第050話(素材売却?!)
「市場はあっちになるかな。人が多いと思うから注意してね。それと、あまり裏道とかメイン通りから外れないように。治安はそんなに悪くない町だけど、そうは言っても人身売買みたいに子供を利用してお金稼ぎをしようとしている人がいないわけじゃないから」
「はい、わかりました。気をつけます」
正直、僕とポメ、ファングやビークに何かできる悪人はそうはいないと思いながらも、心配してくれるクーフェさんに了承の意を示す。
「じゃぁ、私はこっちだから。後でね☆」
クーフェさんは僕達にウィンクすると、冒険者ギルドの方に向かって歩いていく。僕達はその後姿を見届けると、市場がある方の通りに向き直る。
「さてと久々の自由時間と初めての町探索だ。楽しみだなぁ」
ワォンッ!
ピピィッ!
「まぁ大したものはないとは思いますが、ポメの調味料に少しでもストックができれば十分なのです」
僕の言葉にファングとビークが反応し、ポメが相変わらずの発言をして、僕達は市場に向かって歩き出すのだった。
教えてもらった方に進んでいくと、大通りに面して、左右に活気のある店が並んでいた。また大通りに店を出せないような小さな露店が横道にも並んでいる。アーグ大樹海に隣接する町なのもあり、大都市ではないから店の数はすごく多くはなさそうだが、活気は十分すぎるほどあった。
とりあえず買い物の目的はないので、一軒一軒眺めながら歩く。大通りに面している店は、比較的大きな食料品店、武器屋、防具屋、道具屋、服屋、食事処といった店が並び、横道の露店は小さいながらも特化したものが置いてそうだ。また鼻をくすぐる良い匂いは横道から漂ってくる。
「まずは軍資金がないと何もできないなぁ」
「でしたら、野獣や魔獣の素材でも売るのです。大樹海で確保したものがあるのです」
「でもなぁ、冒険者ギルドは使えないし……」
クーフェさんに魔獣の素材を見せたら、親とはぐれてこの町に来たという説明と辻褄が合わなくなりそうだ。
「肉なら肉屋、革なら防具屋、牙や骨なら武器屋や装飾品屋が買い取ってくれると思うのです」
「なるほど、確かに使う店に直接持ち込めば買い取ってもらえるかもしれないね」
「とりあえず、ここいらのものを売ってみるのです」
ポメはそう言うと何処からともなく、太い針と鋭い歯を一つずつ、太い牙を3本取り出して僕に手渡す。
「巨大ジカバチの毒針と、首刎ねウサギの歯と、狂化猪の牙になるです」
「あぁ、確かにアーグ大樹海で倒したね……ちゃんと回収してたんだ」
「当然なのです。ポメは超優秀高性能Sランクメイドなのです!万年Eランクの底辺調教師の御主人様とは、出来が違うのです!」
「あぁ、はいはい。つか、この間Eランクと言われただけで万年じゃないと思うんだけど。しかもポメに相当吸われたような気もするし」
「男の子が小さいことを愚痴愚痴と言うものではないのです!さっさと換金してくるのです」
ポメがそう言いながらグイグイと僕を武器屋らしき看板の店に押していく。
「ん?なんだぁ?」
僕が武器屋に入ると、カウンターのおじさんが不機嫌そうな声を出す。
「子供が武器屋に何のようだ?危ねぇからとっとと帰んな」
武器屋の人はシッシと追い払うような手の動きで僕達に出ていくように促す。
「え、いや、あの……」
僕が言い淀んでいると、剣呑そうな目で僕の事を頭の上から見ていく。
「ん?お前が持ってるそれは?」
「あ、はい。これを売りたくて……」
「ふーん。ちょっと見せてみろ」
僕は店の奥に入り、手に持った素材をカウンターに並べる。
「こりゃ、傷もねぇし相当に良いものじゃねぇか!」
武器屋のおじさんがちょっと興奮した声を上げる。
「お前さんがこれらの獣を倒したとは思えねぇんだが、何処で手に入れた?盗んだにしても、これをこんな綺麗な形で狩れる冒険者が子供に出し抜かれるわけもねぇ」
「自分たちが狩ったのです!」
おじさんの言葉にポメが反応する。
「馬鹿言うな。巨大ジカバチ、首刎ねウサギ、狂化猪が子供に狩れる訳無いだろうが」
「この子達がいるのです」
否定するおじさんにポメが僕の方に止まっているB-クと、足元で心配そうに見上げるファングを指差す。
「ん?そのペットがどうし……あぁ?そいつ風狼と、火燕か?のわりにデカイような気がするが……」
「あ、はい。両親から譲り受けた守護獣です」
「なるほどなぁ、確かにそいつらがいれば狩れるかもしれねぇか。ま、詮索しても品質が落ちるわけじゃねぇしな。よし、買い取ってやろう」
「ありがとうございます。助かります!」
「巨大ジカバチの毒針が銀貨20枚、首刎ねウサギの歯が銀貨50枚、狂化猪の牙が銀貨10枚が3つで30枚……締めて銀貨100枚っていったところだな」
銀貨1枚が1,000円くらいなので、10万円も?
「そんなに?!」
「んあ?この品質なら相場はそんなもんだぞ。例えば首刎ねウサギの歯で作った小剣なら銀貨250枚で売れるからな。鋭さと硬さ柔軟性は鉄製品の比にならん。それにお前らの足元見て今安く買い叩くより、次もこの品質で狩ってきてくれるとするなら、ちゃんと取引した方が利になるからな」
僕の顔を見てニッと笑いながらおじさんが断言し、カウンターの下からゴソゴソと銀貨を取り出すと100枚の銀貨をカウンターに置く。
「ま、なんで良い素材が手に入ったら、また来てくれや。ここじゃ質の良い武器防具は飛ぶように売れるんでな」
僕達が銀貨を受け取って店を出ようとすると、入ってきたときとは別人のような対応になったおじさんが、気安く声をかけて送り出してくれるのだった。




