第078話(野菜肉巻?!)
「駄目、良し、良し、駄目ね」
意気込んでクーフェさんに持っていったケイン君達だが、半分は駄目だったらしい。
「シン君には何故駄目なのかわかるかしら?」
クーフェさんはそう言うと、まだへアル草を探しに行かないで様子を見ていた僕に話しかけてくる。
「はぁ、ちょっと見せてもらっても良いですか?」
「俺の取ってきたこれのどこが駄目なんだっ!」
ケイン君が自分が見つけてきた草を突き出してくる。
「これ、多少は似てるけど、一目見てわかるくらい全く違うものです」
「何だと?これのどこが違うっていうんだ!」
ケイン君は鼻息荒く、冒険者ガイドブックのヘアル草のページを開いて突き出しながら言ってくる。
「まず葉の形。ヘアル草はどちらかといえば細長い形で、葉のフチのギザギザが細かいのが特徴なんだけど、それは幅広の葉でギザギザが荒く大きい。次に色だけど、ヘアル草の色は鮮やかな明るい緑色だけど、これはやや深みのある緑。更に香りだけど、へアル草は清涼感のある香りがするんだけど、これはちょっとツンっとした香りがする。という事でケイン君が持ってきたのはピリの葉だね」
「シン君、正解です」
僕が違いを説明し、クーフェさんからお墨付きをもらうと、ケイン君はプルプルと身体を震わせ始める。
「うわぁぁぁぁんっっ!!シンのバカヤローっっ!!」
僕に向かってピリの葉を投げつけると、走って地下室から出ていってしまう。まったく子供のような態度だなぁ、子供を卒業ということで冒険者講習受けに来たんだろうに……
「じゃぁ……コレ」
次に駄目出しをされたココットさんが僕の前に、ずずいっと葉っぱを突き出してくる。
「あぁ、これか。これはちょっと難しんだけど、葉っぱを裏返してもらえるかな?」
僕がそう言うとココットさんが葉っぱを裏返す。すると、葉の裏に小さな黄色い液胞がいくつも点いているのが見て取れる。
「あ……」
「うん。この黄色い液胞は毒で潰すと皮膚が荒れてしまうんだ。さらに口から摂取すると内臓が荒れてダメージを受けてしまう。なのに回復効果のあるへアル草と似ているから気をつける必要があるんだ」
「シン君、それも正解です。このように覚えていなければ正確な採集ができませんし、覚えていても中途半端な覚え方では、逆に危険に繋がることもあります。なので冒険者はきちんとした知識を身に付ける必要があるのです」
説明するクーフェさんに頷きながら草花の山にへアル草を取りに行こうとした僕は、クーフェさんに止められる。さっきの駄目な草を見抜いたことから、合格になったらしい。
今日の講習は薬草の見分け方で終了らしく、僕達は解散することになった。ちなみにケイン君は地下室に降りる階段の前で待っていた。バツが悪くて戻るに戻れなかったらしい。
「シン君。またねー」
「また明日」
「ん」
「……ふんっ」
ギルド前でエリーさん、オリバー君、ココットさん、ケイン君を見送ってから、僕も家路につく。明日も朝から兎の一角亭に行かなくてはならないので、今日は早めに休みたい。
「夕飯の材料を買いに市場に寄って行こうか」
「はいなのです」
「ワゥッ!」
「ピィッ!」
僕が声をかけると皆が返事をする。
「ポメまだ一角兎の肉は残っていたよね?」
「うーん。残り1羽くらいしか残ってないのです」
「じゃぁ、また狩りに行かないとね」
「じゃぁ今日は野菜多めの料理にしてみようかな」
僕は料理を考えながら市場で野菜を買い込んで、クーフェさんの家に戻る。やはり市場は朝のほうが活気があるみたいで、夕方には露店も品揃えも若干減っていた。その代わり屋台が出ていて、肉の焼けるいい匂いが市場に漂っていた。
ファングとビークが我慢できなさそうだったので、肉串を4本買って皆で間食もしてみたりした。
クーフェさんの家に戻ると、すぐに厨房で用意を始める。大きな鍋に水を入れて、買ってきた野菜を茹であげる。
そして一角兎の塊肉を薄くスライスしていく。スライスした肉の両面を軽く焼いた後、茹でた野菜を肉で巻いて、串を指して留めていく。中の野菜を変えながら4つ位の野菜巻き肉を串に刺すと、串に刺したまま再度焼いていく。
最初の両面焼きは生肉の表面を焼くことで殺菌し、2度目は野菜を巻いたまま焼く事で肉の旨味を野菜に染み込ませるためだ。
巻き込んだ野菜はポタトの球根とアスパラ茎、ピリの葉、エリン茸、セサミの葉などだ。それぞれ食感と香りに違いを持たせて楽しんで味わえるようにしてみた。
家の中に肉と野菜の焼けた、なんとも食欲のそそる香りが充満した頃、クーフェさんとキリクさんが帰宅してくる。
そしていつものように匂いで料理が気になるらしく、僕の手元を覗き込みながらウンウン頷くと、汗を流したり部屋着に着替えたりしに行く。
「地の女神イシュター様、今日も大地の恵みをありがとうございます」
食卓についたクーフェさんとキリクさんが手を胸の前で組みながら、目を閉じて地の女神イシュター様に祈りを捧げると僕の料理を食べ始めるのだった。




