第035話(炎熱光線?!)
遠吠えで周辺の魔物を呼び寄せた巨大岩猿が、ニヤリと表現できるように口角を釣り上げて、僕達を見る。
巨大岩猿でさえ梃子摺っている僕達に、四方八方からCランク以上の魔物が襲ってきては、勝てる通りはない。
今すぐ逃げ出したいところだが、背を見せれば巨大岩猿が襲いかかってくるだろう。
「魔物が集まってくる前に、アイツを何とかするしか無いね」
「短期決戦なのです!」
「戦法と言っても、ポメとファングとビークが気を逸している隙に、僕の魔法をぶっこむくらいしか無いよね」
「御主人様の貧弱な頭では、その程度の戦略しか出てこないのは当たり前なのです!」
何故か自信満々に胸をそらして、いらない事を断言するポメ。僕がファングとビークを伺い見ると、やってやるぜ的な視線を返してくれる。
「じゃぁ行こうか。ポメが一撃入れた頭にある岩の隙間に魔法をねじ込む感じで」
「わかったのです!」
ガガゥッ!
ピピィッ!
一人と二匹は僕の指示に了解の意を示して巨大岩猿に突撃していく。
まずビークが巨大岩猿の頭上から、炎の矢を降らせる。威力は大したことがなさそうだが、樹金属性の弱点である炎熱系の魔法なので、鬱陶しそうに、ゴツゴツした岩で覆われた手で払いのける。
そうして、頭上に意識が行った所に、ファングが烈風を纏って、巨大岩猿の右足に向かって突進する。巨大岩猿の巨大な手の指よりも小さいファングではあるが、纏った烈風の威力は中級魔法の風爆刃嵐に匹敵して、そこにファングの弾丸のような突進力が加わると、並の魔獣なら一溜まりもない攻撃力だ。
巨大岩猿は発達しすぎていて正にAランク級と思える上半身に対し、下半身は通常の強力な魔獣並にしか成長していない。そこに、ファング渾身の突進が突き刺さる。
たまらなくバランスを崩した巨大岩猿に向かって、ポメが自分の身長の倍以上もある棒状の物体を軽々と担ぎながら疾走し、巨大岩猿の前で時計回りに一回転する。
「どっせい!なのです!!」
一回転して威力を増した2mを超える棒状の物体が、バランスを崩し体重が集中した左足の踝目掛けて振るわれる。
バキィィィィィッッッ!!!
グギャァァァァァッッッッ!!!
何かを砕くような音が響いて、あまりの衝撃に巨大岩猿が悲鳴を上げて前のめりに倒れる。そして痛撃を食らった左足を左手で押さえながら、その原因たるポメとファングを叩き潰すかのごとく、やたらめったらに右手をそこら中に叩きつける。
ポメとファングは一撃を与えて、すぐに離脱しており、巨大岩猿は見当違いの場所を乱打している。
「がら空きだよっ!」
左手は左足の踝、右手は地面を乱打。弱点が見えている頭は完全無防備だ。一人と二匹が引きつけてくれている間に十分魔力は練れた。僕はその魔力を解き放つ。
「豪炎の槍!」
中級炎熱属性魔法の豪炎の槍は1m程の炎の槍を産み出し投擲する。その威力は初級炎熱属性魔法の炎の礫の15倍にもなる。上級騎士でさえ直撃すれば命を落とす程の威力だ。
その豪炎の槍を極限まで細く絞込み、急所狙いで貫通力を特化させて放つ。
チュィンッ!!
耳慣れない音ともに放たれた豪炎の槍は炎の槍というか、極細の炎熱光線の様になり、僕の手から一直線に巨大岩猿の頭を穿ち、反対側に貫通する。
「あ、あれれ?」
予想外の魔法に狼狽えてしまい、僕の手が小刻みに震える。
チュィチュチュイン!チュインチュインッ!
僕の手に連動して極細の炎熱光線が細かく振動する。その振動に合わせて巨大岩猿の頭に幾何学模様を書くように、頭を焼き切る。
「あわわわわ」
「だ、ダメです御主人様!!」
ズワッッッッッ!!
僕は慌てて手を振ると、その手の動きに合わせて、極細の炎熱光線が森を左、右と扇形に焼き薙いでいく。
極細かつ超高温度の炎熱光線はまるでバターを熱したナイフで切るかのごとく、あっさりと森の木々を切り落としてしまう。
そして、切り落とされた木々がそのままで済むわけがなく、きちんと引火し、僕の目の前の森が業火に包まれるのはあっという間だった。
ほんの30秒にも満たない間しか発動しておらず、周りの影響を極小に抑えるために極細にした豪炎の槍が、僕の目の前の森を焼き尽くす一撃になるのだった。
「ああああああっっっ!!まずいまずいまずい!!!」
「流石、森林破壊の申し子の異名を持つ御主人様です」
「そう呼んでいるのはポメだけだよっ!」
半径1kmで90度くらいの扇型に焼き薙がれた森は、そこら中から出火し、火が火を呼び、猛烈な森林火災へと成長しようとしている。
「どどどどどどどうしよう?!」
「御主人様は全属性が使える魔法使いなんですから、あわあわせずに氷漣属性魔法で打ち消せばいいと思うのです」
「そそそそそそうだった。氷漣、氷漣、氷漣……」
ポメにアドバイスを貰った僕は、魔力を氷漣の魔導回路に流して練り上げる。
「豪水流波!!」
そして僕は中級氷漣属性魔法を咄嗟にそのまま放ってしまうのだった。




