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第047話(空腹悪戯?!)

「お腹すいたでしょう?ご飯を作るわね」

 笑顔を浮かべたクーフェさんが、そう言いながら僕に背を向けてキッチンへ向かっていく。


 そう言えば、待望の町に入ったのはいいが、バタバタしていて食事を取るのも忘れていた。と今更ながらに気がつく僕。既に最後に食事を取ってから、かなりの時間が経過していて、僕のお腹はかなりの空腹を訴えていた。

 ポメはアンドロイドなので、おそらく無理に食事を取る必要はないので、ケロリとしているけど。何せ、初めての町での食事だ。あの丁寧で優しいクーフェさんの手料理を味わえると思い、期待に胸が高鳴る。

 気を散らしたり、邪魔したりするのも悪いので、僕とポメは大人しく用意された部屋に入り、荷物を整理しながら待つことにした。


 ポメは先程のクーフェさんの折檻を思い出したのか、部屋に入る前に、ブルブルと小刻みに震えていたけど。


 荷物の整理と言っても、ポメがどこかに収納し、どこからか取り出しているので、大した荷物はない。精々明日着る衣服や、生活に必要な布巾や洗顔具などを出すだけだ。


 僕がベッドに腰掛けて、ポメが出してくるものをチェックしていると、ファングもベッドの上に上がり、僕に寄り添うように小さく丸まっておとなしくしている。

 ビークもベッドの縁に止まり休憩している所を見ると、安心して休めているように見える。


「この後の食事は、人間のものだと思うのです。ファングとビークはこれを食べてるといいのです」

 そんなファングとビークを見ながら、ポメが香ばしく焼いたマグロステーキをどこからか取り出し、皿の上に乗せて僕の足元に置く。

 食欲をそそる香りが部屋に広がり、僕のお腹は堪えきれないと主張するようにぐぅーと鳴ってしまう。


御主人様(マスター)は、あの女の不味い手料理をお召し上がりになりやがるので、お預けなのです!」

 ポメがファングとビークに皿を差し出しながら、焼いたマグロの肉が3つほど刺さった串を取り出し、頬張り始める。

 これは一体何の嫌がらせなんだろう。しかもポメは食事をしなくても大丈夫なはずなのに、僕に見せつけるように食べてるし。


 ファングとビークはポメに差し出された皿に飛びつくと、物凄い勢いで食べ始める。そうだよね、僕がお腹空いているんだから、当然ファングとビークも空いているわけで。そんな事にきちんと気づけなかった僕は、二匹にとても申し訳ない気持ちになってしまう。

 まぁ、そんな気持ちをあざ笑うかのように、ドヤ顔で串を食べているポメが憎たらしすぎて、すぐそんな考えが飛んでしまう訳だが。


 ワゥ!

 ピピィ!


 二匹は嬉しそうな声を上げながらあっという間に平らげ、おかわりと言っているかのごとく、ポメを見上げて催促する。


御主人様(マスター)と違って、ファングとビークは素直で可愛いのです」

 ポメはそう言うと追加のマグロステーキとマグロ串を取り出し、二匹と一体で仲良くおかわりを食べる。


御主人様(マスター)はあのクソ女の手料理まで我慢するがいいです!」

 ポメは相当クーフェさんが気にいらないらしい。これは僕のお世話をクーフェさんに取られた嫉妬から来ているのだろうか?


「ポメはクーフェさんに嫉妬しているの?」

「ななななななななななな何を言ってやがるのです!そそそそそそんな訳、あるはずないのです!!」

 僕が試しに直球で聞いてみると、凄まじく(ども)りながら答える。やっぱり、それが原因だったんだ。僕は目の前で美味しく食べ物を頂戴しているポメに恨めしそうな目を向けながら納得する。


「シン君、ポメちゃん。ご飯できるわよー☆」

 そんなやり取りをしていると、クーフェさんが部屋にまで聞こえる、良く通る声で僕達を呼ぶ。


「はい。今行きます」

 僕はそう答えてベッドから立ち上がって部屋を出ようとすると、あからさまにチッという顔をしたポメが仕方なさそうについてくる。


「そこに座ってね」

 クーフェさんが鍋をかき混ぜながら、ダイニングにある4人掛けのテーブルの方を向いて、僕達を促す。既にテーブルにはキリクさんが着席をしていて、キリクさんの隣にはピンク色のシートが敷いてあり、その前の席には橙色と緑色のシートが敷いてある。

 おそらくキリクさんの隣がクーフェさんなのだろう。僕はそう察知して、ピンクのシートの前にある緑色のシートが敷かれた席に座り、ポメも迷わず僕の隣の席に座る。


 食卓の上には既にパンが入った籠と、葉野菜が盛られた大きな木のボウルが置かれてあり、各々のシートの前には、木の平皿と木の深皿が置かれていた。おそらく平皿に葉野菜を、深皿にはスープなどを入れるのだろう。


「姉さん以外と家で食事するなんて、本当に久しぶりだな」

 僕達がテーブルに付くと、キリクさんがそう切り出す。


「そうなんですか?クーフェさんは僕達以外にも家に招き入れていそうな感じですけど」

「まぁ性格的にはそうなんだが……子供が二人だけ、しかもこの町の孤児ではない。なんてシーンは滅多に無いからな」

「それは、そうですね」

「まぁ幸いこの町では孤児には寛容で、全てのギルドが出資して孤児院が設立し運営されている。アーグ大樹海に隣接しているだけあって冒険者が多いから、その冒険者がいつ命を落とすかわからない。そんな冒険者の子供が孤児になっても大丈夫なように孤児院が運営されているのさ。ちなみにこの町で色々な売買には、その孤児院の運営資金も上乗せされていて、その資金によって運営されているんだ」

「なるほど」

「だから姉さんはこんな性格だけど、この家に招き入れての食事なんて言うのは、ないっていう話さ」

 キリクさんの話に僕は頷く。


「はーい☆できたよー」

 僕とキリクさんの話が一段落した辺りで、クーフェさんが鍋つかみで鍋を持ってテーブルにやってくる。部屋着なのかゆったりとしたチュニックにスカートを合わせて、そこにエプロンをしている姿が、凄く似合っている。


「今日はホーンラビットのシチューだよ」

 クーフェさんはそう言うと、鍋を食卓の中央において、それぞれの深皿にシチューを取り分けていくのだった。

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