第005話(絶大釣果?!)
「ぐっ!ぐひょぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ…………」
自分の飛翔の魔法で彗星のごとく夕暮れの空に打ち上げられた僕は、両足の下から噴出する風の力を制御しようと試みる。
暴走しているとはいえ、自分の魔法なので、十数秒の間、悪戦苦闘すると何とか制御を取り戻す事ができた。でも音速を超える程の速度で打ち上げられた為、既に上空5000mにも達してしまっていた。眼下を見てみると、今までいた所が豆粒のように小さく見える。
せっかくなので、眼下一帯を見渡してみる。世界はとても広く、その中でも樹海はバカみたいに広かった。僕があれだけ頑張って歩いた道のりは、樹海全体から見るとほんのちょっとだけのようだ。
そして目的地も見つけることが出来た。でも日も落ち暗くなり始めてたから、もっと先の方を見ることは出来なかった。
そして恐る恐る飛翔の魔法を制御しながらポメ達のいる川岸まで戻る。5000mから落ちたら間違いなく死ねるし、皆とはぐれてしまったら、僕も生きていけないからね。本当はこのまま一飛びで目的地に向かいたいけど、ポメが訓練しなきゃダメって言っていたしな。
「全く、相変わらずのダメダメっぷりなのです!」
飛翔の魔法を制御して何とか地上に戻ると、更に2つの籠、合計3つの籠を川魚でいっぱいにしたポメが、腰に両手を当てて怒っていた。というか、200匹近く釣り上げたのね。よくもまぁ、この川の、この場所にこれだけ生息していたものだ。
「ごめんごめん。本当に死ぬかと思った」
「軽すぎです!御主人様には学習能力というものがないと思わざるを得ないのです!」
相変わらずポメに厳しいことを言われて、少し凹んでしまう。というか、なんで僕の魔法はこんなにも暴走してしまうのだろうか?
「で、その釣り竿の先のでかいのは何なんですか?」
「え?釣り竿?」
僕は無我夢中で帰ってきたので、釣り竿のことなんか忘れていたのだ。ポメに言われて、改めて釣り竿を見てみると、体長2m近くあるマグロがルアーに食いついていた。
「おいっ!マグロ!そもそもお前は海水魚だし、この川の深さで、この大きさは、どう考えても無理だろ!」
「これはマグロと言うです?しかし川でこんな大きい魚が釣れるのも妙な話です。ちょっと見せてくださいです」
僕が思わずマグロにツッコミを入れると、不思議そうな顔をしたポメがマグロの口からルアーを外して、外したルアーを確認する。
「あれ?違うのですよ……」
ルアーを見てちょっと残念そうな顔をしたポメが、今度は釣り糸をさかのぼっていってウキを調べる。
「あぁ、ウキに門の効果がついているです!」
ポメは嬉しそうな顔をして、意気揚々と僕に告げる。
「つまり?」
「この釣り竿は、ドコにいてもドコでも釣りができるように、ウキに門の効果をもたせ、水に浸けた状態で魔力を流すことで、様々な水場に時空を超えて連結するです!ちょっと大袈裟に例を上げると、水たまりでクジラが釣れるです!」
「…………」
「ぴゅ、ぴゅーっ♪」
ドヤ顔で説明するポメに、僕が本気を纏わせたジト目を向けると、下手くそな口笛を吹いて斜め上に目をそらす。
相変わらず、面白半分で僕に魔導具を渡したらしい。そして、流した魔力が強すぎて、門が海に連結し、そのルアーにマグロが食いついたらしい。そのまま引き釣り込まれてたらどうなっていたんだか……僕はあまりの嫌な想像に背筋が寒くなって震える。
「ま、まぁ。貴重な食材が手に入ったから良しとするです!」
「良い訳あるかぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
僕の絶叫が夜の帳に響き渡るのであった。