第039話(山海料理?!)
ポメがこの世界の人を見かけたけど、いきなりコンタクトするのは危険ということで、遭遇しないように湖に沿うように森の中を進む僕達。日が暮れる頃には、その森を抜け、目の前に広がるのは大きな草原だ。
ポメが周りを見渡して危険がない事を確認し、僕は全探索で近くに敵対生物がいない事を確認すると、大きく体を伸ばす。
「やっと樹海を抜けたぞーっ!!」
僕は晴れやかな気持ちになって大声を出す。四方八方を木々に覆われ、危険な敵対生物が多かった樹海の中は気が抜けない日々が続いていた。やはり、見通しの良い所というのは、それだけで気持ちが晴れやかになることを痛感する。
そしてやっと人の作ったまともな料理が食べられる環境になったことに、胸が期待でいっぱいになる。
「この先に、ここいら辺の獣や魔獣で生計を立てている冒険者が集まった街があるはずなのです」
「獣や魔獣を狩って生計が立てられるの?」
「はぁ……いいですか?この世界は危険な獣や魔物で溢れています。アーグ大樹海は溢れ過ぎですが、普通の場所にも色々な獣、魔獣や敵対的な亜人も多くいます」
「ふむふむ」
「そういう敵から身を守るためには、それなりの武具が必要になります。そういった武具はどうやって作ると思うのです?」
「鉱山から鉄とか掘ったり、それを合金にしたりして作るんじゃ?」
「この辺に鉱山があると思うのです?」
「うーん。アーグ大樹海にもなさそうだし、あっちの遠くにある山まで行けばあるかも」
「そんな遠くで掘っても、ココまで運ぶ間に魔獣に襲われてアウトなのです。あと、アーグ大樹海で出会った魔獣などに鉄程度の武器が有効だと思うのです?」
「うーん、確かにあの魔獣達の外殻の硬さは尋常じゃなかったなぁ。それで、それが魔獣狩りと何の関係が?」
「……やはり御主人様の首の上に乗っているのはピーマンなのです」
「いや、頭だと思うんだけど」
「中身が空なのです。だからピーマンなのです。いいですか?魔獣に対抗するためには、魔獣を傷つけられる武器や身を守るための防具が必要。だけどココらへんには魔獣しかいない」
「うん」
「だから倒した魔獣の素材を武器や防具にして、より強い魔獣と戦うしか無いのです」
「あぁ、なるほど。あの蜘蛛の外殻とかで盾を作ったら、並の魔獣なら手が出せないかもなぁ」
「そうなのです。なので強い魔獣の素材はかなりの高値で取引されるのです。その為、強い魔獣が出てくる所には、冒険者が集まり、その冒険者相手に商売する商人が集まり町ができるのです」
「なるほどなぁ」
僕はポメの説明に頷きながら、元いた世界の状況とは全く違う世界に来たことを、改めて実感するのであった。
もうすぐ日も暮れるということで、僕達はもう一度森の中に入り、いつもの小屋を出す。見通しの良い草原なんかで、あの小屋を出したら、色々不審がられると思ったからだ。
森の中と言っても、そんなに戻るわけではなく木々が小屋を覆い隠してくれるくらい中に入っただけだ。
「ポメ、今日のご飯は?」
「この間釣った大きい魚がいっぱい残っているので、そこらへんで採ったキノコと山菜を、この葉っぱで包んで蒸し焼きにするです」
そういってポメがマグロのブロックを取り出すと、食べやすいサイズに切っていく。そして広げた葉っぱの上に無造作に置くと、キノコや山菜を適当に切って、その上に乗せていく。そして岩塩の塊をその上に置くと、葉っぱを閉じる。
「ちょっ!ポメ!待った!!」
「御主人様は黙って待っているのです」
「いやいやいや、そんな岩塩の塊入れたら塩っぱくて食べられなくなっちゃうよ」
「まともに料理のできない「御主人様は黙って待っているのです」
