第072話(再度絶賛?!)
「あ、うん。見た目はともかく匂いは美味そうなんだが……」
「え、えぇ。見た目は泥水……というかアレっぽいわね」
二人はその見た目にボソッと呟く。
確かに僕が用意した一角兎のブラウンシチューだが、見た目はトロミのある黒に近い茶褐色で、見た目はドロドロとした泥水やアレを連想させる。
「これまで美味しいものを作ってきた御主人様が変なものを作るわけがないのです」
そんなに作っていないのだが、やけに自信満々なポメは、みんなに先駆けてブラウンシチューを木匙で掬うと口に運ぶ。
そして一瞬蕩けそうな表情を浮かべたかと思うと、眉をひそめて苦々しい表情を浮かべる。
「御主人様のくせに……チビクソ御主人様のくせに……生意気なのです!うわぁぁぁぁんっ!美味いのです!!チクショウなのです!!」
そして泣きちらしながら走って部屋に戻ってしまう。
ほ、褒めてくれたんだよね??僕達はその態度に唖然として、ポカーンとした間抜け面を浮かべてしまう。
「ま、まぁ、ポメちゃんが美味しいっていうんだから。私達も……」
クーフェさんがそういうと、シチューを木匙で掬い、恐る恐る口に運ぶ。そしてシチューを舌の上に載せた瞬間、驚愕の表情を浮かべる。
「あのステーキを食べて凄い驚いてたけど、これは更に美味しい!」
明るい表情になったクーフェさんが次々とシチューを掬って味わっていく。
それを見ていたキリクさんも、意を決してシチューを口に運ぶ。
「んっ?!な、何だこれ?!」
「でしょう?!味が、美味しさが深いっていうのかな?スゴく舌に残るの!!」
「あぁ、旨味がステーキの否じゃない。このシチューの一滴一滴に一角兎や野菜の旨みが凝縮されている」
「ベースは朝食べたスープなんだけど、更に甘味とコクが深くなっている気がする」
二人が顔を見合わせながら、口々に感想を言い合い、自分の感覚が間違っていないことを確認し合う。
「はい。カプタンの球根を炒めて最大限に甘みを引き出しました。コクの強さは炒めた小麦粉とリコピルの実によるものです。カプタンの球根も小麦粉もしっかり炒めないと、このコクや甘みが出ないんです。そのせいでシチューの色が茶褐色になってしまうんです」
僕が解説すると、二人は夢中でシチューをすすりながら、なるほどと頷く。
「この料理もパンとの相性はバッチリなのです」
目元を赤く晴らしながら、いつの間にか戻っきていたポメがコメントする。しかし昔のアンドロイドは無駄に高性能だなぁ。泣いた後まで表現するなんて……本当は人間なんじゃないだろうか?
ポメの言葉を聞いた二人は、パンを千切ってシチューに浸して口に放り込む。
「「……確かに」」
二人は声を揃えて呟く。
「これもメニューに加えて欲しいわよね」
「あぁ、見た目はアレだが、一度食べれば虜になること間違いナシだ」
そんな事を言い合っている二人の皿があっという間に空になっていた。
「お代わりありますけど、どうします?」
「「「お願いっ!」」なのです」
3人から同時に皿を差し出されて、僕は苦笑しながらクーフェさんとキリクさんの皿を受け取る。
「ポメは自分で宜しく」
席を外していたのにちゃっかり食べ終わっているポメ。口先を尖らしていたが、席を降りてトコトコと厨房に歩いていって、自分で取り分ける。
僕も二人分のを取り分けると再び、クーフェさん、キリクさんの前に差し出す。
「お肉もホロホロで食べやすいし美味しい」
「野菜もしっかり火が通っていて、更に旨味も染み込んでいて美味しく食べられるな」
二皿めもしっかり味を確かめながら食べてくれる。
「この料理は作るのに結構手間がかかるんです。出汁の抽出に1~2日かかりますから。ちゃんとした料理屋で事前に販売数を予測して用意しておかないといけないから少し難しい料理です」
「なるほど、こだわりの店で出す特別メニューのような感じか」
「ですね。しかも数量限定での」
「この味で数量限定だったら、無理してでも食べに行っちゃうわよ」
「廃棄の可能性も考慮すると、銀貨3枚位の価格になっちゃう気がします」
「おぉ、すると結構な価格になるな。特別な日だけしか食べられなさそうだ」
「……特別な日の特別メニュー。なんか凄い売れそうな気がするわ!」
「確かに……それは行けそうだな」
僕は店に出すのは難しいと言おうと思ったのに、逆に二人の気持ちに火をつけてしまったようだ。
「これが合いそうな店って言うと、アソコくらいか」
「えぇ、あの兎の一角亭ね。確かオックスさんの所に一角兎を仕入れに来るから、オックスさんに聞いてみるわ」
アワアワとしている僕抜きでどんどん話が進んでいく。
「シン君。この料理、後どれくらい残ってる?」
「えっと、3……4人分くらい」
「明日まで持つ?」
「う、うん。朝に一回火入れすれば大丈夫だと思うけど……」
「じゃぁ、ギルドマスターとオックスさんに試食してもらって、兎の一角亭を紹介してもらいましょう」
「あそこで食えるようになれば、俺たちも嬉しいしな」
「シン君。いいかな?」
すごい期待を込めた眼差しのクーフェさんとキリクさんに迫られて、僕が否と唱えられる訳もなく、頷くのだった。
また、大変なことになりそうだ……




