第043話(虚偽方便?!)
キリクさんとクーフェさんの偶発的姉弟艶事の狂宴を目の前で見せつけられて、唖然としてしまっていたのだが、やっとこさ僕達の冒険者(身分)登録が進みそうだ。
6人くらいで使用できそうなサイズの机の上に、クーフェさんが水晶球や何枚かの書類を広げる。
「じゃぁシン君達は、そっちに座ってくれるかな?」
クーフェさんに言われて、僕達は対面の椅子に座る。ファングは僕の足元にちょこんと座り、ビークはファングの隣に降り立ち、二匹は興味ありそうな顔で僕のことを見上げている。
「まず基本的なことから聞くね。シン君はどこの街から来たの?町の名前や特徴を教えてくれると嬉しいな」
「……」
転生して起きたらアーグ大樹海の遺跡の中にいて、アーグ大樹海を抜けてここまで来ました……なんて言えるはずもないよなぁ。
「坊っちゃんの旦那様は、奥様と坊ちゃまと一緒に様々な土地を回る行商人であったので、余り定住後があったわけではありません。強いて言うなら坊っちゃんが生まれた時にしばらく滞在したケルディスの町が生家と言えるかもしれないのです」
僕が言葉に詰まっていると、スラスラとポメが答えていく。しかしよく出鱈目なことを堂々と喋れるものだ。
「そして、あちらのインバース山脈辺りで魔物に襲われて、旦那様と奥様は、坊っちゃんをポメに託して……」
ポメはそう言うと、目元を隠してよよよ……とわざとらしい態度を取る。僕は内心、嘘っぽすぎてバレると思っていたのだが、クーフェさんは思った以上にお人好しだった。
「ぶぇぇぇぇぇんっ!たいへん!大変だったでしょう!お姉ちゃんは!お姉ちゃんは!!ぶぇぇぇぇぇんっ!!」
と感極まって大声で泣き出してしまう。僕が唖然とした顔でクーフェさんとポメを見比べていると、ポメがウィンクしながら舌を出す。コ……コイツは本当に厄介なことを。
「シン君!お姉ちゃんが!お姉ちゃんが!!きちんと面倒見てあげるからぁぁぁぁぁっっ!!」
「ちょ!ちょっと、姉さん!そんなの無理だって!」
暴走するクーフェさんを窘めようとするキリクさん。でもクーフェさんは聞く耳を全く持っていなさそうだ。
「ちゃんと、ちゃんと旅立てるまで、お姉ちゃんがシン君達の面倒を見ます!」
「い、いや。だ、大丈夫です。宿屋を借りますから」
「ダメなの!これからお金は色々と必要だと思うの!シン君とポメちゃんくらいなら、私の家でも十分生活できるの!お家にはキー君しかいないし!」
すごい勢いで詰め寄ってくるクーフェさん。キリクさんは額を押さえながら天を仰ぎ、諦めたように溜息をつく。いや諦めないで下さいキリクさん!あなた方の生活がかかってるんですが!
「い、いえ。そこまでしてもらうのは」
「い!い!の!!シン君はお姉ちゃんの言うことを聞いていれば、何の問題もないのっ!」
何という押しの強さ。助けを請おうとキリクさんとポメに目配せするが、視線を向けると、スッと目をそらしてしまう。キリクさんは申し訳無さそうな顔をしているのだが、ポメは何を思っているのか、口元が緩んでいる。絶対碌なことを考えていない表情だ。
「はい……」
僕が諦めてクーフェさんの提案を飲むと、クーフェさんは太陽のような明るい笑顔を浮かべて嬉しそうにする。
「じゃぁじゃぁ、さっさと手続きして家に案内するね☆」
「……」
「まず、ポメちゃん。この水晶球に手をかざしてくれるかな?」
「これは魔素を測る魔道具か何かなのです?」
「うん。魔素の蓄積量が、その人の強さを示すから、これで大体の強さがわかるんだ。魔素が多いほど強く光るはずなの」
「わかったのです」
嬉しそうに続きを説明するクーフェさん、諦めたように無言で中空を見つめるキリクさんを無視して話を進めていく。ポメがクーフェさんの指示通り、手を伸ばして水晶に触れる。
すると水晶の奥に光が灯り、その光の色が水色、緑色、黄色、橙色に変化していく。
「橙色?!」
その色変化を見たクーフェさんが驚きで目を見開く。そして手元にあった冊子をパラパラめくると、更に口を大きく開き驚愕の表情をする。
「ランクS相当?!」
「はぁ?!」
驚きの声を上げるクーフェさんと、その水晶の色変化を見ていたキリクさんも大声を上げる。
「ちょっ!ちょっ!もう一回やってみて!」
再度水晶に触れるポメ。やはりさっきと同じように水晶の中の光が橙色になる。
「す、凄い逸材じゃない……と、とりあえずシン君もやってみてくれる」
目が点になりながら、何とか処理を進めようとクーフェさんが僕に促す。
「はい」
「これは、魔素の量を測る?という事は魔導器に入っている魔素の量……あっ!御主人様ダメなのです!」
僕が水晶に手を触れると同時にポメが声を上げる。
「え?!」
僕が触れた水晶の奥に強烈な光が灯り、水色、緑色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、水色と変わりながら明滅を繰り返す。色が一周するごとに光が強くなり、そして部屋中が強烈な真っ白な光で包まれるのだった。