に言われたくないのです」
「ポ、ポメのはそれでも良いけど、僕のやつはその岩塩を削ったくらいが丁度いいんだけど」
「全く注文の多い御主人様なのです」
一応手を止めてくれたポメにお願いして、金属性の卸金で岩塩を削って入れる。
「最後にコレを……」
ポメがそう言うと、黒い小さな粒を手一杯に握って投入しようとする。
「ちょ、ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「またですか?本当にいい加減にしてほしいのです」
ポメが呆れた顔で僕の方を見る。
「それ胡椒の実だよね?そんなに入れたら辛くて食べられなくなっちゃうよ。砕いてから一摘みで十分だから」
「えー?」
ポメがとても嫌そうな顔で僕を睨む。そんなに睨まれても、ダメなものはダメだと思う。
仕方なさそうな顔をしたポメが、どこからともなくミルのような機械を取り出すと、胡椒の実をその中に入れてゴリゴリと回す。
そして出てきた実の欠片を一摘み上に振りかけると、大きな葉を閉じていく。
僕はホッと胸をなでおろすと、フライパンのようなものに並べていくポメを見る。ポメは包みを並べ終えると、少しだけ水を入れて、フライパンに蓋をし、魔導コンロに火をつけてフライパンを熱していく。
味付けさえ間違えなければ、ポメの料理レベルは高いので心配はいらない。
「完成なのです」
美味しそうな匂いと共に、ポメが木の皿に先程の包み焼きと大きめのナンのような物を添えて持ってくる。僕の分は包みを開けていないけど、ファングとビークの分は既に包みを開けて木のシチュー皿に開けており、そこから美味しそうな匂いが溢れ出ている。
「熱いので気をつけるのです」
ポメはそういうと、僕の目の前に包みが開いていない皿を置き、僕の椅子の足元にファング用の器とビーク用の器を置く。
ファングはもう堪らないと言った感じで、器と僕の顔を交互に見ながら、ソワソワとしている。ビークも木の器の側に降りると、ファングと同様に僕の顔と器を交互に見ている。
「それじゃ、いただきます」
僕がそう言うと、ファングとビークが器の中に顔を突っ込んで食べ始める。
ガゥッ!
ピィッ!
二匹が美味しいと言わんばかりの鳴き声を上げる。そんな二人に優しげな視線を送ると、僕も包みを開ける。閉じ込められていた蒸気と一緒に、蒸した魚とキノコと葉の香りが立ち昇り、僕の鼻孔を刺激する。
木の匙をマグロの身に差し込むと、ホロホロと簡単に身が崩れる。そして山菜やキノコと一緒にその身を匙で掬い、口に運ぶ。
魚の旨味とキノコの旨味が口の中に広がり、それを塩と胡椒がいい塩梅に繋いでくれる。
「美味しい!」
僕がポメの顔を見て笑顔でそう言うと、ポメがちょっと悔しそうな照れくさそうな顔でそっぽを向く。
「い、一応。味覚センサーに危険情報は出ていないのです」
「なるべくいつも危険情報が出ないように作ってもらえたら嬉しいんだけど」
海の幸と山の幸が混ざりあった料理に舌鼓を打ちながら、僕達はマグロとキノコの包み焼きを感触する。味付けは塩と胡椒だけだけど、マグロの強い旨味が効いていて美味しかった。とはいえ、やはりこういう料理に醤油は欠かせないなぁと今一の物足りなさを感じてしまったのは秘密だ。
「明日中に町には着く感じ?」
「そうですね。日が暮れる前には着くと思うのです。ただちょっと気がかりがありますが」
「気がかり?」
「ポメの気のせいであれば良いんですが……まぁ言ってみればわかるのです」
ちょっと不安を感じさせるポメの発言が気になりながらも、初めての人の町に行ける喜びで胸をいっぱいにしながら、僕は休むのだった。




