第031話(最終関門?!)
お風呂を出て居間に戻った僕達に、ポメが冷たい果実水と水を持ってきてくれる。風呂で温まった身体に冷たい飲み物が沁み入る。
「あと4日くらいだっけ?」
「そうなのです!やっとなのです。ポメ一人だったら既に樹海を抜けています!」
ポメが胸をそらしながら自信満々に言う。樹海に入って1ヶ月近くも経つというのに、汚れやほつれが見られなく、新品同様の鮮やかな色合を保っているメイド服に身を包んでいる。でも2.5頭身しかないので、小さい胴体部をそらしながら言っても、滑稽なだけだと思う。
「トン御主人様。食事の事しか詰まっていないできの悪い頭で、不埒な事を考えていた気がするのです!」
僕をビシッと指差しながら暴言を吐くポメ。隙をみせるとすぐこのような暴言を吐いてくる。まぁ、2.5頭身しかないので、なんかじゃれてきてるようにしか見えないので、問題はないんだけど。
「取り敢えず気をつけるのです!ここら辺に、大きな魔穴があるから、獣達が魔物化している可能性が高いです!」
「魔穴って?」
「昔、星の力が暴走した時に出来た地脈の吹き出し口みたいなものです。大量の魔粒子を放出しているので、魔素蓄積と魔素抽出の潜在能力を持っている獣を魔物化してしまうのです」
「その魔素蓄積と魔素抽出の潜在能力を持っている獣って結構いるの?」
「叡智の眼の情報によると、それぞれ10匹に1匹位の割合で潜在能力を保有しているみたいです。なので100匹に1匹くらいは条件を満たすはずです!」
「これだけ動植物、昆虫などの生物がいれば100匹に1匹の条件なんて、あってないようなものじゃないか」
「そうなのです。だからこの付近は気を付けたほうが良いのです!」
「迂回して安全な道に行くわけには行かないの?」
「そうしたいのは山ですが、大河と山脈を挟んだ一帯が魔穴スポットになっていて、回り込めないのです。町に抜けるには、この魔穴スポットを突破するしか無いのです!」
「なるほど。だから、こちら側に人が立ち入った形跡がないのか」
「そうなのです。かなりの実力がないと、この魔穴スポットを抜ける事は出来ないと思うのです」
ポメの情報を聞いて、僕達が踏破してきた樹海に、全く人が立ち入った形跡がなかったのを思い出して納得する。
僕の戦った魔獣達は確かに手強かったし、そんなのがウジャウジャいたら、突破することは困難だろう。とはいえ、僕達でも突破できるのだから、もっと熟練の大人たちだったら何とかなるのではないだろうか?
「何か都合の良いことを考えている顔をしていますが、今までの魔獣のランクはCからE級、魔穴スポットにはA~C級がウジャウジャいるのです。ちなみに今の人類でB級以上の戦闘力を持つ人の割合は全体の3%程度しかいないのです」
「え?マジで?」
「本気です。なので好き好んでアーグ大樹海の奥地に入ってくる怖いもの知らずはほとんどいません。町から魔穴スポットの間にある低レベル帯で狩りをする程度なのです!」
「いや、ここまで来ておいてなんだけど、とんでもないところで目覚めたんだなぁ」
「ポメがいなければ、トン御主人様は間違いなく死んでいたのです!ポメに感謝するが良いのです!」
「ポメだって廃棄されていたようなもの……」
「なにか言ったですか?」
ポメが盛大に恩を売ってくるので反論しようとしたが、物凄いオーラを出しながら睨まれて、僕はスゴスゴと引き下がる。
「兎に角、明日からはかなり厳しい戦闘になると思うので、ゆっくりと休むのが良いです。もしかしたら、丸一日間全速力で駆け抜けるかもしれませんので」
「えー。丸一日間走りっぱなしとか嫌だなぁ……」
「ランクA級のすごくでかい蛇に丸呑みされるのがご希望でしたら止めはしませんが」
「いや、それはご勘弁」
「だったらつべこべ言わずにポメの指示に従うのです!」
「わかったよ……」
ポメの気迫に気圧されて、僕は渋々頷く。そして僕は次の日、魔穴スポットを甘く見ていたことを思い知るのだった。




