第059話(依頼達成?!)
「叡智の眼にすら載っていない、生成不能な未知の物質。血石を、まさかこんな方法で生成するなんて……御主人様はキ○ガイなのです!」
「そんなこと言われても。最高の硬度を誇るダイヤモンドだって炭を圧縮して作れるんだし、別段おかしい技術じゃないと思うんだけど……」
捲し立ててくるポメに、頬をポリポリかきながら答える僕。
「まぁまぁ、これで簡単に血抜きできる魔法が出来たから良いじゃないか。ちなみにこの血石って何に使うの?」
「血石は命の力の凝縮されている石なので、召喚魔法や治癒魔法の触媒として重宝されているのです。ポメの時代では採掘量はそこそこで、見つかるときは大きな塊なので、それなりに流通していましたが、需要も高かったので、そこそこの値段がしてましたのです」
「なるほど、色的には不気味なんだけどなぁ」
一角兎の血石をつまみ上げて、陽に透かしながら言う。
「この世界で使われているかどうかは、おっぱいオバケにでも聞いてみるが良いのです」
「おっぱいお化けって……そんなにクーフェさんのことが嫌い?」
「巨乳は女性の敵なのです!」
僕は物騒な事を言うポメを宥めていると、敵対反応をキャッチする。
「みんな!何か来る!」
僕が敵対反応があった方に目を向けると、地面がボコッと盛り上がる。そしてその穴から弾丸のように生物が飛び出してくる。それは体調80cmはある大型のモグラで、鋭い牙と硬い地面も削り取れる強力な爪を持つ野獣だった。
「よし雑食モグラだ!」
飛び出してきた雑食モグラで、これがE級討伐依頼の野獣だ。城壁も何のその、地下を掘り進めて町中に侵入し、野菜や家畜を食い荒らす獰猛なモグラだ。数がそんなに多くないのが幸いだし、基本的には人を襲わない野獣だが、何でもかんでも食い荒らす害獣で、ちょくちょく討伐依頼があるみたいだ。
地面に薄く穴を掘って、バランスを崩されたり、危なくなると地下に逃げて追えなくなったりと、厄介な野獣だが……
ピィッ!
ガゥッ!
ビークによる上空からの急降下で首筋を抉られ、ファングの風の突進によるカマイタチで四肢を切り刻まれては、既に進退も何もあったものではなく、あっさりと討伐されてしまう。
さすがにランクAとBの魔獣だけあって、お話にならない強さだ。最後にファングが喉笛に喰い付いてとどめを刺して、ズルズルと僕の方に持ってきてくれる。
僕は手慣れたように血抜き魔法を使って血を抜くと、全探索で周辺の雑食モグラを探す。
僕達の周辺には1~2匹。町まで戻る間に5~6匹は狩れそうなくらい存在するのを確認する。
「採取依頼の薬草は3セット分、Fランク討伐依頼の毒蛇が3体2セットの6体、素材納品の一角兎の角が4本2セットの8本に毒蛇の毒袋が2袋3セットの6袋、Eランク討伐依頼の雑食モグラが3体があれば、Fランク依頼10件にEランク1件。合計で120ポイント相当になるかな」
「相当頑張ったのです!これでEランク確定なのです!」
「そうだね、日も暮れてきそうだし、今日はこの辺で終わりにして、あとは雑食モグラを狩りながら帰ろうか」
僕とポメは今日の戦果に納得しながら、町への帰路につく。当然途中で出会った野獣はサクサク倒して、更に討伐依頼件数の上積みを行ったけど。
「おー無事だったか」
「もう日が沈み掛けてるから心配したぞ?」
門まで帰ってくると門番のおじさんとキリクさんが声をかけてくれる。そしておじさんは頭の上から爪先まで見渡すと、空いている手で僕の頭をワシャワシャとこねくり回して、無事で何よりと声を掛けてくれた。
「しっかりと採取も出来たようだな。さ、遅くならない内に報告してくると良い」
「はい。ありがとうございます」
僕の背に担いだ袋がパンパンなのを確認したキリクさんが先に行くように促してくれたので、僕は素直に返事を返す。
そして日が山向こうに消え、空が茜色に染まる頃、僕は冒険者ギルドに帰ってくる。もうこの時間になると冒険を終えた冒険者さんがジョッキを片手に酒盛りを始めていた。
「おぅ、ちびっこ今日も来たのか」
「おいおい、ここは孤児院じゃねぇぞ」
「こんな物騒なとこに入り浸ってないで、お家でママのおっぱいを吸ってろよ」
「違いねぇ。うはははは」
あーうん。昨日のデジャ・ヴみたいな光景だ。僕は冒険謝さんたちに軽く頭を下げながら、クーフェさんがいるカウンターを目指す。
「まーた、クーフェちゃんのとこかよ」
「俺らもクーフェちゃんに相手してもらいてぇよ」
「お前らの顔じゃ犯罪臭がすごくて相手してもらえねぇよ」
「違いねぇ。うはははは」
「うはははははって、てめぇこんな色男捕まえて喧嘩売ってるのか?あぁん?」
「いつものことじゃねぇか。というか色男って何処にいるんだ?」
「ここに4人いるじゃねぇか!」
「違いねぇ。うはははは」
一瞬剣呑な雰囲気になったが、あっという間に氷解して馬鹿笑いしている。見た目はどう見ても山賊なんだけど本当は良い人たちなんだろうなぁ。
「あぁっ!シン君!!遅かったから心配してたのよ!」
カウンターから飛び出してきたクーフェさんが僕の元に走りより、僕を掴むと頭を自分の胸に埋もれさせる。柔らかくて暖かくて良い匂いがして……苦しい。そして背中に突き刺さる幾つもの殺気。
「ほらほら、そんな目で見ないの。みっともないわよ」
そばかすが残るショートヘアの女の子が、冒険者さんにエールのお代わりを持ってきつつ首を指す。
「いや、そういうがなエイミーちゃん」
「エイミーちゃんの平らなやつと違って、クーフェちゃんのはデカイから」
「顔埋めたら至上だと思うんだよ」
「違いねぇ。うはははは」
「あぁ、何か言ったか?」
冒険者の失礼な発言に、とてつもない冷気を含んだ女の人の回答が背後から聞こえる。僕は遠くなる意識の中そんな事を感じたのだった。




