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第046話(口災冷笑?!)

「仕事の時間も丁度終わったし、お家に行きましょうか☆」

 僕達にギルドカードを手渡したクーフェさんは、溢れる笑顔を僕達に向けて放つ。その横では頭を抱えるキリクさん。

 僕達がお邪魔したら迷惑なんではないだろうか……そう思って断ろうとするのだが、クーフェさんの断れる雰囲気を全く醸し出していない笑顔が怖くて口ごもってしまう。

 そしてついに諦めたのか、キリクさんが大きなため息をついて肩をすくませる。


「姉さんがこうなってはもはや説得は不可能……歓迎するよシン君」

 諦めた口調だが、ウィンクを一つして歓迎の意を示してくれるキリクさん。迷惑をかけるのも嫌だったが、クーフェさんとキリクさんに異論がないということなので、お邪魔させてもらうことにする。


「ご迷惑をお掛けするようで申し訳ございませんが、ちょっとだけお邪魔します」

 そう言って僕達は冒険者ギルドを後にして、クーフェさんとキリクさんの家にお邪魔するのだった。


 クーフェさんとキリクさんの家は冒険者ギルドと門の中間地点くらいにある、民家が集中している区域の一角にある一戸建ての家だった。


「狭い家だけど許してね☆」

 クーフェさんがウィンクしながら家の扉の鍵を開けて入っていく。


 家の中はとても整理整頓されていて、クーフェさんの几帳面さが表れているようだ。入ってすぐにリビング、キッチン、ダイニングがあり、2階に上る階段と、扉3つが見える。


「左側2つの扉がトイレと洗室ね。奥の扉が寝室。2階はお姉ちゃんとキリク君の部屋よ。シン君とポメちゃんは1階の寝室を使ってね」

 クーフェさんが、それぞれの場所を指差しながら説明してくれる。


「洗室って何です?」

 聞き慣れない言葉にポメが聞き返す。


「あら?知らないの?普通に使っていると思うんだけど……体を拭いたり、衣服を洗ったりする部屋の事よ」

 クーフェさんがポメを連れて洗室に入っていく。僕も興味があったので、一緒についていくと、大きなタライが設置されている部屋で、その奥に外に続く扉が設置されている。


「この扉の先に共同の用水路があって、そこから水を汲んで、この桶に水を溜めるの。そしてその桶の水を使って服を洗ったり、体を拭ったりするのよ」

「な、なんて原始的なのです……」

「ん?なにか言った?ポメちゃん?」

「い、いや!何も言ってないのです!」

 また一段と空気を冷やした微笑みを浮かべるクーフェさんに、ポメがアワアワと口を押さえたり手を振ったりしながら誤魔化す。


「隣がトイレか……」

「何です?!これはトイレと言うより汚物穴なのです!」

 トイレを見て絶句している脇から、ポメが覗き込み再び失礼な物言いをする。でもポメが言うのはもっともで、石に穴を開けただけのものが鎮座していた。隣に水が入っている桶と柄杓(ひしゃく)のようなものがあるところを見ると、用を足した後に、この水をかけて汚れを流すのだろう。

 とはいえ上水道が通ってないという事は、下水道も整備されているわけもなく、この汚物は穴の中に溜まっているようだ。となるとくみ取り式のトイレという事らしい。


「な・に・か、言・っ・た・か・し・ら?ポメちゃぁぁぁん??」

 相変わらずのポメの言い分に絶対零度の微笑みを顔に貼り付けたクーフェさんがズズズッとポメに迫ってくる。


「こ、これは……そう誤解!誤解なのです!!」

 仏の顔も三度まで、本日中に3度めの失言をしたポメが、クーフェさんにズルズルと引っ張られていく。


「た、助けて下さい!御主人様(マスター)

「いや、僕にはどうにもできないと思うよ」

「そ・そんな……!この糞の役にも立たない御主人様(マスター)なのです!ゴミ!クズ!チ○カス!なのです!!あぁぁぁぁぁ~」

 僕に暴言を吐きながら、部屋の奥に消えていくポメ。僕は思わず手を合わせて合掌するのだった。


 そんなやり取りをしていると、仕事着を脱いで部屋着に着替えたキリクさんが降りてくる。ザクッとした麻のシャツを着ていて、そうしているととても門兵には見えないくて、町の居る気の良いお兄さんのようだ。


「ん?どうしたんだ?」

 ポメがクーフェさんにズルズルと引きずられていくのを見たキリクさんが、僕に聞いてくる。


「えぇ、実は……」

「あはははは!あのちみっ子も大概だなぁ!あははははは!」

 キリクさんが腹を抱えて笑う。


「姉さんは家の掃除も力を入れているから、そんな発言聞いたら怒るなぁ。でも悪いようにはしないと思うからさ」

 キリクさんが一通り爆笑した後、涙を拭いながら僕に説明する。


「まぁ、招待されたんだから寛いでくれ……とは言っても君達が使う部屋は、今は説教部屋になってるからなぁ。多分すぐ終わるからちょっと待っててくれ」

 キリクさんにそう言われ待っているが、シンと静まり返った部屋の居心地が悪すぎる。実際は短い時間だったと思うのだが、体感的にかなりの時間がすぎると、項垂れたままシズシズと歩くポメと、対象的に溢れんばかりの笑顔を浮かべたクーフェさんが部屋から出てくる。


「うわぁーん。御主人様(マスター)のゴミ!クズ!チ○カス!なのです!!」

 そして一目散に僕の方に走ってきて、ポカポカ拳を叩きつけてくるポメ。


「ポメは……ポメは、あの女に汚されてしまったのです!」

「あ・の・女?」

「ひえぇぇぇっ!ちが、違うのです!クーフェお姉様なのですぅ!!」

 僕を盾に後ろに回り込むポメ。


「シン君も大変な同行者を持ったものねぇ。大変でしょう?」

「ま、まぁ……口はアレですが、凄く頼りにしてますよ」

 僕は、どこかちょっと遠い目をしながら、クーフェさんに答えるのだった。

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