第051話(商品説明?!)
軍資金を手に入れた僕達は、次に食糧事情を知りたいと、大きな食料品店に入ってみる事にした。
「いらっしゃいませ」
僕が店内に入ると店員らしきお姉さんが出迎えてくれる。僕を子供だと侮らずに朗らかな笑みを浮かべながらの対応だ。
「今日は、お使いでしょうか?」
一応、身なりは見窄らしくないので、きちんと応対してくれているようで、僕がどこかの家の子供だと察したようだ。
「……えっと」
そうだと答えた場合、何を買うか明確でないと怪しまれるし、違うと言った場合、冷やかしだと思われてしまったりするのも面倒だ。
「坊っちゃんは行商を引き継ぐために、色々な店舗で品物や相場を見て回って勉強しているのです」
僕が少し言い淀んでいると、後ろから自信満々の声でポメがフォローしてくれる。
「へぇー、そうなの。とても偉いわね。それじゃ未来の大店主さんに、ウチのアピールをさせてもらおうかな?」
店員のお姉さんが、笑顔を浮かべたまま僕を案内してくれる。幸いにまだ朝早かったので、僕達以外にお客さんがいないからだろう。
「この店は、他の国から日持ちするものを仕入れている、この町で一番大きいのお店よ。だから乾物や日持ちする香辛料、調味料が他の店より充実しているわ」
確かに肉や野菜の生鮮物のコーナーはあるけど、そうじゃないコーナーのほうが広く取ってあるようだ。
「輸送費が掛かるから、値段は少し高めだけど、ここら辺では手に入らないものも多いの。もし君が未来の行商人になったら仕入れをお願いするかもしれないわね」
案内された乾物コーナーを見ると、魚や肉を乾燥させたものや、キノコや葉っぱを乾燥させたものが陳列されていた。それらは独特な匂いを出しているので、苦手な人も多いかもしれない。隣には香辛料のコーナーが有り、これらも独特な色合いや大きさのものが瓶に詰められて置いてあった。
品物の下には名前が記されていたが、これらをどのように使うのかが全くわからない。値段は数粒や数枚で銀貨1枚から3枚なので、かなりお高い。
「すみません、商品の説明をお願いできますでしょうか?」
「はい、かしこまりました。まずはどちらからにいたしましょう?」
僕が商品説明をお願いすると、店員のお姉さんが笑顔で対応してくれる。
「香辛料が気になっているのですが、数も多いですし、見たこともないものもあるので」
「かしこまりました。では端から説明させていただきますね」
「まず、こちらの濃褐色の実ですが、クロブと申しまして、甘く濃厚な香りと痺れるような刺激的な風味が特徴で、肉料理やスープ料理に合う香辛料になります」
店員のお姉さんが瓶の蓋を外すと、確かに甘い香りが漂ってきた。
「こちらの粉状の物がオリガ。ややほろ苦さのある爽やかな香りが特徴の香辛料です。こちらはリコピル料理に欠かせない香辛料になっております」
「リコピル?」
「赤い実で、甘みと酸味があり、果肉が瑞々しい野菜で、色々な料理に使われていますよ」
「うーん、トマトの事かなぁ?」
話言葉に違和感はないんだけど、やはり固有名詞はこちらの世界独特な物なので、それらを覚えていかないと、生活がままならないなぁと少し考え込んでしまう。
店員のお姉さんが数多くの商品を説明してくれた後、僕は気になる香辛料を幾つか購入した。ここら辺では手に入らない香辛料なので、値が張ってしまい銀貨25枚ほどになってしまった。
「ありがとうございました。またのお越しを」
丁寧に挨拶する店員のお姉さんに見送られて、僕達は店を出る。
「結構な品揃えだったのです。ただポメの欲しかった物は少なかったのです」
「大きな街に行けば、もっと色々あるんだろう。今は我慢してもらうしかないなぁ」
「こんな末端の田舎都市では仕方ないのです!」
「ちょっ!声が大きいってば!」
ポメが大きな声でこの町を馬鹿にしたようなセリフを吐く。僕が周りを見渡すと、周りの人から剣呑な眼差しを向けているのがわかる。
「すみません。悪気はないんです」
僕は周りにペコペコ頭を下げると、ポメの手を引いて一目散にその場から逃げ出すように走り出す。
「はぁはぁはぁ……だ、ダメだよ。あんなこと言っちゃ」
少し離れた路地裏に身を隠すと、息を切らせながらポメを嗜める。
「ん?ポメは本当のことを言っただけなのです」
「そうだとしても、ここに住む人達をバカにしていることになるでしょ?!みんな良い顔しないよ!みんなこの町に愛着を持って住んでるんだし!」
「御主人様は気にし過ぎなのです。文句を言われても力に訴えられても、ポメはどうにでもできる自信があるのです」
僕の話を聞いてくれずに、胸を張って答えるポメ。こんな価値観で過ごしてたら、この町にいられなくなってしまう。僕はまだまだ知識不足なので、この町を追い出されて他の町に行くのは時期尚早だ。
「おい!お前ら!!」
僕がポメの説得に頭を悩ましていると、僕達の後ろから僕達を呼ぶ声がする。
振り向いてみると、勝ち気な顔をして僕を指差している男の子を先頭に4人の子供達が、僕達に視線を向けていた。
僕はトラブルに巻き込まれたような予感がしながら、その子供たちと相対するのであった。




