することは、まだ出来ないようだ。


「とりあえず、水と食料を……」

 100cmにも満たない身長と短い手足で、頑張って歩いていく。右手方向に歩いているのだが、右側にしか扉がない。すなわち俺が目を覚ました大きな部屋をぐるっと取り囲むような通路なのだろう。右の扉に入っても、その部屋に戻るだけだ。


 しばらく歩いていくと左手方向に扉らしきものがあるのが見える。近づいてみると、扉の上のプレートには『Caretaker Preparation Room』と刻まれていた。


「Care?お世話?Preparationって何だ?」

 俺は首を傾げながら、その扉に触れる。すると扉が左右にスライドし、部屋の中の明かりがつく。俺は恐る恐る部屋の中に入ってみると、俺が入っていたベッドらしき装置のような銀色の装置が縦になって沢山並んでいる部屋だった。相変わらず、見た感じ中には何も入っていないが。


 手を頭の後ろで組んで、左右をキョロキョロと確認しながら、何か無いものかと奥へと進む。装置が並んでいる通路がいくつかあって、それらを全部確認したのだが、残念ながら、それら全て中身は入っていなかった。


「外れかぁ。まいったな」

 俺はそうボヤいて部屋を出ようと振り返った時に、目の端で違和感を覚えた。


「ん?あそこ、おかしいぞ」

 最奥の壁の一部の床から20cmくらいの所が、少し引っ込んでいて、その内部から微かに光が漏れているように見える。俺の今の身長ぐらい低くなければ見落としそうな感じだ。俺はソコに近づくと引っ込んでいる壁を押し込んでみる。


ガコンッ!


 ちょっと大きな音がしたので、俺はびっくりして飛び退る。俺の目の前の継ぎ目のなかった壁に、急に縦線が入り、その壁が後ろに引っ込んだかと思うと横にスライドして、もう一つの部屋が現れる。


 恐る恐るその部屋に入ってみると、先程の装置と形は同じだが、色が金色の一台の装置が斜めに立てられて設置されていた。そしてその装置の中には、淡い水色の髪と、整った顔をした幼女?が胸の前で手を組んで眠っていたのだった。


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