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第076話(興国講習?!)

「じゃぁ、まずこの国、アルクベルト王国について説明するわ」

 クーフェさんが、冒険者ガイドを開くように指示するので、僕はそれに従い開く。指示されたページを開くと、楕円形に近い形の大陸が描かれており、その大陸が線引をされて6つのブロックに分かれている。


「この地図に載っている大陸はオーディナル大陸と言って、私達が生活しているのはこの中の一つの国、アルクベルト王国よ」

 アルクベルト王国は地図の中央やや東に位置する国だ。縦に細長い国のようだ。


「そしてこの樹海の町ウルクは、アルクベルト王国の中央から南東にある町ね」

 地図にはウルクの名前は載っていなかったが、アルクベルト王国の東側に大きな山脈が描かれていたから、その麓あたりになるのだろう。


「そしてアルクベルト王国と隣接している国は、西にファーレン聖王国、北にノルトランド海洋国、東にシュレーズ共和国となっていて、幸い今の所、それぞれの国と争うことはないけど、ノルトランド海洋国とシュレーズ共和国が争うのに巻き込まれる形で、アルクベルト王国北部がその影響を受けてしまっているわ」

 話を聞く限り、ウルク周辺は安心そうだ。


「ウルクの南には未踏エリアのアーグ大樹海、東には踏破の難しいインバース山脈があり、北と西は自国領だから、基本的に他国との争いには巻き込まれないから安心な地域ね」

 クーフェさんがウィンクをしながら説明を続ける。


「といっても、アーグ大樹海やインバース山脈に生息する野獣や魔物は相当に強いから、安心はできないわ。戦争に巻き込まれにくいというだけで、安全だというわけじゃないので気をつける必要はあるの。特に中堅冒険者に向いた狩場が少ないので、中堅冒険者が育ちにくい欠点があるの。無理して依頼を受けて亡くなってしまったり、逆にチャレンジできずに初級冒険者で止まってしまうといった事が多く発生してるわ」

 確かに草原に出てきた野獣は、初級冒険者が狩れるレベルだけど、アーグ大樹海に入ったら、超高レベルの冒険者しか対応できなくなる感じだ。その間の狩場は僕はまだ知らない。


「なので、基本は草原でコツコツ狩りをしながらレベルやランクを上げて、確実に一歩一歩進んでいく必要があるの。初心者講習もそういった慎重に進める冒険者となってもらう為の講習になってるわ」

「コツコツぅー?俺は手っ取り早く活躍したいんだけど!」

 ケインが頭の後ろで手を組みながら面倒くさそうに言う。


「無理は禁物。無謀な冒険者はすぐ死ぬ」

 そんなケインにココットが冷たく端的な言葉を投げかける。


「大丈夫だって、俺くらい強ければよゆー、よゆーだってばよ」

「そう言って最初の依頼で命を落とすのはアンタのようなヤツね」

「あぁ?!」

「や、やめようよ」

 更に楽観的に言うケインにエリーも厳しい言葉を投げかける。それが気に食わないケインが後ろの席のエリーを睨みつけると、慌ててオリバーが止めにかかる。


「ま、そういう大言壮語は実戦を一度でも体験してから言ってみて欲しいわね。シン君のように」

「ちょ、クーフェさん。こっちに振らないでよ」

 真面目に聞いていた僕に、クーフェさんが振ってくる。しっかりとその挑発によりケインの怒気がこちらに向けられる。


「一度も戦いをしたことのないお子様と、御主人様(マスター)では、天とう○こ程の違いがあるのです。一度便器になってから己が身を鑑みると良いのです」

 当たり前のようにポメもケインを挑発する。なんでこう、みんあ僕に怒りの矛先が向くようにするのだろう?


「おい!シン!!俺様と勝負だ!!」

 ガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がったケインが、ビシっと僕を指差しながら言う。


「わかった。座学の試験で勝負な」

 とても面倒くさい事になりそうだったので、あっさりと勝負を受ける。ただしケインが最も苦手そうなもので。


「ぐぐぐぐ……」

 案の定、勉強は苦手だったようで、歯ぎしりしながら悔しがる。今は座学の時間なので、勝負するならテストで勝負するのは至極真っ当な話だ。


「納得したようなので、クーフェさん進めて下さい」

 僕がそういうと、うまく切り返したのが高評価だったのか、ニコリと微笑みを返して講義を続ける。


「そしてアルクベルト王国はゼノス=アルクベルトが興した国で、地図の通りオーディナル大陸の中央東寄りに位置するわ。国の興りなんだけど、ゼノス=アルクベルトが大規模な魔力災害にて突然変異した魔竜ヴィストゲルムを討伐し、その功績を持って王になったの。それまではラント、ベルデ、ハルツ、ザーレといった4つの国が群雄割拠して覇権を争っていたのだけど、魔竜ヴィストゲルムが国も何もかもを暴れに暴れて壊滅させてしまい、疲弊した国を無理やり譲渡させられたって訳。それに加えて魔竜討伐を行ったゼノスのパーティメンバーで後の王妃となる3人がそれぞれの国出身である事も譲渡された理由の一つね。現在はその4つの国は州として存続し、それぞれ聖王ゼノス=アルクベルトの血を引いた公爵が治めているわ」

「かっこいいなぁ、俺もいつかゼノス=アルクベルトみたいに竜殺し(ドラゴンスレイヤー)として名を馳せたいぜ!」

「バカね」

「アンタには無理よ」

「そうそう、地道にコツコツやろうよ。院の子供たちのためにさ」

「お、お前ら……」

 どうやら、熱くなっているのはケインだけらしく、他の3人はやけに現実的な考え方のようだ。というか普通の考え方だろう。無謀の先に待っているのは破滅だけだからね。


「次は、ウルクの町だけど……」

 こうしてクーフェさんにこの国のことやこの町の事を教えてもらい、僕のこれからの指針の参考にする為に全てを吸収し理解するのであった。


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