第045話(証書発行?!)
「なんかゴメンな。姉さんは一度決めるとああだからさ」
「いいえ、こんな身元もわからない僕なんかのために親切丁寧に応対して頂けて、感謝してます」
なんか申し訳無さそうに行ってくるキリクさんに、僕は笑顔を返しながら答える。
「それにしても調教師か。過酷な道を選んだなぁ。とはいえ、そこの風狼と火燕がいれば、大抵の魔物は寄せ付けなさそうだけどな」
「そうですね。運良く付いてきてくれたこの二匹は、大切な僕の仲間で、頼りにしてます」
「風狼と火燕って、そんなに強いとおもわれているのです?」
キリクさんの発言に、不思議そうな顔をしたポメが聞く。確かに僕やポメからしたら、手こずる程の魔物ではない。
「いやいやいや!ランクCの魔物2体なんていったら、中級冒険者でも気を抜けば致命傷を負うレベルなんだぞ。門兵の俺なんかとてもじゃないか戦えるレベルじゃないんだよ。まぁ、こうしてみると可愛いペットみたいなものだけどな」
キリクさんは驚いた顔をしながらポメに反論すると、ファングとビークを見ながら微笑む。二匹はなんか視線が合ったのを感じたらしく、キリクさんに向けて「何?」という感じで首をかしげる。確かにこうしてみると、ただの可愛いペットのようだ。
となると、ファングがランクAの風爆狼、ビークがランクBの火喰鳥と知ったら卒倒するだろうな……この事は胸にしまっておこう。
「キリクさんはこの街の出身なんですか?」
「あぁ、親父とお袋が冒険者でなぁ。アーグ大樹海を攻略すると言ってここに拠点を構えて活動してたんだ。まぁ、あの森は尋常じゃないからまともな攻略なんてできなくてな。そのうち落ち着いちゃって、姉さんと俺を産んで、この町で育ててくれたんだ。その両親も魔物集団暴走からこの町を守るために戦って、死んじまったけどな」
「そうだったんですか……何かすみません」
「いやいや、もう十年以上前の事だから、俺も姉さんも乗り越えていて大丈夫さ」
相当辛かっただろう過去を何事もなく放してくれるキリクさん。
「それで魔物集団暴走って何ですか?」
「あぁ、ここら辺以外だとあまり馴染みがないかもな。原因はわかっていないんだが、数年に一度、アーグ大樹海の方から魔物の群れが暴走して、この町の方に突撃してくるんだ。何せ、あのアーグ大樹海の魔物達だ。強さも尋常じゃないやつらが何十体も、暴走状態で町に突っ込んでくるから、たまったものじゃない。少なくてもBランク以上の冒険者達じゃないと太刀打ちできないから非常に厄介なんだ」
「お待たせー☆」
キリクさんにそんな説明を受けていると、手続きを済ませたクーフェさんが戻ってくる。満面の笑みを浮かべながら、手元の冒険者ギルドカードをチラチラと僕達に見せながらやってくる。
「シン君とポメちゃんの冒険者ギルドカードができたよー。これで二人も晴れて冒険者ギルドの一員だねっ!はい、ギルドカード!」
クーフェさんに手渡された銅色に光る冒険者カードの一番上には意匠と共にギルド支部名、そしてカードの左側には自分の名前と職業、その右側には冒険者ランクが大きく記されていた。そして、そのカードの下の方には……
「あの、このパーティランクというのは?」
「うん、今回は個人の登録だけだったので空白なんだけど、今後パーティと呼ばれる2人~6人の一緒に冒険する固定の仲間ができた場合に、ギルドに行ってパーティ登録をすると、そこにパーティ名とパーティランクが記入されるの。で、初期登録をしちゃうわね」
クーフェさんはそう言うと、説明を続ける。
「このギルドカードの端にある丸い所を持って、魔素を通してくれるかな。魔力でもいいわよ」
僕達はクーフェさんの言うとおりに、ギルドカードの端を持ち、魔法を使う時のように魔力を通してみる。するとギルドカードが淡く光り、ギルドカードが薄い膜で覆われたような気がする。
「はい、これで初期登録完了。これでこのカードはギルドにある特殊な魔道具しか、書き換えられなくなったわ。そして身分を示す時には、さっきのようにカードに魔力を通すと本人以外は光らなくなるので、身分が保証されるの」
「なるほど、これを行うためにも、冒険者は魔素か魔力の取り扱いができない人はなれないんですね」
「そうね、魔物と戦うためには最低限魔素か魔力が使えないと危険なの。だから冒険者ギルドで証明書を発行する場合は魔素か魔力のチェックを行うの。そして一枚一枚特殊な作り方をしているから、初回は無料で作れるけど、なくした場合の再発行には銀貨20枚が掛かるから注意してね」
クーフェさんが人差し指を立てながら、僕達に丁寧に教えてくれる。
「銀貨20枚って結構な額ですね」
夕飯の定食が銀貨1枚宿代が銀貨5枚程度なので、銀貨1枚が1,000円くらいの相場、となると20,000円程になると思う。
「うん、カード自体はそんなにかからないんだけど、無くしたことに関する戒めと、予防のためにその価格にしているの」
「なるほど、そういうことですか。ギルドカードの発行、とても助かりました。ありがとうございました、クーフェさん」
僕は冒険者ギルドカードを受け取って内容を確認すると、クーフェさんに深々とお辞儀をする。
「あぁ~ん。シン君ってば、可愛いっ!」
僕のその仕草を見て、変なスイッチが入ってしまったクーフェさんは、僕の頭を胸に抱え込むと、頭をワシワシする。気持ちの良い膨らみが顔に押し付けられて、思わず頬が緩んでしまったのだが、あまりの圧迫感に息ができずに、僕はバタバタともがき始める。
「そこまでなのです!おっぱいお化け!」
ポメが強引に僕をクーフェさんから引き剥がす。窒息死掛けていた僕は、ゼェゼェいいながら新鮮な空気を肺に取り込む。
「おっぱい……お化け?」
ぴひゅ~
クーフェさんからポカーンとした顔で見つめらたポメはバツが悪そうにそっぽ向きながら、下手くそな口笛を吹く。
そしてクーフェさんの眉が少しずつつり上がっていくのを見て、ポメの顔が青ざめていく。
「き、気のせいなのです!」
「ま、まぁ、今回はそういうことにしておくわ。お姉ちゃんちょっと吃驚しちゃった」
ポメが必死の形相でクーフェさんに首と手を振りながら何も言っていないことをアピールし、クーフェさんもとりあえず矛を収めてくれたようだ。
「……この女ヤバいのです。気をつける必要があるのです……」
何とか危機を脱したポメが口の中でモゴモゴと戒めを口にするのだった。




